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お盆に帰郷したおり水戸芸術館に”鈴木康広展「近所の地球」”を観てきた。観てきたというより体験してきたという言葉が適当であろう。

鈴木康広氏は芸術家・アーチストとして久々に私に革新性という言葉を想い起こさせた。彼は現代芸術の秀才ではなかろうか?天才ではなく秀才である。
天才とは一瞬のひらめきで常人が思いつかない発想に至るが、彼は膨大なノートに
彼のひらめきを書き綴り、そのひらめきを芸術へと昇華させていくアーチストであるように思える。ある種我々も子供の頃もっていたかもしれない自由な発想やひらめきを芸術作品として具体化させているのだが、そういった意味ではまちがいなく天才である。



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遊具の透視法2001
昼間遊んでいる子供たちを撮影したものを、夜のジャングルジムへ投影。
残像を利用した透き通る景色が浮かび上がる。

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無限の池2014

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気球の人2014

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水平線を描くドローイング2002

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日本列島の方位磁石2011

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実際に現在の日本列島の方向が水に浮いた磁石で表示されています。すごい!

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空気の腰掛け2014
座ってみてとても心地よかった。空気の人を鑑賞するにはもってこいだった。

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まばたきの葉2003

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表に開いた目、裏に閉じた目が描いてあって、ひらひら舞い降りると無数のまばたきに見える




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鈴木康広氏の代表作「りんごけん玉」
ですが、けん玉とは重力をあそぶおもちゃであるが故に、赤い球をニュートンが重力を発見するきっかけとなった(と、される)りんごに見立て、木製のリンゴ玉のけん玉をつくった。
ありそうでなかった、アメリカではなぜかけん玉ブーム。
これを全米で売り出せばひと財産できるかも。

新しい「言語」を生み出す 鈴木康広のつくり方

紙の葉っぱの表と裏に、開いた目と閉じた目が描かれており、それが空から舞ってくるとクルクルと回転しまるでまばたきをしているように見える「まばたきの葉」。船が海の上を走っている時に描く波紋が、まるでファスナーで海を開いているように見えたという経験から、ファスナー型の船を造ってしまった「ファスナーの船」。けん玉遊びをしている時に重力と引力を感じる、それをニュートンのリンゴになぞらえた「リンゴのけん玉」......。挙げていけばきりがない、アーティスト・鈴木康広さんの作品は、パッと見は誰もが知っているような事象を、遊びと驚きに満ちた視点で組み換えて、私たちに提示してくれる。ものすごく普通でありながら、人の価値観を揺るがし感動させる「視点」を持つ鈴木さんは、いったいどんなこども時代を過ごしたのだろう。そして、どんなラーニングを受けたのだろうか。
「たぶん、いろいろとものを作り出したのは、幼稚園時代だったと思うんですが、一番大きいのは、家がスーパーマーケットだったことでしょうか。自宅とお店が一体化していて、しかも年中無休。両親はいつも忙しかったので、ほとんど相手にしてもらえませんでした。でも、従業員の人や親戚も店で働いていて、常に家や店に人がいっぱいいて、暇を見つけて遊び相手をしてくれたんです」。
鈴木少年の遊び場は、もっぱらお店の中にある包装台だった。包装紙や段ボール、リボンやハサミ、シール、輪ゴム、材料はすべてそろっている。廃棄となる段ボールなどを集めてきて、包装台の上で、紙や段ボールを使って紙飛行機やボールなどをつくっては、その場にいる大人たちに見せていた。
「安心できるんですよね。みんながいる所でつくるのが好きだった。ちょっとお客さんが途絶えると、親戚のおじさんにボールを投げたりして。すごく面白いおじさんで、僕の相手をしてくれたんです」。
「おじさん」。鈴木康広をつくり上げるうえで、これはキーワードになりそうだ。鈴木少年の兄妹は、姉と妹。ご両親に兄妹が多かったことから、いとこもいっぱいいたそうだが、一番年上であったため、遊び道具を作り出すのは主に鈴木さん。ボールや折り紙の手裏剣などをつくっては、友達やいとこに配っていたという。
「つくるのは" 機能"があるものが好きだった。それは簡単な話で、遊び道具として使えるもの。例えば折り紙も、パンダとかも嫌いじゃないんですが、そこで終わっちゃう気がして。でも手裏剣だったらつくった後に投げて遊べる」。

見えないものを想像する
釣りという遊び

もうひとりのおじさんは鈴木少年を釣りに誘った。少年は毎週の誘いが楽しみで、前日は寝られないほどワクワクしたという。
「釣りってボーッと気長に魚を待っているイメージがあるんですが、そうじゃないんです。あれは気が短い人がやるスポーツ。水の中の見えない魚が、どういう気持ちなのかを考えながら手を替え品を替えて様子をうかがうというか。自分がお腹空いてきたから魚もそろそろお腹空いてきたかなーとか、こどもの頃は真剣に考えていました。浮き釣りが一番繊細な世界なんですが、浮きの動きひとつで魚の振る舞いがわかる。しかもそれが糸を伝って手で敏感に感じ取れる。そういう身体的な感覚もありますね」。
言葉の通じない相手に対し、どう工夫したらコミュニケーションがとれるか、鈴木少年は釣りからたくさんのことを学んでいたようだ。段ボール遊びと釣りともう一つ、鈴木少年を形成するうえで忘れてはならない道具がある、けん玉だ。自身の作品にも活かされている。
「けん玉は中学生の時に出会ったんですが、いまは目が合った時にだけやっています。毎日やり続けると誰でもうまくなるんですが、僕はけん玉をやらない時間がある方が、イメージを広げられて、実際にも成長しているんじゃないかって思っていて。それは別のことにも言えるんですが、やってみようと思える瞬間まで待つ。それがけん玉と目が合う瞬間なんですが、
その瞬間は自分が一番楽しく、いつもの自分以上に集中できる。成長の生まれる瞬間ってこういうものなのかなって」。
鈴木さんはマイペースだ。それは、作品をつくるときだって同じこと。こどもには、それぞれが持っているスピードがある。幸いあまり大人には邪魔されず、自分のペースを守りつつ、やりたいことをサポートできる環境、それが鈴木康広を作り上げてきたのだろうか。

国語と数学ができない
「アート」という言語で対話する

しかし、そんな鈴木少年にも苦手なことがあった。国語と数学だ。
「勉強は苦手でしたね。特に国語と数学。ある意味でコミュニケーションの根本ですよね。国語は言うまでもありませんが、数学も自然の原理を記述する方法です。でも、その2つが小学校の時から苦痛でした。コンプレックスというか、人に何かを伝えたいと思っているのに、伝える術がないというもどかしさが常にあって。だから、僕は得意な絵を描いたり工作をしたりして、人とコミュニケーションをとろうとしたんだと思う。いま、作品をつくっている最中やつくった後にスケッチを描くんですが、それも同じ。作品だけで伝わり切っていない気がすると思って描くわけです。伝えたいから。言語にできないもどかしさみたいなものは、その子ならではの能力を引き出すんだと思います。端から見たら欠点かもしれないけれど、そこには生きる可能性がたくさんある」。
国語と数学が苦手。しかし、絵を描いて相手に伝えたり、道具をつくって誰かに使ってもらったり、人との媒介となる「言語」の可能性をアートは広げてくれたのだ。
そして、鈴木さんは美大に入り、作品づくりの道を歩み続けることになる。美大進学の際にも、ご両親は反対しなかったという。「わがままを許してくれた」と鈴木さんは言うが、そうした周囲の大人たちの大らかさも、彼が生きやすい道への一歩を踏み出す大切な環境だったのだろう。
そして現在、一児の父となった鈴木さん。もうすぐ3歳になろうとする息子には、どのようなラーニングを構想しているのだろうか。
「いやあ、難しいですね。本当に僕は、親からの教育というよりは、環境で育っていて。親戚のおじさんに育ててもらったようなところもあるし。親とべったりなのではなく、親以外の大人とどうやって関わりが生まれるのかを考えていきたいですね。最近ひしと感じていますが、こどもはびっくりするくらいいろんなことがわかってる。言葉に出されることなんて、本当に少し。自分がそこで苦しんだのもありますが、言葉にならない部分を大切に考えてあげられたらと思います」。
鈴木康広展「近所の地球」
開催日:2014年8月2日[土]~ 2014年10月19日[日]
開館時間:9時30分~18時(入場時間は17時30分まで)
休館日:月曜日 *ただし9月15日、10月13日(月・祝)は開館、9月16日、10月14日(火)は休館
入場料:一般800円、団体(20名以上)600円 中学生以下、65歳以上・障害者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は無料
会場:水戸芸術館 現代美術ギャラリー
住所:茨城県水戸市五軒町 1-6-8 
電話:029-227-8111
主催:公益財団法人水戸市芸術振興財団
会場構成:ワンダーウォール
企画:浅井俊裕(水戸芸術館現代美術センター芸術監督)
https://arttowermito.or.jp/

鈴木康広
1979年静岡県浜松市生まれ。2001年東京造形大学デザイン学科卒業。
日常のふとした発見をモチーフに記憶を呼び起こし共感を生み出す作品を制作。国内外の展覧会をはじめ、パブリック・スペースでのコミッションワーク、大学の研究機関や企業とのコラボレーションにも積極的に取り組んでいる。著書は作品集『まばたきとはばたき』(青幻舎)、『Digital Public Art in Haneda Airport 空気の港テクノロジー×空気で感じる新しい世界』(共著/美術出版社)。
武蔵野美術大学空間演出デザイン学科専任講師、東京大学先端科学技術研究センター中邑研究室協力研究員。
http://www.mabataki.com/

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