村上尚己 アライアンス・バーンスタイン マーケット・ストラテジスト

[東京 24日] - 安倍政権は2015年10月の消費増税について、12月に判断をする予定である。8月のコラムでも述べたが、今年の日本株は年初来、米国や新興国市場のパフォーマンスを下回り、日々の上昇・下落を海外株市場に左右されている状況だ。

4月の消費増税によって景気回復が止まり、今年度の成長率はほぼゼロになりそうな経済環境の下で、企業業績が事前の増益見通しを達成できるかは、海外経済とドル円次第。そう考えると、日本株市場の現在のような状況も仕方がないと言えよう。

今月19日には、日本株市場の命運を握るであろう消費再増税判断について、英フィナンシャル・タイムズ(FT)に安倍首相へのインタビュー記事が掲載され、その後、一部メディアが「安倍首相、消費増税の延期示唆」とのベッドラインで引用し伝え、話題になった。

もっとも、FTは記事のタイトルで、「安倍首相が景気と増税のバランスをとる」というこれまでの見解を繰り返し述べているに過ぎない。この記事の冒頭で、「安倍首相が消費増税先送りを示唆した」と、記者の主観で解説されているのが実情だ。

記事を読む限り、安倍首相の発言は「デフレを終わらせるチャンスで、この機会を逃してはならない」とこれまでと同じ見解が示されているだけである。これだけで、「消費増税先送り示唆」と報じるのは無理があるように思えるが、こうした記事がFTに掲載されたことについては、2通りの解釈ができると考える。

一つは、書き手側がこれまでの安倍首相の考えを十分に理解しておらず、従来と同じ発言なのに、増税先送りに前向きになったと誤解した可能性だ。

日本では、ほとんどのメディアを通じて、消費増税は「規定路線」であり「常識」であるかのような主張が大多数である。筆者は経済学的には疑問に感じるが、「増税不可避」が日本のメディア一体となったキャンペーンになっていると思っている。そうした異常な状況が日常となった記者からすると、安倍首相の発言が予想外に聞こえたので「増税先送り示唆」と、解釈されたという可能性である。

もう一つは、そうした解説が報じられるようなニュアンスで、安倍首相が発言した、あるいは「増税先送り示唆」という観測記事を、官邸の判断で許容した可能性だ。

昨年の8%への消費増税決定前には、安倍首相のその決断が既成事実であるかのような報道が相次いだ。実際には情報ソースが明らかではなく、増税キャンペーンを繰り広げる中での意図的なリーク情報だったとみられる。今回、海外メディアの独占インタビューを受けたことを踏まえると、昨年の経緯があり、官邸が日本の大手メディアから流れるリーク情報を警戒している可能性がある。

もちろん、海外メディアを通じて、増税先送りの観測記事を流すことで、マーケットの反応を確認したかった意図があったのかもしれない。記事が流れた当日はタイミングが良かったので株価は上昇した。また、主要な通信社を通じてこうした記事が流れても、為替、債券市場はほとんど反応しなかった。

筆者が見聞きする限り、日本で消費増税が先送りとなって、それが金利の大幅上昇などのリスクをもたらすというシナリオについては、国内外の投資家の世界において議論になっていることすら聞いたことがない。

むしろ、日本経済に強く意識されているリスクは、大型増税を早期に始めてしまったことで今年の経済成長率が、現在市場で一番注目されているデフレ危機に直面する欧州と同様に失速しつつあることだ。こうしたグローバルな経済環境で、さらなる消費増税が、アベノミクスの失敗を招き、そして世界経済回復の足を引っ張るリスクについて、警戒感を持たれるのは自然のことである。

<米財務省からの忠告>

この種の問題意識は、投資家の世界だけではなく、米財務省にも共有されている。日本のメディアでは詳細に報道されているのを筆者は見たことがないが、今月15日に公表された米財務省為替報告書では日本経済は次のように言及されている「内需拡大を持続させるには、インフレ率を超えた賃上げ主導による継続的なビジネス・住宅投資・家計消費の拡大が必要不可欠である。この観点から、日本は財政再建のペースを慎重に調整すべきである」

2012年に欧州危機が深刻化した時に、欧州諸国が緊縮財政ペースを和らげるよう米国などは主張したが、同様に今の日本は緊縮財政政策を慎重に行うべき、と忠告されているのである。5%への消費増税後に起きた1990年代後半の経済停滞期に、日本政府は米国から財政政策を通じた景気刺激策の強い要請を受けたことがあったが、当時を思い出している投資家も多いだろう。

消費増税で経済成長率が大きく減速し、秋口になっても景気回復がほとんど観察されない状況を素直に踏まえれば、再増税に踏み切るリスクは極めて高いのではないだろうか。そして、世界中の投資家や当局は警戒して見ている。こうした中で、大型増税を敢行して緊縮財政政策によって国内需要をさらに抑制することになれば、世界中の投資家が日本市場やアベノミクスに「諦め」を抱いても不思議ではない。
29日FRBがこの日発表した声明で、雇用情勢が改善しているという認識を示したこと受けて、早期に利上げに踏み切るとの観測が広がっ た。
だが、来年のFRBは鷹派のフィッシャー氏が退任し、鳩派が多数を占める。更に物価が原油価格が下落するなどしてインフレ率が低下している。
そんななかではたして利上げを早期に行うのか疑問だ!

コラム:FRB議長が格差拡大を警告、利上げシナリオに修正も
2014年 10月 24日 12:27 JST

田巻 一彦

[東京 24日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が、米国で進行している所得格差に強い警鐘を鳴らしている。その背後には、格差拡大が中間層を没落させ、米経済の活力を奪うとの分析がありそうだ。短期的には賃金上昇を阻み、米利上げを先送りさせる作用として働くだろう。

米利上げとドル高を前提にしたシナリオは、大幅な修正を迫られる可能性がある。

<格差拡大は賃金上昇頭打ちに波及>

イエレン議長は今月17日の講演で、所得や富の格差拡大について、非常に憂慮しているとの見解を示した。

具体的には過去数十年にわたって「富裕層の所得や富が著しく増大する一方、大半の所得層では生活水準が低迷している状態と言える。このことは明白だ」「米国民が伝統的に重きを置いてきた機会の均等に照らして、どうなのかと問うことが適切だ」と述べた。

FRBが9月に公表した調査によると、米国の所得格差は金融危機で拡大し、富は上位3%の富裕者に集中しているという。

イエレン議長は、ここまでしか具体的に指摘しなかったが、上位数パーセントの富裕者がより金持ちになるということは、20世紀以降の米国繁栄の原動力だった「中間層」が没落の道を歩んでいるということでもある。

分厚い中間層が、米経済や社会の活力の源泉だった。だが、エンジンが止まりかけている。イエレン議長は、その点にも言及し、最近の米国では起業が難しくなっており、実際にビジネスに参入しても、大半は数年で撤退を余儀なくされているとも指摘。こうした点が、米経済での成功を難しくさせている面があるとの見方を示した。

格差の拡大は、最近の賃金上昇伸び悩みにも、影響していると指摘したい。米労働省が発表している賃金は、このところ失業率が低下しているにもかかわらず、横ばい傾向を鮮明にしている。

かつてのように中間層が健在であれば、失業率の低下とともに時間当たり賃金が上がり出し、個人消費の目立った増加へとつながっていったはずだ。

言い換えれば、格差の拡大と中間層のやせ細りが、米金融政策にも大きな影を落としているということだろう。

<FRB高官から相次ぐハト派的発言>

実際、米サンフランシスコ地区連銀のウイリアムズ総裁は14日、インフレがFRBの予想を著しく下回るようなら、新たな資産買い入れの可能性も排除しないと、QE4を連想させる発言を行った。

米シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は13日、2016年初旬まで利上げするべきではないと発言。米セントルイス地区連銀のブラード総裁は16日、インフレ期待の低下を踏まえ、資産買い入れ(QE)縮小停止の可能性に言及した。

いずれの発言も、過去に経験してきた景気回復局面における物価の上昇テンポと、直近の米国の状況にかい離がある点に注目。インフレ率やインフレ期待の低迷が継続するなら、急いで利上げせず、QE縮小も決められた通りに進めると決めつけるべきでないとの見解だ。

これらFRB高官の発言と、冒頭で紹介したイエレン議長の「格差警戒」の発言は、つながっていると見るべきだ。

FEDウオッチに定評のあるエコノミストの斎藤満氏は、所得上位数パーセントに富が集中するトレンドが継続すれば、米経済の消費エンジンは着実に弱まっていくと指摘する。「所得が高額になればなるほど消費性向は低下する。高額所得者ほど消費から投資へシフトするので、集中が高まるほど消費押し上げ効果が減殺される」と指摘する。

<米利上げ先送りなら、ドル高シナリオに修正圧力>

米市場では、着実に米利上げの時期をめぐる予想が後ずれしているようだ。元財務官で国際協力銀行の渡辺博史総裁は、利上げの時期について「2015年後半か16年など1年以上先になるというのが、米国の多くの見方だ」と22日のロイターとのインタビューで指摘した。

日米金融政策の方向性の違いに着目し、ドル/円JPY=EBSが115円程度まで上がるとのシナリオが、東京市場では今でも一部で持てはやされているが、果たしてその賞味期限はどうなのか。

米利上げを見込んだ短期的なドル高シナリオは、どこかの段階で修正を余儀なくされるだろうと予測する。

米金融政策に限らず、過去の経験を100%当てはめて未来を予測するのは、かなりリスクが高そうだ。日本経済に関しても、供給制約と潜在成長率の低さという点を考慮せずにいると、成長率や物価などの見通しを誤ってしまう危険性が増大しそうだ。
消費税増税は延期になる可能性が高いと私は思っている。

>米財務省為替報告書では日本経済は次のように言及されている。「内需拡大を持続させるには、インフレ率を超えた賃上げ主導による継続的なビジネス・住宅投資・家計消費の拡大が必要不可欠である。この観点から、日本は財政再建のペースを慎重に調整すべきである」。
消費増税で経済成長率が大きく減速し、秋口になっても景気回復がほとんど観察されない状況を素直に踏まえれば、再増税に踏み切るリスクは極めて高いのではないだろうか。そして、世界中の投資家や当局は警戒して見ている。こうした中で、大型増税を敢行して緊縮財政政策によって国内需要をさらに抑制することになれば、世界中の投資家が日本市場やアベノミクスに「諦め」を抱いても不思議ではない。
 リーマンショック後、信用危機は欧州に伝わり、この信用危機でも儲けてきた。超緩和のドルマネーを使ったヘッジファンド等の投資集団は円高ドル安時代思うがまま資金を調達しては、各国のマーケットを思うがままに操作して利益を上げてきた。リーマン・ショック後の世界経済は米国からタレ流されたドルが世界のあらゆるところにあったことから投機投資のための短期資金には困ることなく、どこからでも調達できた。従ってウワサを流しては大量のカネを調達して売りまくったり、買いまくったりした。一時期は世界のもうけはすべてヘッジファンドの懐にとびこんでいく状況であった。
こうした流れがわかった時、FRBは早急にQE政策の緩和を進める決意をした。そして今年10月にQE3も縮小政策を発表し、さらに欧州危機の原因が南欧を中心とする野放図状態になっていた欧州の金融機関のバランスシートにあったことがわかって、この粛正にのりだした。
だが、FRBは金融緩和を止めるにあたって、ヘッジファンドを野放しにしては、大暴落を引き起こしかねないヘッジファンドの締め出しを始めた。米国における健全性に関する包括審査などで、ヘッジファンドへの融資は規制され、ボルカールール等、資金の蛇口を絞めて回った。
欧州では欧州中央銀行によるユーロ圏主要銀行を対象とした健全性に対する法律が6月から制定され、米国でも金融機関に対する質の強化法案が制定された。金融市場でこうした質の悪い金融機関の粛正が始まり、欧米の市場からこうした金融機関は去っていかねばならなくなった。
 これによって世界のマーケットでは、ヘッジファンドの店じまいによる最後の売りが発生したため、今年3-5月にかけてドル売り、株売りが発生した。今年12月には金融機関の6月から実施されたストレステストの二回目の決算内容が発表される健全性に関する包括審査では、ヘッジファンドとおぼしき金融機関との癒着も固く禁じられており、これに違反するものは市場から去らねばならないとされている。6月からの法律施行からヘッジファンドには需要面からの後押しがなくなり、ヘッジファンドが一方向に相場を動かす力はかなり弱まってきている。
日米の中央銀行は現状比較的安定しているように見える金融市場の流れを無理に打ち砕くような行動はしたくないと考えていることから、早期の金融政策変更を打ち出すことは慎重とみられ、ヘッジファンドは今後も一方的な円売りは仕掛けづらいと考えられる。従って、米国の金利の変更もFRBは欧州と新興国の景気の動向を充分に見据えた上でないと変更しないと思っている。
市場を乱す投機ヘッジファンドを叩いたはずであったが、しぶといヘッジファンド勢は次の作戦を考えて行動していた。今年の12月決算であまり収益の改善が進んでいないヘッジファンドは12月期の収益改善を試みようとの行動をとったのである。
 3-4月頃には日本最大の年金ファンドであるGPIFが当初9月中に決定(額を決定する)して買いにでると政府関係者や市場の投資家も固く信じていた。ヘッジファンドらは現行の日本株組み入れ比率を12%から改定後には20%央まで拡大するとみての相場を算定して、短期資金で相場作りをしていたのである。ところが9月中には拡大を発表するとみられた決定が11月以降に延びたことから、完全に短期間に信託銀行の買いによって逆ばり行動を起して決算前に短期資金で黒字拡大をねらっていた行動には終止符を打たざるを得ない状況となった。
同じ考えであった海外投資家が10月第一週に5週ぶりに売り越しに転じたことが発端となって相場は売りが売りを呼ぶクライマックス場面をつくり10月17日には日経平均は1万4532円の安値をつけてしまった。この売りで外国人投資家とヘッジファンドの売りはほぼ売りつくされ、とみてよいのではなかろうか。
海外投資家などの売りで、日経平均は大幅に暴落したことにより今後、上昇が約束されている日本株を組み入れるGPIFは喜んでいる。GPIFの構想によれば現状17兆円の株式を運用しているようだが、これを25兆円程度まで8兆円ほど増やす考えのようだ。
GPIFは11月に新運用法を決定する。ヘッジファンドはドルのリスクオンが続いてから余資を失ってしまって短期の借り入れ資金で行動せざるを得ない状況下にある。
ヘッジファンドは今後日本の株式市場で行動していくには日本のGPIFの動きをみて行動を起こしていかざるをえないであろう。
売り場面で外国人投資家は決算にからめた商品はほぼ売り尽くしたといっており、新たな行動は買いしかない
ヘッジファンドの10月の運用成績は2011年9月の3.0%の損失に次ぐ2.6%の損失となり、懐は「スッテンテン」の状態と言われているので、あと6ヵ月は新たな行動を考えることはない状態になってしまった。 10月中に日本年金のGPIFは3週連続で日本株の安値を(外国人が売った安値で)思い切り買い越した。もしもGPIFが外国人の投機的ヘッジファンド勢の投機行動を見透かして9月の買い行動を11月に変更したかどうかは定かではないが、リスクオフ時代であれば回転していたヘッジファンドの行動は今回の9月から11月決定の遅れによって立ち消されたことは確かである。これからはヘッジファンドの稼ぐ時代はなくなり、日本株はGPIFを中心にヘッジファンドと日本個人投資家との「三つ巴戦」によって動いていくものと考えられる。
今後のヘッジファンド勢の売買行動は短期間の借り入れマネーを中心に動いていくもので「売った翌日には買い戻す」という繰り返しの短期売買になると考えられる。米国のダウ平均株価は10月米国の景気の悪化などが市場に流れたが、あれはあくまでもウワサであって実体ではなく、米国景気は長期のリスクオンの中で上昇していることによって(後4-5年は続くということを意識して)株価の上昇が続いていくことを信じて行動していたからに他ならない。いずれにせよ10月からの外国人投資家のヘッジファンドの日本株売りに対して日本の信託銀行の下落相場の中での日本株買いと個人(日本の投資家)買いで日本の株式市場は大きな変化の時代に入ったことだけは間違いない。