フィナンシャル・タイムズは4月30日、中国が今年、米国を抜いて世界最大の経済大国になると報じた。これは歴史的な瞬間だ。何しろ1872年以来、米国が世界一の経済大国だったからだ。

この時が来ることは誰もが知っていた――国際通貨基金(IMF)の予想は2019年が重要なポイントになると示唆していた――が、国際比較プログラム(ICP)の報告書は意外だった。同報告書は、中国経済が2011年に既に米国の規模の87%に達していたと述べていたためだ。

あてにならない中国の統計をもとに算出した数字であるが、ブルンバーグも
4月30日(ブルームバーグ):中国は米国を抜き、世界1位の経済大国になる勢いだ。一方、インドは経済規模で日本を追い越し3位となった。各国通貨の購買力平価(PPP)を基に算定したデータで明らかになった。
世界銀行や国連などの国際比較プログラム(ICP)がワシントンで発表した資料によると、2011年の中国の経済規模は米国の87%となった。05年時点では43%だった。
算定方法の変更が、中国経済の急上昇や、インドが05年時点の10位から11年に一気に3位に浮上する一因となった。市場為替レートに基づくと、米の12年の国内総生産(GDP)は16兆2000億ドル(約1660兆円)。中国は8兆2000億ドルだった。
原題:China Set to Overtake U.S. as Biggest Economy Using PPPMeasure(抜粋)
と、報じている。中国が世界一の経済大国との報道にどうしても違和感を持つ。
中国政府が正しくGDP統計数字を公表しているかは別として、中国の公表する数字には信用がない。
我が国はじめまともな国々は、消費、設備投資、公共投資などの需要項目の寄与度を積み上げてGDP成長率を公表している。また輸出は需要項目の一つとして加算され、輸入は反対に減算される。
実質成長率の構成がどうなっているのか、あるいはどのようにして算出されているのか外部からは分からない。驚くことに中国の経済の実態については、中国政府首脳部もよく分からないという話をよく聞く。
まず中央政府に届く地方政府のデータが信頼できないのである。比較的、信用できるデータは、電力の使用量や貨物輸送量など限られているという話である。

また自動車の生産台数や販売台数は、外資系メーカのシェアーが大きいためある程度は信頼できると考えられる。1~3月の新車販売台数が前年同期比9%増と一応プラスである。たしかにこれが本当なら、生産(工業生産)と消費(小売売上高)が底堅く推移していることの裏付けにはなるかもしれない。
ただ、確かなことは、未だに中国は紛いなりにも成長を続け、中国共産党政権が崩壊したとしても、13億人の人口を抱える経済は、いずれ本当に米国を抜いて世界一の経済大国となる。
中国経済の状況を観察するのに中国の住宅価格の数字は重要である。

中国住宅価格、頭打ちに 3月主要70都市調査 【日経】2014/4/18

 【北京=大越匡洋】中国国家統計局が18日発表した3月の主要70都市の新築住宅価格動向によると、4都市の価格が前月の水準を下回ったほか、上昇した都市でも値上がり幅が鈍った。景気の先行き懸念に加え、住宅供給が過剰になっており、上昇が続いてきた中国の住宅価格は頭打ちの傾向が鮮明になってきた。

浙江省温州、海南省海口など4都市で前月に比べ価格が下落。10都市が横ばい、56都市で上昇した。下落した都市数は2月と同じだが、上昇幅は最高でも0.6%にとどまり、前月(0.7%)よりも伸びが鈍化した。

前年同月比では温州を除く69都市で価格が上昇した。ただ、最も値上がりした上海でも上昇幅は15.5%。2月は18.7%、1月は2割強の上昇だったのと比べ、値上がり幅は徐々に縮小している。北京や広東省広州などほかの大都市でも値上がり幅は鈍化した。

中国では1~3月期の実質成長率が2四半期連続で減速し、住宅販売額も前年同期比で7.7%減と大幅なマイナスに落ち込んだ。一方で、販売に至らない物件が積み上がり、1~3月期の住宅在庫は前年同期に比べ23%も増えた。供給過剰に直面するなか、地方都市ではデベロッパーが投資資金を回収するため、高級物件を中心に値下げする動きも広がっている。

内陸部の重慶市で17日に開幕した春季の不動産交易会。1年前に比べて売買対象となる新築住宅の件数は4割強も増えたのに、初日の売買件数は400件弱と半分以下の水準に落ち込んだ。参加した不動産業者は「値引き交渉の余地も昨年より大きくなった」とこぼす。不動産市況がさらに冷え込めば、景気を一段と下押しする恐れがある。
昨年12月になって、初めて不動産価格が2都市で下落した。それまで中国全土で不動産価格は上昇を続けてきただけに、この変調は注目された。これが1月になって下落が6都市に増えた。
ところが2月分(3月公表)に注目した。もちろん不動産価格下落の都市数がどれだけ増えるか興味のあるところであった。ところが予想に反して下落した都市は4ケ所と減ったのである。バブル状態の不動産価格というものは性質上、一旦下がり始めたらさらに下がり続けるものである。
中国の公表では、価格が下がった都市で再び上昇したことになる。ちょっと有り得ない話である。つまり、2月分(3月公表)3月分(上記記事)の数字は既に操作されている可能性が高い。
もし統計が不動産バプル崩壊の兆しを示すとしたなら、中国全土にパニックを起こす可能性がある。これを避けるには、統計を大きく操作するか公表を止めるしかないのである。しかし住宅販売額の急減を見ても分かるように、中国の不動産バブルの崩壊はほぼ確実である。

コラム:中国の経済リバランスにちらつく「負の連鎖」        2014年 04月 29日

[25日 ロイター] - ジェームズ・サフト

中国では今、経済の「リバランス」が進んでいる。悪いことに、2006─07年の米経済がそうだったように、不動産市場の急減速を伴って大きく均衡が崩れつつある。

そうした事態はおそらく避けられなかったが、幾つかの見覚えのあるリスクを浮かび上がらせている。それは、不動産価格の低下、債務不履行、そして成長の急減速とつながる連鎖反応だ。

世界にとっては、その影響によるコストが高くつく可能性もある。これまで中国のあくなき資源需要を支えることで成長してきたブラジルやオーストラリアといった国々は特にそうだ。

ロイターの最新調査によると、中国の今年の国内総生産(GDP)成長率は7.3%になるとみられ、昨年を下回って過去24年間で最低の伸びになると予想される。

これは一見すると、投資依存型の経済を脱却し、消費の寄与がより大きい先進国型の経済に移行するという政府の目標に合致している。

しかし、中国経済に占める消費の役割が相対的に増しているのは、特に不動産分野での投資が落ち込んでいることが大きな要因だ。第1・四半期のGDPにおける不動産投資の比率は12%と、前年の15%から低下した。

また、1─3月期の住宅販売額は前年同期比で7.7%減少。新規着工面積も25%強の減少となった。

これは、融資の引き締めが原因だろう。1年前に比べると、中国の融資総額は9%余り減少している。

また、中国の債務残高は膨大で、新たな借り入れが続かなければ、不良債権問題に直面せざるを得ないという実例もある。

北京大学で金融を専門にするマイケル・ペティス教授は、「債務急増は不幸な出来事ではない」とした上で、こう指摘する。「それは成長モデルが機能する道筋では基本的なことで、われわれはその段階に到達した。(経済学者の)ハイマン・ミンスキー氏はバランスシートに関する論文で、おそらく最も想像力豊かにこう表現した。経済システムは単に現状の経済活動を維持するために、借り入れの加速を必要とする」。

ペティス教授は、中国の債務問題は大きくなりすぎて、借り手への規制や銀行制度改革では管理できないと危惧する。

同教授は「国営セクターから一般家計セクターへの莫大な富の移動がなければ無理だ。私の考えでは、債務の持続不可能な増加がなければ、GDP成長率は3─4%程度もしくはそれ以下になるだろう」と記している。

<ミンスキー・モーメント>

投機に煽られた信用拡大が急停止し、資産価値が突如崩壊することを示すミンスキー・モーメント」という言葉は、他のあらゆることと同様に、中国では違った結果をもたらすかもしれない。

中国は経済的な奇跡を成し遂げてきたが、それは投資に大きく依存することで実現し、借り入れによる投資も膨れ上がった。ここまでは、「ミンスキー・モーメント」に当てはまる。

投資の質が低下し、理論的に借り手の返済能力が低下しているのは事実だが、話は米国のように単純ではない。

中国では、あらゆることが政治的な問題というだけでなく、国の組織が政治的問題(つまり、あらゆること)をどう解決するかについて取り仕切る、はるかに大きな力を持つ。

政府が質の低い投資から脱皮を図ろうとする一方で、多くの人は、不動産が暴落するほどの信用引き締めは行われないだろうと予想している。

また、個人の借り手は米国より借り入れ規模が小さい傾向にあることから、信用収縮への対処は若干容易になる。

しかし、このことは不動産暴落の可能性を消し去るわけではない。

中国でも投資の「アニマルスピリッツ」は同じように存在し、約10年間にわたり過剰な借り入れが続いてきたことから、弱気の連鎖反応が経済全体に広がる可能性も理解できる。

最終的には、中国の不良債権が把握され、一部セクターに吸収される必要はある。それらを家計に押し付けるやり方は消費を増やすという目標に反しているが、企業のバランスシートはそれだけの不良債権を処理できるようには見えない。

そこで頼みの綱となるのは、中国の強気筋にとって一番の期待となる可能性がある政府だ。

この問題は中国一国にとどまらない。正常に管理されるにせよ、統制不能となるにせよ、投資依存度の低いシステムへの移行は目前に迫っており、そこからうまく脱出してきた国々(資源国を考えてみるといい)にとって最も期待できることは、ショックを吸収する十分な時間を得られることだ。
不動産価格の下落は、いずれ実態経済の悪化に繋がる。しかし自動車の販売動向などを見る限り、いまだに中国経済はそれほど大きな減速に到っていない。おそらく悪影響が出てくるのはこれからであろう。
中国経済の未来を巡って、経済産業省出身(元通商政策局北東アジア課長)の津上俊哉氏の著書『中国台頭の終焉』(日本経済新聞出版社、2013年)は注目に値する。
今後の中国は、成長率5%程度の成長がせいぜいで、GDPで米国を抜いて世界一になる日は来ないと結論している。その根拠として、中国が直面している次のような短期、中期、そして長期の問題を挙げている。
まず、短期的問題として、4兆元に上る景気刺激策をはじめとするリーマン・ショックに対応した公的投資が設備の過剰をもたらし、このことは不良債権の増加につながりかねない。
また、中期的問題として、中国では農村部における余剰労働力が枯渇することを意味する「ルイスの転換点」の到来をきっかけに、賃金上昇圧力が高まっている。これを解決するためには、規制緩和と民営化を進めることを通じて、生産性を上げていかなければならないが、実際には、むしろ国有セクターが膨張して、民間企業が圧迫される「国進民退」が進んでいている。その上、「都市・農村二元構造」も農民の都市移動を妨げており、都市の人件費をいっそう高騰させる要因となっている。
さらに、長期的問題として、少子高齢化が急ピッチで進んでおり、中国は「未富先老」(豊かにならないうちに高齢化が進むこと)という試練を迎えているという。
第9章 中国がGDPで米国を抜く日は来ない
今後の成長にとって必要な生産性向上と同じ意味合いを持つのが、付加価値の向上だ。中国は「世界の下請」から脱却するために「自主創新」を国策とし、科学技術研究や研究開発 (R&D) 助成への予算投入を急激に増加している。中国の人材力は侮れないから、中には大きな成果を収めるものも出てくるだろう。しかし、政府主導のR&D助成や科学技術振興には、どこか違和感がつきまとう。その拠って来たるところは何かを考えると、二点に行き着く気がしている。
第一は、科学技術研究の永遠の難題、予算配分と成果評価に関わる。基礎研究やR&Dへの 「上からの」予算投入はなかなか成果につながらないのだ。(略)
きっと、平時に限られた予算を上から投入すると、純粋に研究のポテンシャルだけを基準に予算を配分するといったことが起きにくく、利権や情実、部門間のバランスとかいった「雑念」が混入しやすいのだ。中国の科学技術予算も、科学院といっ た部署、院士と呼ばれる人たちの利権や腐敗の噂が多すぎる。この分野も「官」利権の弊害を免れておらず、効率が悪すぎる気がする。

自分は科学研究の進歩に興味があるが、科学・技術研究というのは殿国でも国策に近いため政治の影響を大きく受ける。中国の「官」が肥大化し、その弊害が随所に出ているというのなら、それは科学研究についても例外ではないだろう。優れた人材がいても、制度が邪魔をしてその芽が摘まれてしまう危険性が大きいのだとしたら、とても残念なことだ。


この章では、中国の成長が今までのように続く…という楽観的なシナリオに対する、著者の疑問・懸念点がリストされている。
中国の台頭を懸念する者にとって、このニュースは不愉快である。世界銀行も最新の購買力平価換算の国内総生産(GDP)で、中国が年内に米国を抜いて世界最大の経済大国になる見通しを示している。
多くのエコノミストは中国が米国を抜くのは2019年になるとみていたが、モノやサービスのコストで換算することで、両国の差は大幅に縮まった。こうした変化は、1870年代から続く米国が世界経済を支配する時代がほとんど終わったことを示しているのだろうか?
基軸通貨は米ドルであるし、人民元は依然ハードカレンシーに程遠い。米国と欧州連合(EU)は依然として国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)を支配している。最近中国は国力が増した分、欧米が決めた第二次大戦後の国際秩序を拒むようになった。独自の理不尽な秩序を周辺国に押し付けようとしている。
 最近では経済成長のペースが落ちたとはゆえ、それでもなお経済は巨大化している。
国のランキングでは経済以外の点も踏まえて判断しなくてはならない。最近の状況が示すように、軍事力はなお国力の源といえる。中国は大規模な軍備増強を進めているが、米国の年間の防衛予算は中国の3倍に上る。中国は世界最大の軍を保有するが、米国の装備の蓄積と技術力は別次元だ。
多くの尺度に基づけば、米国に追いつくにはほど遠い。