次期早期警戒機、米提案の「E2D」に 南西の警戒監視強化
【日経】2014/11/21 20:04
防衛省は21日、外国機の警戒監視にあたる航空自衛隊の早期警戒機の新型機について、米政府提案の「E2D」を選定したと発表した。南西方面の基地に配備し、2019年度末の運用開始をめざす。航空機による警戒監視の体制を強め、東シナ海上空で日本領空への接近を繰り返す中国軍機をけん制する。
E2Dは米防衛大手のノースロップ・グラマン製。競合していた米ボーイング製「737AEW&C」に航続距離や搭載能力で劣るが、1機あたり144億円の低価格が決め手になった。飛行時間はE2Cの倍近い約6時間。15年度予算に取得費を計上し、18年度末までに4機を導入する。

平成27年度概算要求に計上している航空自衛隊の早期警戒(管制)機として、本日、以下のとおり機種を決定したので、お知らせします。
1 提案者及び機種
米国政府提案のE-2D
2 選定理由
・ 第1段階評価においては、必須要求事項を満たすか否かを評価し、いずれの提案機種もこれを満たした。
・ 第2段階評価においては、「機能・性能」、「経費」及び「後方支援」の3要素について総合的な評価を行い、これら3つの要素の評価点の合計が高かったE-2Dを早期警戒(管制)機として決定した。

海上自衛隊はE-2Dを推し、肝心の運用する航空自衛隊はE737AEW&Cを推す声が大きかったとの情報だったので、どちらに決まるか気になっていた。
私はもしE737AEW&Cを採用するのであればE767でも予算的に変わらないのではないかということで、E767の再生産を主張していたのですが、E737AEW&Cになるくらいならば、E-2Dに決まり良かったと思っている。
E-2Dの特徴は、情報伝達能力が高いことだ、味方のイージス艦や陸上の基地に、リアルタイムで情報を送り届けることができる。また、米軍採用機なので米国防省予算による将来に渡っての継続的なアップツーデイト能力向上が期待できるうえ、今のE-2Cの設備をそのまま使用できるメリットがある。
E-2Dはステルス機が見える最新レーダーAPY-9レーダーはUHF周波数帯(300MHz – 1 or 3GHz)を使用する世界初のアクティブ・フェイズド・アレイレーダー(AESA)を搭載する。円盤状の装置がレーダーで、回転しながら海上や空中の物体をとらえる。探知能力は従来型の半径380kmほどに対し、E-2Dは550km以上。
場所によっては、中国沿岸部の動きも探知可能。また、無人機や巡航ミサイルなど、小型、あるいは高速の物体の探知能力も向上したという。

ステルス機に有効なE-2Dの新型レーダー【航空宇宙ビジネス短信】
ノースロップ・グラマンE-2D高性能ホークアイは米海軍にとって敵の第五世代戦闘機や巡航ミサイルの脅威に対する秘密兵器になるかもしれない。東シナ海上空で仮に中共空海軍と戦闘が発生した場合、米第七艦隊との連携した作戦が考えられる。その点を考慮するとE-2Dの選択は正しい。日本は固定翼機を搭載した航空母艦は保有する計画は今のところないが、もし、いずも型、新型強襲揚陸艦でF-35Bを運用することがあれば、電磁カタパルト+アレスティング・ワイヤー+E-2Dの可能性もありうる?(妄想です)
1.そのカギを握るのが同機が搭載する強力なUHFバンドの機械式・電子スキャン式のハイブリッドAN/APY-9レーダー(ロッキード・マーティン製)だ。UHFレーダーはステルス技術への効果的な対抗手段となる。
2.その一例が国防大学National Defense Universityの合同軍四季報Joint Forces Quarterly 学術誌の2009年第四四半期号に掲載されたアレンド・ウェストラ Arend Westra の論文だ。
3.「波長を延ばして共振させることでVHFおよびUHFレーダーでステルス機を探知できる」とウェストラは「レーダー対ステルス」の題で投稿している。
4.UHFバンドのレーダーの周波数は300MHzから1GHzで波長は10センチメートルから1メートルになる。ステルス機戦闘機では物理特性によりKa、Ku、X、Cバンドのいずれかあるいは一部のSバンドの高周波数で探知困難にしている。だが航空機の尾翼端など構造の寸法が波長の八分の一以下と等しくなると共振現象が発生し、レーダー断面積が変化する。
5.つまり小型ステルス機ではレーダー吸収塗料を厚さ2フィート以上も施す余裕がないのでステルス性を発揮できる周波数帯を選択し、それ以外はあきらめるしかないということだ。
6.幾何学的視覚パターン分散が可能なのは大型ステルス機のみ、ただし機体表面に突出したものがないことが条件で、これを満たすのは現在はノースロップ・グラマンB-2だけだが、将来は長距離攻撃爆撃機が加わる。「戦闘機サイズの機体では発見は免れえない」とある筋がUSNI Newsに解説している。
7.ただしウェストラ他多くが指摘するのがUHFやVHF帯のレーダーにも欠陥があるという点だ。「角度と距離によって解像度が低くなり、従来はUHFやVHFは正確な目標探知や火器管制には使えなかった」(ウェストラ)
8.ノースロップ・グラマンとロッキード・マーティンはこの欠点を克服したようで、APY-9には高性能電子スキャン能力とともに強力なデジタルコンピュータを組み合わせた処理を可能としている。海軍関係者によるとAPY-9の性能はE-2Cの搭載するレーダーより大幅に向上しているというが海軍はこの点を公にしていない。
9.「E-2DのAPY-9レーダーにより早期警戒と状況把握能力はすべての航空目標に有効になり、航空機以外に巡航ミサイルにも有効」と海軍航空システムズ本部はUSNI Newsに電子メールで回答している。「APY-9は新技術を採用しており、1970年代の技術を使うE-2CのAPS-145レーダーよりはるかに高性能」
10.海軍はE-2Dの役割は海軍統合火器管制防空体制 Naval Integrated Fire Control-Counter Air (NIFC-CA)(ニフッカアと発音してください) の中央で敵の航空機及びミサイルの脅威に対抗することとしており、マイク・マナジル少将(航空戦部長)はこの概念を昨年12月にUSNI Newsに明らかにしている。
11.NIFC-CA構想の「From the Air」(FTA)仕様によりAPY-9 はセンサーとしてレイセオンAIM-120 AMRAAM 空対空ミサイルに目標指示を与える。これはLink-16データリンクを介しボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットに伝えられる。
12.それ以外にAPY-9はスタンダードSM-6ミサイルを誘導するセンサーにもなる。同ミサイルはイージス巡洋艦・駆逐艦からSPY-1レーダーの有効限界より先にある目標に対してNIFC-CAの「From the Sea」(FTS)仕様の協調戦闘能力 Cooperative Engagement Capability のデータリンクで伝えられる。これまでのところNIFC-CAのミサイル実弾試射は全数成功している。
13.E-2D初の飛行隊VAW-125が作戦能力を獲得する今年10月にNIFC-CAの実用化も始まる。
14.APY-9は独特の設計となっている。NAVAIRとノースロップは同レーダーはAPS-145の「2世代先」だと自慢しているが、外観上は機械式スキャンのAN/APS-145と同じでも、内部は全く別となっている。
15.APY-9はE-2Dのレドーム内部で回転し、360度を監視できるが、乗員によりアンテナの回転速度は調整可能で、対象方面に焦点を合わせることができる。さらに18チャンネルのパッシブ式フェイズドアレイADS-18アンテナにはレーダービームを電子的に制御可能。また電子スキャン式の敵味方識別能力もある。
16.送受信部のハードウェアは胴体内部に装着し、アンテナとは高出力の高周波送信線と高速回転カプラーで接続する。その意味でこれはアクティブ電子スキャンアレイ方式のレーダーではない。
17.APY-9は高性能空中早期警戒監視Advanced Airborne Early Warning Surveillance、高性能広域スキャンEnhanced Sector Scan、および高性能追跡Enhanced Tracking Sectorの3モードへ切り替え可能である。
18.このうち高性能空中早期警戒監視モードが通常の用途で、360度にわたり同時に空中と地上を対象に、レーダー断面積が小さい目標を長距離にわたり捕捉することが可能。このモードでレーダーは10秒で1回転する。
19.高性能広域スキャンモードはこれまでの機械式スキャンと操作可能な電子スキャン技術を一緒にして、双方のいいところを取り、それぞれの方法の欠点を埋めるものだ。アンテナは機械式に回転するが、操作員は任意の方角を選択し、その部分でアンテナ回転を減速し、詳細情報を得ることができる。
20.高性能追跡モードは完全な電子スキャン方式でアンテナは安定化されるか特定の目標追跡にされる。高精度の目標追跡ができ、アンテナを止めて完全に電子式にスキャンすれば特定の地区での追尾が可能だ。ステルス機にはこのモードが効果を発揮する。
21.APY-9の有効距離は300海里以上だが通常運用高度が25,000フィートというE-2Dの機体性能で制約を受ける。
22.海軍はE-2Dを75機導入する予定で2020年代に艦隊に配備が完了する。■
航空自衛隊で運用しているE-2Cの弱点の一つが居住性の悪さだが、航空ファン2014年4月石川潤一氏の記事によれば、E2-D採用のオプションとして、居住性の改善策が提案されているとのこと。陸上機として使用する場合不要となる一部機器を外し、小型化することで、隔壁とオペレーションルームの空間に小型のトイレユニットを設置、一部オペレーション電子機器の小型化で、小型冷蔵庫と電子レンジを搭載する案が提示されているらしい。もちろん、その分コストは跳ね上がるらしい。


早期警戒機E2C 三沢から那覇への“お引っ越し” 「脅威」はソ連から中国へ 【産経】2014.11.21 06:00
今年4月、青森県の航空自衛隊三沢基地(三沢市)から、沖縄県の那覇基地(那覇市)への“お引っ越し”が行われた。三沢基地の飛行警戒監視隊に13機配備していた早期警戒機E2Cのうち、4機を那覇基地に移転し、警戒航空隊第603飛行隊を新編した。
第603飛行隊の誕生は、中国の存在抜きには語れない。
平成24年12月13日、中国国家海洋局所属の多用途小型プロペラ機Y12が尖閣諸島(沖縄県石垣市)の魚釣島付近の日本領空を侵犯した。この際、自衛隊のレーダーではY12を捕捉できなかった。F15戦闘機とE2Cを緊急発進(スクランブル)させたのも、海上保安庁の巡視船から連絡を受けた後だった。空自にとっては「絶対にあってはならないこと」(関係者)という屈辱だった。
空自は同年9月の尖閣国有化を受け、三沢基地のE2Cを那覇基地に展開していたが、この事件をきっかけにさらに態勢を強化した。浜松基地(浜松市)に拠点を置く早期警戒管制機(AWACS)とともに尖閣周辺空域での警戒・監視活動に当たった。
E2CとAWACSによるスクランブルは年間20件程度だったのに対し、24年度は250回前後に激増したとみられている。スクランブルは25年度も増え続け、中国政府の防空識別圏設定や、中国軍機による自衛隊機への異常接近など南西方面の緊迫は増すばかりだ。このため、1年8カ月の“出張”を経て、隊員約60人、E2C4機の陣容で603飛行隊が新編された。
「力による現状変更の試みが継続されており、不測の事態を招きかねない危険な状況になっている。地上固定式レーダーを補完する警戒航空隊の果たす役割は重要だ」
第603飛行隊の発足式が行われた今年4月20日、当時の小野寺五典(いつのり)防衛相はE2Cが果たす役割をこう強調した。
円盤状の回転式アンテナが特徴のE2Cは「空飛ぶレーダーサイト」とも呼ばれる。数多くの敵機を同時に追尾し、対空無線で敵機の位置情報などを地上の防空司令所や遼機に伝送し、要撃機を指揮することもできる。全長約49メートルのAWACSと比べて17.6メートルと小型のため、すぐに飛び立つことができる即応性も強みだ。
E2Cが自衛隊に部隊配備されたのは昭和58年2月のことだが、これも自衛隊にショックを与えた事件が背景にある。
51年9月のベレンコ中尉亡命事件だ。ソ連(当時)の戦闘機ミグ25が北海道南部に低空飛行で侵入し、函館空港に強行着陸したが、自衛隊は追跡途中で戦闘機を見失った。地上レーダーでは水平線の向こう側を低空飛行する航空機を捉えることはできない。このレーダー網の穴を埋めるために導入されたのがE2Cだった。
冷戦時代の主要脅威であるソ連をにらみ青森県に配備され、冷戦後は台頭著しい中国軍に対抗するため沖縄県に移転されたE2Cは、日本の脅威認識の変化を象徴する存在といえる。(政治部 杉本康士)
イギリスで空母クイーンエリザベス搭載用にオスプレイAEW機を計画していたが、QE級の基本設計がSTOVL空母か通常空母にするか二転三転するうちに計画がいまのところ立ち消えになっている。







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