
武器輸出に資金援助、防衛省が新制度創設を検討へ=関係者
【ロイター】2014年 11月 27日 11:40 JST
[東京 27日 ロイター] - 防衛省は、軍事装備品の輸出を後押しする新しい資金援助制度の創設に向けた検討に入る。武器を日本から調達する国や、他国との共同開発に乗り出す日本企業などを金融面で支援。政府開発援助(ODA)では扱えない相手国の軍事力向上に協力できる体制を整える。
日本との安全保障関係を強化することが狙いだが、世論の反発など実現には紆余曲折が予想される。
<16年度予算に反映>
防衛省は、有識者による研究会を12月中旬にも立ち上げる方向で調整している。輸出案件の発掘から相手国や競合国との交渉、輸出に当たっての資金援助、修繕・管理まで、「輸出を促進するためのすべての問題を議論する」(関係者)という。
研究会には安保政策や武器輸出に詳しい有識者のほか、金融や法律の専門家、防衛産業の関係者などに参加を打診した。複数の関係者によると、2016年度の予算要求に具体的な施策を盛り込めるよう、来夏までに提言をまとめる予定だという。
制度の本格的な検討はこれからだが、政府内では独立行政法人や特殊会社を通じて財政投融資を資金援助に使う案などが浮上している。途上国が日本から武器を購入する際に有償・無償で援助をしたり、相手国の産業振興につながる共同開発・生産に参画する日本の装備メーカーに、低利融資を提供することなどを想定している。
また、輸出した武器を使いこなす訓練や修繕・管理の支援に、退役自衛官などの人材を派遣する機能を付加することも議論されている。
「ファンド機能と実行部隊。国際協力銀行(JBIC)と国際協力機構(JICA)をミックスしたようなイメージだ」と、関係者は話す。既存の政府系機関を活用する以外に、新組織を設立する必要性も、研究会の議論に上る可能性がある。
<シャングリラの公約>
日本は4月に武器の禁輸政策を見直し、一定の条件を満たせば輸出を許可する防衛装備移転三原則を導入した。5月の東アジア安全保障会議(シャングリラ対話)で講演した安倍晋三首相は、南シナ海をめぐって中国と緊張状態にある東南アジア諸国連合(ASEAN)の海洋安全保障を支援することを約束した。
しかし、それ以降に決まったASEAN向けの協力は、ODAを使ってベトナムの海上警察、漁業監視部隊という非軍事部門に船舶を無償供与する案件のみ。官民の一行が需要を探りにマレーシアへ飛んだほか、ASEAN各国を日本に呼んで装備品の展示会を開催、掃海艇の造船所に案内するなどしているが、軍隊向けの武器輸出は具体化しそうな案件がまだない。
防衛省はODAで許されていない軍事支援向けの資金援助や、需要の発掘、修繕・管理の協力体制を整えることで、装備品の輸出を促進したい考え。「三原則の見直しで審査プロセスは整ったが、積極的に武器移転を進めるような制度が構築できているわけではない」と、関係者は話す。「新たな三原則が生きるかどうかは、今後の政策次第だ」と語る。
一方で、実現には財務省や経済産業省、外務省など関係省庁との調整のほか、武器輸出拡大への反発が予想される世論の説得が必要になる。関係者は「この仕組みは必要だ、そうみんなに理解してもらえるようにしないといけない」と話す。
防衛省の報道官はロイターの取材に対し、「防衛装備移転についてはさまざまな検討をしているが、何も決まっていない」としている。
これで、ベトナム・フィリピン・インドネシアに日本の潜水艦、地対艦ミサイルを売り込むことができる。
チョークポイントに地上発射対艦ミサイルと日本の潜水艦を配備すれば中国海軍は袋のネズミである。
さっそく、「中国網日本語版(チャイナネット)」 2014年11月28日日本が武器輸出の資金援助制度を検討、中国の怒りを買うか=ロイター通信と、高レスポンス反応を示してます。
ロイター通信の27日の報道によると、日本は武器輸出を支援する資金援助制度を創設し、日本製武器を購入しようとする国、他国と共同開発に取り組む日本企業に資金援助を提供することを検討している。これは日本の新たな武器輸出三原則に続く、武器輸出の「正常化」に向けた最新の動きだ。
ロイター通信は、「これは安倍晋三首相が主導する平和主義から外れる歩みを加速し、中国の怒りを買う可能性がある」と報じた。道紀忠華シンクタンク首席研究員の庚欣氏は27日、環球時報の記者に対して、「日本は徐々に、局部から全局面へと、戦後になり国際社会から与えられた専守防衛の位置付けを打破しようとしている」と指摘した。
東洋経済オンラインは27日、「日本の政府開発援助(ODA)の規定には、武器購入や武器開発などに使用できないという規定がある。防衛省は新たな援助制度を創設することで、武器輸出の道を切り開こうとしている」と伝えた。4人の消息筋はロイター通信に対して、「日本政府は一歩目として、専門家による会議を開き、日本企業の武器輸出活動および海外との国防工業協力に資金を提供する方法について具体的な提案を行う。国際協力銀行(JBIC)と国際協力機構(JICA)にならい、政府支援機関を創設し、軍事プロジェクトに優先的に資金を援助することが考えられる」と述べた。朝日新聞は、「防衛省は専門家の会議を開き具体的なプランについて検討し、来年の正式な実施を目指す」と報じた。
ロイター通信は、「最近検討中の一連の潜在的な取引(オーストラリアへの潜水艦の輸出、インドへのUS-2水陸両用機の輸出、外国企業との輸送ヘリの共同開発など)により、日本政府は資金を獲得する可能性がある。同時に防衛省高官は、東南アジア諸国と共同開発プロジェクトを推進し、国防工業のつながりを強化すると同時に、中国とのパワーバランスを整えようとしている。情報によると、日本の高官はインドネシアとマレーシアを訪れ、取引に関するリサーチを行った」と報じた。朝日新聞は、「日本の武器輸出はすでに正常化に向かっている」と論じた。
防衛省は本件に関するコメントを避けている。防衛省の報道官はロイター通信に対して、「防衛装備については、さまざまな選択肢を検討しているが、現時点では何も決定していない」と述べた。
庚氏は27日、環球時報に対して、「日本の武器輸出は、大勢の赴くところだ。安倍首相は防衛装備の輸出により、自身の政治学と経済学を融合させ、相互作用を形成しようとしている。しかし安倍首相の計算は、実現困難だ。東アジアを含むアジア太平洋は発展の時代にある。日本政府の、戦後の国家の位置づけを変えようとするやり方は、日本の国家イメージを損ね、割に合わない。日本の武器輸出緩和の動きは、地域の軍事構造に一定の不確定性をもたらす。しかし日本には、地域の安全・軍事バランスを覆すような影響力はない。中国も自国の安全と安定を、日本の慈悲に委ねることはない」と分析した。
新たな武器輸出三原則により、日本は広範な条件下で武器装備・技術を輸出できるようになった。これは日本の武器輸出推進の、唯一の具体的な動きではなくなっている。週刊ダイヤモンド(電子版)は、「三菱重工や富士通などの軍需企業は今年6月、世界最大の武器見本市・ユーロサトリに出展し、警戒・監視、輸送、災害救助、掃海などの武器輸出市場を積極的に開拓し、買い手を集めようとした」と報じた。防衛省の関係者は、「武器輸出三原則を改訂してから、陰に隠れていた日本軍需産業が、大きな転機を迎えた」と語った。
ロイター通信は27日、「安倍政権は意欲的だが、多くの日本企業は武器輸出を望んでいない。日本の分裂した国防工業において、武器輸出によって経営を維持できる企業は多くない。武器生産企業も、この経営範囲を公にしようとしていない」と報じた。三菱重工の役員はロイター通信の取材を受けた際に、「軍需産業の拡大は当社のことではなく、政府が何をすべきか決めなければならない。当社は海外への武器輸出に積極的ではない」と述べていた。朝日新聞は、「日本政府のこの動きは、批判を受けるばかりか、実現も難航するだろう」と報じた。
豪が最新鋭艦の建造を日本に打診、潜水艦の輸入検討=関係者
【ロイター】2014年 11月 19日 06:50 JST
[東京 19日 ロイター] - 日本から潜水艦を輸入することを検討しているオーストラリアが、リチウムイオン電池を搭載した最新鋭艦の建造を日本側に打診したことが明らかになった。ドイツなども自国の潜水艦を売り込もうとしているが、オーストラリアは隠密性に優れた自衛隊の潜水艦を評価。両国は合意に向けて協議を進めている。ポストそうりゅう型次期潜水艦28SSについて
日本の現行潜水艦は鉛蓄電池を使用している。しかし、複数の日豪関係者によると、オーストラリアはより高性能の潜水艦を希望。日本が来年度から建造するリチウムイオン電池を積んだ最新鋭艦に「高い関心を寄せている」と、関係者の1人は話す。
日本とオーストラリアは10月に東京で防衛相会談を開催。ジョンストン国防相は江渡聡徳防衛相に対し、オーストラリアの潜水艦建造計画への協力を要請した。さらに11月12日にミャンマーで会談した安倍晋三首相とアボット首相は、防衛装備品の協力を進めていくことをあらためて確認した。
複数の関係者によると、両国は実務者レベルで月1度以上のペースで協議を重ね、現在は推進機関など技術的な仕様の議論にも入りつつあるという。
日本側には、潜水艦という機密性が高い防衛装備品の輸出に慎重な声もある。関係者によると、オーストラリアの予算と要求に合わせ、自衛隊の潜水艦とは仕様を変えたものを提案することになりそうだという。リチウムイオン電池を搭載した艦が輸出可能かどうかは検討中だが、別の関係者は「結構性能の高い潜水艦を出すことになるだろう」と話す。
複数の米軍関係者は、3カ国の海軍の相互運用性が高まるとして、オーストラリアが日本から潜水艦を調達する計画を歓迎している。16日の主要20カ国・地域(G20)首脳会議の際に会談した日米豪の首脳は、合同演習や防衛装備品で協力を深めることで一致した。関係者によると、武器システムは米国製を搭載する見通しだ。
<リチウム電池の優位性>
海上自衛隊のディーゼル潜水艦「そうりゅう」は、エンジンで発電した電気を鉛蓄電池に充電。潜航中は蓄えた電気を動力源にしている。数日ごとに海面近くまで浮上して充電する必要があるため、空気を必要としない推進機関AIP(非大気依存推進)も積んで連続潜航期間を2週間程度まで伸ばしている。
一方、来年度から建造するそうりゅうは、鉛蓄電池とAIPから大容量のリチウムイオン電池に切り替えることで、潜航期間が「格段に伸びる」(防衛省関係者)という。
海上自衛隊の潜水艦隊司令官だった小林正男・元海将は「安全に、かなり長い期間オペレーションができるようになる」と語る。AIPは使い切ったら基地に帰還しないと機能が回復しないが、リチウムイオン電池は「安全なエリアまで移動して再充電すれば能力が回復し、すぐに作戦海域に復帰できる」と、同海将は指摘する。
建造費は1隻およそ640億円と、現行型に比べて100億円以上高くなるものの、防衛省関係者によると、電池寿命が長く、15年間使った場合のライフサイクルコストは現在の1000億円よりも安くなるという。
<欧州勢が売り込み>
6隻の潜水艦を保有するオーストラリアは、2030年ごろに世代交代を計画。最大12隻の調達を検討しているが、独力で建造する能力に乏しく、日本に建造を発注し、完成品を輸入することを最有力の選択肢としている。
しかし、オーストラリア国内では産業の活性化や雇用の増加につながらないとして、国外で建造する案には与党内からも反発が強まっている。ドイツやフランス、スウェーデンも自国艦を売り込みたい考えで、入札にすべきとの声が広がっている。ドイツメーカーのティッセンクルップは8月、キャンベラを訪問してオーストラリア国内での建造を提案した。
ただ、日本以外はオーストラリアが求める4000トンクラスの大型ディーゼル潜水艦を造った経験がないうえに、いずれも現行そうりゅうと似た推進システムを採用している。さらに関係者の1人によると、各国の潜水艦の中で、日本のそうりゅうがトン当たりのコストが最も低いという。
アボット首相はかねてから「最も重要なのは、最高の能力を持った潜水艦を納税者にとって妥当な価格で調達することだ」と語っている。
日本は4月に武器の禁輸政策を見直し、一定の条件を満たせば輸出や他国との共同開発を認める防衛移転三原則を導入した。オーストラリアへの輸出が実現すれば、完成品を海外に売却する初のケースとなる。中国が南シナ海、東シナ海への進出を積極化する中、日本は装備品の協力を通じ、オーストラリアとの安全保障関係を強化したい考え。
日本の防衛省は「オーストラリアとは防衛装備品の協力でさまざまな協議をしているが、詳細は差し控える」とコメント。オーストラリアの国防省は「日本が電池の能力向上を検討していることは報道で承知しているが、潜水艦の推進機関について具体的なコメントはしない」としている。
(久保信博、ティム・ケリー)

排水量 基準:2,900トン 水中:4,200トン 長さ82m,幅8.9m,速度20ノット,作戦潜行可能深度500m スターリング機関AIP潜水艦,555mm魚雷発射艦6門,ハープン対艦ミサイル発射可能
X型舵,特殊吸音タイル装着,代替用低周波パッシブソナー・アレイタイル装着可能(片側100×12=1200個)
日本の潜水艦が技術的にも能力においても世界最高水準にある。
通常動力型としてもAIP潜水艦とし世界最大にして高性能のそうりゅう型は、現在、平成26年度計画10番艦まで計画されていて、平成27年度に最終11番艦が予算請求される見通しである。なお、11番艦はAIPを積まず、ディーゼル+リチウムイオン電池となるプレ28SS型である。
※なお当初は、5番艦(SS-505)から、主蓄電池としてリチウムイオン蓄電池を搭載することで、艦の巡航速度を改善し高速航行可能な時間を増大させる予定となっていたが、財政上の都合でリチウムイオン電池の搭載は11番艦からとなる。
平成28年予算においてポストそうりゅう型次期潜水艦28SSが計画されている。そうりゅう型と28SSの最大の相違点はスターリングエンジンを廃してディーゼル+リチウムイオン電池+燃料電池となることだ。

潜水艦技術を供与して台湾の苦境を救え 台湾防衛は日本防衛に直結している 【JBpress】2014.11.20(木) 北村 淳
安倍政権はオーストラリアに日本の高度な潜水艦技術を供与しようとしているが、日本防衛にとってオーストラリア以上に直接的影響を持つ国が先進的潜水艦を渇望し続けている。それは台湾である。
強大な潜水艦艦隊を擁する中国海軍に対して、少数の、博物館入りしていてもおかしくない老朽潜水艦で立ち向かっている台湾は、アメリカ政府が約束した潜水艦の供与を13年間待ち続けてきた。しかしながら、その実現は遠のいてしまった。そこで先日、台湾海軍は「座して死を待つことはできない」と自力で潜水艦を建造する方針を打ち出した。
ところが「とても台湾が独自に先進的潜水艦を建造することは困難である」というのが多くの米海軍関係潜水艦専門家の見方である。そしてここに来て、「日本こそが台湾海軍の苦境にとって一縷の光明である」という声がささやかれている。
台湾には老朽潜水艦しかない
安倍政権が技術供与に積極的なオーストラリア海軍と同様に、というよりもそれ以上に、台湾海軍が保有している潜水艦は時代遅れの旧式潜水艦である。
現在、台湾海軍は海獅級潜水艦2隻(海獅、海豹)と海龍級潜水艦2隻(海龍、海虎)を運用中である。いずれの潜水艦も海上自衛隊やオーストラリア海軍同様に通常動力型(推進動力が原子力ではない)潜水艦である。
海獅級潜水艦は1973年にアメリカから台湾に供与された。アメリカ海軍でそれぞれ「カトラス」「タスク」と命名されていた「海獅」と「海豹」は、70年代初頭までアメリカ海軍に在籍していた。とはいえ、設計は第2次世界大戦期であり、台湾海軍に引き渡された当時でもすでに時代遅れの潜水艦であった(カトラスは1944年に起工、タスクは1943年に起工された)。
もちろん台湾海軍は、もはや博物館展示用と見なさざるをえない2隻の海獅級潜水艦を実戦用としてではなく練習用として運用している。したがって、台湾海軍の潜水艦戦力は海龍級潜水艦の2隻だけということになる。
その海龍級潜水艦は、1982年から86年にかけてオランダ海軍のズヴァルドフィス潜水艦を原型としてオランダで建造され、「海龍」は87年に、「海虎」は88年にそれぞれ就役した。これらの海龍級潜水艦といえども就役から既に4半世紀を経ているだけでなく、そもそも原型のズヴァルドフィス潜水艦は1960年代に建造された旧式潜水艦なのである。
<台湾海軍潜水艦「海龍」と台湾海軍ヘリコプター(写真:台湾海軍)>
島嶼国家防衛に欠かせない潜水艦
言うまでもなく台湾軍の主たる任務は、中国人民解放軍の侵攻を阻止することにある。そして、台湾海軍が重責を負っているのは、人民解放軍海軍(以下、中国海軍)が台湾周辺の海上封鎖を実施できないようにすることである。
台湾や日本のような島嶼国家に対する海上封鎖を実施したり、逆に阻止するために、極めて重要な役割を果たすのが潜水艦である。それも静粛性が高い現代の通常動力型潜水艦が、攻撃側にとっても防衛側にとっても海上封鎖の鍵を握っていると言われている。
台湾同様に島嶼国家である日本は、日本周辺海域での外敵による海上封鎖に対抗するために高水準の潜水艦を保有している。ただし、海上自衛隊が現在運用している実戦用潜水艦は16隻であり、とても日本に対する海上封鎖に対処するには十分な数とは言えない。
一方、台湾や日本に対する海上封鎖を実施する可能性がある中国海軍は、通常動力型潜水艦を50隻以上(うち14隻は老朽艦の「明」級潜水艦、ただし毎年3隻以上の新造艦が誕生し続ける)も保有しており、日本に対しては無理でも、台湾を海上封鎖するためには十分な数の潜水艦を取り揃えている。
このような中国海軍と対峙している台湾軍は、骨董品に近い潜水艦を2隻しか実戦投入できないという極めて心細い状態が続いているのである。
約束を果たせないアメリカ
実は、中国海軍が現在のようにアメリカ海軍すら一目置くように強力に成長する以前の2001年、アメリカ政府(ブッシュ共和党政権)は台湾政府に通常動力型潜水艦8隻を供与する約束をした。
この当時の中国海軍潜水艦隊は、現在は退役が始まっている明級潜水艦と、既に姿を消したソ連製のロメオ級潜水艦という、当時においても旧式潜水艦で構成されており、ようやくロシアからキロ級潜水艦4隻を輸入したばかりであった(これらのキロ級潜水艦は、当時の中国海軍にとっては新型であったが、ロシアにとっては輸出用のダウングレードバージョンであった)。
一方の台湾海軍は、現在と同様に老朽海獅級潜水艦2隻と旧式海龍級潜水艦2隻を運用していた。そこで、ブッシュ政権が8隻もの潜水艦を台湾に供与すると約束したため、それが実現すれば中国海軍と台湾海軍の通常動力潜水艦戦力は逆転するはずであった。しかし、アメリカには原子力潜水艦を建造する技術だけしか存在せず、通常動力型潜水艦を建造する技術は存在しなかった(そして現在も存在しない)。
つまり、ブッシュ政権が8隻の潜水艦を供与すると約束しても、アメリカ自身で建造して台湾に売却することは物理的に不可能であった。そのため、アメリカ政府が通常動力潜水艦を建造する能力を持った諸国の政府に働きかけて台湾のために建造させてアメリカ経由で台湾に供与する、というのが唯一可能な方法であった。
もちろんアメリカの同盟国や友好国でなければ話にならない上、潜水艦を建造する能力を保有する国は極めて数が少い(このような事情は現在も同様である)。アメリカ政府が声をかけられる国としては、スウェーデン、オランダ、ドイツ、フランス、それに日本が考えられた。
アメリカとしては、当時においても高水準の通常動力潜水艦を建造しており世界で唯一つ潜水艦建造メーカーを2社(三菱重工、川崎重工)も擁している日本が理論的には最適の候補であったのは当然と言えよう。しかしながら、武器輸出三原則に拘泥していた日本は、当初より交渉の対象から外さざるを得なかった。
<海上自衛隊「そうりゅう」級潜水艦(写真:海上自衛隊)>
また、小型で高性能の潜水艦を作り出しているヨーロッパ諸国のうち、ドイツとフランスはともに潜水艦技術を中国にも輸出している疑いが持たれている。そのため、交渉相手はスウェーデンあるいはオランダが有望と考えられた。しかし、それらのヨーロッパ諸国に対して、中国側から交易関係を餌にした猛烈な働きかけがなされ、アメリカ経由とはいえ台湾向けの潜水艦を建造することにゴーサインを与える政府はなくなってしまった。
このように日本政府は武器輸出三原則のために蚊帳の外にあり、ヨーロッパ諸国は中国との商売を壊したくないため話に乗らず、アメリカ自身は通常動力潜水艦を建造できない、といった事情のため、アメリカ政府が台湾政府に対して公式に約束したにもかかわらず、結局、約束から13年経った現在も台湾に対する8隻の潜水艦供与は宙に浮いたままの状況が続いている。
そして、その13年間で、中国海軍は8隻の新型キロ級潜水艦をロシアから輸入し、20隻以上の新型潜水艦を自力で建造し、近年建造している最新型通常動力潜水艦は海上自衛隊の新鋭潜水艦に勝るとも劣らない性能であるとも言われている。
一方、アメリカに実質的には見捨てられた状態が続いている台湾海軍は、わずか2隻の骨董品的潜水艦で警戒を続けているのである。
技術供与に伴う危険性は台湾もオーストラリアも同じ
現在のように、台湾海軍と中国海軍の潜水艦戦力の差が決定的になる以前から、アメリカ海軍戦略家の中には次のような提案をする者が存在していた。
「どうせヨーロッパ諸国にとっての中国は商売相手でしかなく、台湾防衛など本気で考えるはずがない。台湾向けの潜水艦を作れるのは日本だけだ。
しかし、日本政府には台湾防衛がすなわち日本防衛であるという認識が欠けており、ヨーロッパ同様に中国貿易に目が曇らされてしまっているようだ。おそらくアメリカ政府が働きかけても、日本政府は武器輸出三原則を★盾★にして、台湾向けの潜水艦建造や中古潜水艦の提供などには、手を貸さないであろう。
だが、このまま台湾海軍が丸腰に近い状態でいれば、いずれは東アジアのアメリカ艦隊も日本自身も中国海軍の圧迫を受けることになってしまう。幸い日本では三菱と川崎が交代で潜水艦を建造しており、潜水艦関係技術者がふんだんに存在している。それらの優秀な技術者の半数をアメリカに招聘して、アメリカで通常動力潜水艦を建造して台湾に供与するという方策を、アメリカ海軍はアメリカ政府や連邦議会に働きかけなければならない」
現在のところ、このような提言をアメリカ政府が受け入れて日本の潜水艦技術陣をアメリカに招聘する動きが出ている様子はない。
一方の安倍政権は、武器輸出三原則を見直して防衛装備移転三原則を打ち出しただけでなく、日本の潜水艦技術の移転をオーストラリア政府に約束した。
(ただし、日本の新鋭潜水艦には、スウェーデンのエンジン技術をはじめ日本以外のメーカーの技術が盛り込まれているため、安倍政権の言う「日本の潜水艦技術のオーストラリアへの移転」の範囲は明確ではない)
したがって、台湾に対する潜水艦そのもの、あるいは潜水艦技術の供与は、日本国内の行政的束縛という面からは可能な状況にあると見なすことができる。このような状況を受けて、アメリカ海軍関係者たちの間でも「いよいよ日本が潜水艦分野で台湾の救世主になる時がやって来た」との声も挙がっている。
ただし、台湾に潜水艦を売却したり、潜水艦技術を提供するとなると、台湾と中国の多層レベルでの密接な関係から判断して、日本の潜水艦技術が中国に流れ出してしまう可能性も否定できない。しかし、やはりアメリカ海軍情報関係者によると「オーストラリア軍関係諸機関にも中国情報網は入り込んでおり、日本の潜水艦技術がオーストラリア経由で中国に流出しても何ら不思議ではない」のである。実際に、台湾軍高官がオーストラリアを経由して中国へ情報を流した事件も摘発されている。したがって、オーストラリアに潜水艦技術を供与することに前向きな安倍政権が、オーストラリア以上に日本防衛に直結している台湾の潜水艦戦力強化に何らかの協力をすることを情報流出の側面から否定することは矛盾している。
台湾の苦境を救うことは日本自身のためでもある
まして、日本が台湾のために建造する潜水艦は最新鋭潜水艦である必要はないし、最先端潜水艦技術を台湾に供与する必要もない。1世代前の海上自衛隊潜水艦でも、「海龍」と「海虎」で中国海軍と対峙している台湾海軍にとっては、救世主となり得るのだ。
日本が台湾に対して潜水艦部門で協力するとなれば、当然のことながら、中国政府からの対日反撃が猛烈なものとなるのは必至である。しかしながら、台湾防衛は日本防衛に直結しているという大原則を日本政府は直視し、目先の利益に惑わされず、将来の日本の防衛のためにそのような難局を乗り越える覚悟を決めて、オーストラリア以上に台湾に対する潜水艦分野での協力を実施すべきである。
台湾への直接供与は中国を大いに刺激することなる。もし台湾へ日本の潜水艦を輸出するとなれば、日本が米国に一旦輸出した後、台湾へ供与することになるだろう。その場合においても中国側のかなり大きな抵抗嫌がらせに合うであろう。しかし、日米にとって台湾は東アジアの地政学的要であり、台湾を失てからでは手遅れとなる。今後日本は台湾へ武器輸出を真剣に考えるべきだと思う。
候補としては12式地対艦ミサイル、ASM-3、10式戦車、機動戦闘車、F-3、護衛艦いずれも量産化効果がでるものを輸出する検討をしてみてはどうか?




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