世界銀行のキム総裁は、日本が今週決定した新たな成長戦略について、労働力不足が課題となるなか、女性や外国人を働き手として活用する取り組みを盛り込んだことを評価し、改革の着実な実行を求めました。

世界銀行のキム総裁は、来月、日本や中国などアジア各国を訪問するのを前に、27日、ワシントンで会見しました。
この中で、日本が今週決定した新たな成長戦略について、キム総裁は「より多くの女性や外国人を働き手として活用しようという取り組みを評価する」と述べ、労働力不足が課題となるなか、女性の活躍を後押しする支援策や家事を手伝う外国人労働者の例外的な受け入れ措置などに期待を示しました。
また、ことし4月の消費税率引き上げ後の日本経済について、秋には駆け込み需要の反動による影響も収まるという認識を示し、「改革が着実に実施されれば、日本経済はこのあとも回復を続けるだろう」と述べました。
一方、2001年に債務不履行に陥ったアルゼンチンがアメリカの裁判所の決定で投資ファンドへの債務の全額の返済を迫られ、再び債務不履行に陥るおそれが指摘されている問題について、キム総裁は「解決策が見いだされることを期待している。今は非常に微妙な局面で、交渉の行方を注意深く見守っている」と述べ、警戒感を示しました。

成長戦略の改訂版の概要

日本の『稼ぐ力』の強化

①企業統治(コーポレートガバナンス)の強化

「コーポレートガバナンス・コード」の策定

金融機関による経営支援機能の強化

②公的・準公的資金の運用等の見直し

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオの適切な見直し、等

③産業の新陳代謝とベンチャーの加速化、成長資金の供給促進

「ベンチャー創造協議会」の創設

政府調達におけるベンチャー企業の参入促進

④成長志向型の法人税改革

2015年度から数年で法人実効税率を20%台まで引き下げ

⑤イノベーションの推進と社会的課題解決へのロボット革命

イノベーション・ナショナルシステムの確立(革新的な技術からビジネスを生み出す仕組みづくり) 

社会的課題解決へのロボット革命                             

残された課題への対応

就業環境


①女性の更なる活躍推進

放課後児童クラブ等の拡充

女性の働き方に中立的な税・社会保障制度等への見直し

女性の活躍加速化のための新法の制定

②柔軟で多様な働き方の実現

働き過ぎ防止のための取組強化

時間ではなく成果で評価される働き方への改革

予見可能性の高い紛争解決システムの構築

③外国人が日本で活躍できる社会へ

外国人技能実習制度の見直し

建設及び造船分野における外国人材の活用

国家戦略特区における家事支援人材の受け入れ

介護分野における外国人留学生の活躍                         

農業、医療・介護

①攻めの農林水産業の展開

米の生産調整の見直し

農業委員会・農業生産法人・農業協同組合の一体的改革

酪農の流通チャネル多様化

国内外とのバリューチェーン(6次産業化、輸出の促進)

②健康産業の活性化と質の高いヘルスケアサービスの提供

医療・介護等を一体的に提供する非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)の創設 

個人に対する健康・予防インセンティブの付与

保険外併用療養費制度の大幅拡大                              

成長の果実の全国波及

①地域活性化と中堅・中小企業・小規模事業者の革新

地域活性化関連施策をワンパッケージで実現する伴走支援プラットフォームの構築

地域ぐるみの農林水産業の6次産業化、酪農家の創意工夫

世界に通用する魅力ある観光地域づくり

PPP/PFIを活用した民間によるインフラ運営の実現、等

②地域の経済構造改革の推進

総合的な政策推進体制の整備

2014年6月24日に新成長戦略が閣議決定された。今回の新成長戦略では、昨年6月の成長戦略では踏み込めなかった岩盤規制と呼ばれる農業や医療において比較的思い切った改革メニューが示され、昨年の成長戦略よりも高く評価できる内容だとわたしは評価したい。しかし、WSJの評価は不十分だと書かれている。

HEARD ON THE STREET
安倍首相の新たな成長戦略も日本の大きな問題解決には不十分

【ウォールストリートジャーナル】2014 年 6 月 25 日 10:13 JST

日本の最新の経済改革プログラムには、投資家たちを勇気づける幾つかの理由があるが、日本の成長見通しを再活性化するとの安倍晋三首相の熱意とは裏腹に、ホームランといえるものではない。
しかしながら東京株式市場の株価が5カ月ぶりの高水準となっていて、昨年の第三の矢とされた世う超戦略から比べると失望感は少ない。
一方投資情報サイト『InvestorPlace』は「日本株を買うべき5つの理由」をあげている。

5 Reasons to Buy Japanese Stocks – EWJ
Japan stocks may be the only bargain among developed markets     【investorplace】Jun 25, 2014, 7:30 am


1.Today’s global economic environment. In the second half of 2014, the global economic recovery will continue and U.S. interest rates to moderately rise. Historically, an improving global economy and rebounding Treasury yields coincide with strength in Japanese stocks.                           世界的投資環境 2014年後半には、世界的な景気回復が継続し、米国の金利は適度に上昇する。歴史的に、世界経済の改善やリバウンド債利回りは日本株の強さと一致している。                                     
2.Stabilizing growth in China. Japan’s key trading partner is showing signs of stabilizing growth, which should help improve investor sentiment toward Asian markets as well as boost Japanese exports.                      中国の成長の安定化 日本の主要な貿易相手国は、アジア市場に向けて投資家心理を改善するだけでなく、日本の輸出を後押し助けるべきである安定成長の兆しを見せている。                                              
3.Growth initiatives are set to regain momentum this summer. Prime Minister Abe’s revamped growth initiatives due in late June could generate new investor enthusiasm. Meanwhile, a proposed cut in corporate taxes (to 20% from around 35%) could be a major positive surprise for the equity market if implemented at a quicker-than-expected pace.                          【法人税減税】成長イニシアチブは、この夏の勢いを取り戻すために設定されている。 6月下旬に起因する安倍首相の成長刷新イニシアチブは、新しい投資家の熱意を生成することができます。予想以上速いペースで実施された場合、(約35%から20%まで)法人税等の提案カットは株式市場にとって大きなプラスの驚きである可能性があります。                                  
4.The earnings outlook for Japanese firms. While the U.S. corporate sector has experienced little or even negative earnings growth in recent fiscal years, Japanese firms have posted solid earnings growth and it’s worth noting that Japanese accounting standards are more conservative than elsewhere.       日本企業の収益見通し。米国企業部門は、最近事業年度における少しでもまたは負の利益成長を経験しているが、日本企業は強固な収益成長を掲載している、それが日本の会計基準が他の場所よりも保守的であることは注目に値します。 
5.A weaker yen. The continued U.S. recovery and the divergent U.S. and Japanese monetary policies imply a weaker yen (vs. the dollar) in the medium term. This, in turn, should help support Japanese corporate earnings.          円安。米国の回復と発散米国と日本の金融政策は、中期的に(ドルに対して)円安を示唆している。これは、順番に、日本の企業収益をサポートして助けるべきである。

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丸山俊 BNPパリバ証券 日本株チーフストラテジスト

[東京 27日] - 現在の日本株が置かれている状況は1980年代後半にますます似てきている。当時を振り返ると、中曽根康弘首相・竹下登大蔵大臣(87年より首相)がプラザ合意後の円高不況対策として積極的な財政出動に舵を切るとともに、澄田智日銀総裁に利下げを迫り、86年から89年まで低金利政策が続いた。

株式市場は政策出動を好感して86年に東証株価指数(TOPIX)は49%上昇。87年は景気回復のもたつきや米国株の暴落(ブラックマンデー)の余波で10%の上昇にとどまったものの、政策効果や株高もあって高成長に回帰した88年には株価は37%上昇し、景気が過熱した89年にはさらに22%上昇した。その結果、インフレ圧力が高まり、政府が引き締めに転換した90年に株価は40%下落し、バブルは潰えた。

アベノミクスも円高対策や震災復興のために積極財政を採用し、日銀が量的・質的金融緩和(異次元緩和)を実行したことにより2013年に株価(TOPIX)は86年を上回る59%の上昇を達成した。しかし、ここでも2年目のジンクスは当てはまり、14年に入ってから株価はボックス圏で推移している。政策(期待)が一巡したことに加えて、家計には消費増税の影響が、企業には原材料費や人件費の上昇が圧し掛かり、企業業績の伸びが大きく鈍化していることが背景にある。

14年度は円安効果の剥落によって「増収減益」を見込む企業も少なくない。しかし、15年にかけては拡張的な財政政策の継続、慢性的な人手不足を背景とした賃金上昇ペースの加速やマインド改善による個人消費の持ち直し、企業部門の設備投資や生産性向上に対する取り組みなどによって、日本経済は適度な2%前後のインフレと1%弱の実質成長を低金利(長期金利1%前後)下で実現できる可能性が強まっている。

企業業績も踊り場を脱し、2桁増益が見込まれる15年には88年のような株価反騰局面を迎えるのではないか。なお、88年は経済成長に裏付けられた株価上昇という点で「バブル」ではなかったが、89年は経済成長を伴わないという点で「バブル」であった。

<GPIF改革はいつか来た道か>

経済環境以外に80年代後半と似ている点として、公的年金資金や郵貯資金による運用の見直しがある。昨今、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用見直し・組織改編、簡保の日本株積み増しなどに注目が集まっているが、これらは87年に「より効率的な運用」を求めて公的年金が自主運用を始めた状況、89年に郵貯資金が寄託金(指定単)としてリスク資産の運用に乗り出した状況とそっくりである。

以下のように、80年代後半の出来事と、今後想定される出来事を並べるとスケジュールまでもが似ていることに驚く。

●1987年 公的年金と郵貯資金が自主運用を開始

●1989年 郵貯資金が寄託金(指定単)による(リスク資産)運用を開始

●2014年 公的年金資金の基本ポートフォリオ見直し(国内株式比率の引き上げ)、簡保が日本株積み増し

●2015年以降 日本郵政上場(計画)と運用見直し(見込み)

86年11月に厚生労働省・年金審議会は、大蔵省・資金運用部の預託金利最低保証利率の引き下げの動きに対し、年金積立金の一部自主運用を求める緊急意見を発表した。内容を一部抜粋してみると、「年金給付の重要な財源の一つである運用収益が相次ぐ預託金利の引下げにより大幅に減収していることは、先の改革の効果を減殺し、国民の期待を裏切るものである」と昨年最終報告を発表した「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」(座長:伊藤隆敏氏)に勝るとも劣らない強い口調だ。

もともと年金積立金の自主運用については、従来から自主運用を実施している共済年金との公平性の観点からも厚労省の悲願であったと言われている。そうした中、公定歩合の引き下げに伴って預託金利が引き下げられると、年金積立金の効率的な運用を目指して年金福祉事業団が資金運用部から資金を調達し、年金積立金の一部の自主運用を図るための法改正が行われることになった(87年6月に法案成立、即日実施)。なお、実際の運用は信託銀行、生命保険会社および投資顧問会社に委託し、一部の資金を年金福祉事業団自らが運用した。

金融自由化の流れの中で87年より郵政省は資金運用部へいったん預託した郵貯資金の一部を再び借り入れて金融自由化対策資金という形で自主運用を行うことになった。自主運用額は87年に2兆円で開始され、01年3月には約57兆円にまで増加した。このうち大半は国債・地方債などの安全資産で運用されたが、89年から一部は寄託金(指定単)として郵政事業庁がいったん特殊法人である簡易保険福祉事業団に資金を寄託(融資)し、寄託を受けた簡易保険福祉事業団が信託銀行に株式・外国債券などの運用を委託するようになった。

こうして公的年金資金や郵貯資金の自主運用開始に伴い、信託銀行などが日本株を大きく買い越し始めたのは87年頃からである。そして、信託銀行の株式保有比率は90年にかけて大きく上昇することとなった。銀行(含む信託銀行)の株式買い越し額は86年に4.3兆円、87年に5.6兆円、88年に4.2兆円、89年に5.4兆円に達した。

翻って、公的年金資金(GPIFなど)や企業年金、すでに日本株買い増しを表明している簡保、15年度以降に予想される郵貯資金の日本株買い増し金額は80年代後半のそれに比べると半分くらいかもしれないが、その影響は決して無視できないものとなろう。

<ブラックマンデー前に似たFRBの姿>

このように80年代後半と現在の類似点を述べてきたが、むろん人口動態や資本ストック(つまり潜在成長力)、金融機関を取り巻く規制とその行動など異なる点は多い。

また、現在のほうが良くなっている点として、増配や自社株買いの積極化にみられる株主還元や買収防衛策の廃止、社外取締役の導入、金融庁が機関投資家に議決権行使のガイドライン策定などを求めた「日本版スチュワードシップ・コード」の導入などがある。こうした取り組みがコーポレートガバナンスの改善をもたらし、内外の長期投資家の(良質)な投資資金を呼び込み始めているのは確かだ。政治や政策の変化を囃(はや)した「日本買い」のような派手さはもうないが、日本経済の質的な変化に着目し、じっくり投資を行うタイミングであるということだろう。

しかしその一方で、前述したように、財政拡張路線、長期にわたる金融緩和、米国経済の停滞(当時は双子の赤字)、資源価格の安定、内需主導の景気回復、公的年金資金や郵貯資金の運用見直しなど、80年代後半と現在では共通点がやはり多い。株価騰落率のテンポや、株価上昇を内需企業がけん引する点も、そっくりである。

加えて、87年のブラックマンデーの引き金となったと考えられている米国利上げ懸念は、出口戦略を模索しつつある現在の米連邦準備理事会(FRB)の姿と重なって見える。歴史的な教訓を重視するイエレンFRB議長とフィッシャー同副議長に安全運転を期待するしかないが、緩和政策の出口をめぐって金融市場が混乱する可能性は依然として否定できない。

こうした状況を前提に、アベノミクス3年目に当たる2015年が1988年のような好環境になるためには(言い換えれば、89年以降の二の舞を演じないためには)、以下の二点が絶対必要条件になると考える。

まず、企業が労働力や資材などの供給制約やコスト増加を、生産性改善や技術革新、高付加価値化などによって乗り越えること。そして、財政・金融政策が市場の信認を維持し、過度な金利上昇を抑制することである。

安倍晋三首相が推し進めている成長戦略は、農業・医療・公益(電力・ガス・水道など)・金融・不動産・教育・人材派遣といった産業で規制を緩和・撤廃し、主に非製造業の生産性を高めることに主眼を置くべきだろう。その点において、各省庁の幹部人事を内閣人事局に一元化することなどを柱とする国家公務員制度改革は政治主導で規制緩和を推し進める力になると期待できるし、家庭向け電力小売り自由化や送配電部門の分離を定めた電力システム改革は地域金融機関や産業構造そのものに変化を迫る可能性を秘めている。

こうした前提に立てば、小売、サービス、機械、ソフトウェア(ITサービス)、建設、不動産セクターが向こう1―2年にわたって有望な業種であると考えられる。また、88年から89年にかけて急騰を演じた素材・市況業種にも注目したい。デフレ脱却によって販売価格の引き上げが容易になれば、マージン改善の恩恵を大きく受けるからだ。

ただし、過剰設備の問題や中国経済の先行き懸念など当時と今では置かれている環境が異なるため、内需系の素材・市況産業である石油精製、セメント、電線、紙パルプ、塗料などの化学製品、金属製品、内航海運などのオールドエコノミー業種はあくまで「大穴」として注目したい。

筆者が今言えるのは、日本経済の質的な変化が順調に進めば、バブルの痛手は避けられるということである。ただ、逆もまた真なりだ。80年代後半との比較は、その見極めに役立つはずである。

*丸山俊氏は、BNPパリバ証券の日本株チーフストラテジスト。早稲田大学政治経済学部卒業後、三和総合研究所に入社し、クレディ・スイス証券を経て2011年より現職。

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