不可解極まりない「時代遅れのAAV-7」大量購入
日本技術の発展にも米海兵隊にもデメリットをもたらす

【JBpress】2017.6.8(木)  北村 淳

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上陸したアメリカ海兵隊AAV-7(写真:筆者)                                                                             6月12~14日に幕張メッセで開催される「MAST Asia 2017」に、日本防衛当局の武器調達姿勢を評価する上で興味深い展示がなされる。それは、三菱重工業が社内研究として開発を進めてきた水陸両用車「MAV(Mitsubishi Amphibious Vehicle)」である。

今後高まる水陸両用車の需要

 MAVの研究開発は、長らくアメリカ海兵隊が使用してきた水陸両用車「AAV-7(水陸両用強襲車-7型)」の後継車両「EFV(遠征戦闘車)」の開発にアメリカ技術陣が失敗したため、「EFVに取って代わる車両を開発できないものか?」といった理由がスタートラインになったと筆者は推察している。

 この方向性は、軍事情勢に鑑みると極めて正しい。というのも、中国による海洋拡張戦略の伸展に伴って、日本からインドにかけての、中国周辺諸国ならびに“海のシルクロード”沿岸諸国では水陸両用作戦遂行能力の必要性が高まっている。そのため、国際的に様々な水陸両用作戦に有用な「水陸両用車」への関心が高まっており、今後はアジア太平洋地域を中心に水陸両用車の需要が高まることになるからだ(なお、本コラムでの「水陸両用車」とは、軽装甲が施され武装が可能な軍用の海上を航走できる車両を意味する)。

新型水陸両用車の開発に失敗したアメリカ

 現在、主に西側諸国の海兵隊ならびに海兵隊的組織が使用している水陸両用車は、アメリカ海兵隊が半世紀近くにわたって主要装備として使い続けてきた「AAV-7」である。AAV-7は1960年代に開発が始まり、1971年にアメリカ海兵隊に採用され(採用時には「LVTP7」と命名されていた)、以後、若干の改修は施されたものの今日に至るまで使用されている。

 ただし、AAV-7の基本コンセプトは、第2次世界大戦中に太平洋の島々でアメリカ海兵隊が日本軍との死闘を繰り広げた際に投入された水陸両用車と大差ない。すでに1980年代からアメリカ海兵隊では、各種ミサイルが発達した現代戦にはそぐわないものと考えられ始めていた。

 現代の水陸両用戦では、ミサイルやロケット砲を擁する敵が待ち構えている海岸線にAAV-7を連ねて突入する(強襲)ことはない。AAV-7の投入形態としては、敵の防御が希薄な地点に急接近する(襲撃)作戦が現実的である。だが、水上での最高速度が7ノットのAAV-7では敵に発見されて撃破されてしまう危険が極めて大きく「実際の戦闘状況では使い物にならない」とアメリカ海兵隊は考えた。

 そこで、1980年代後半に、高速で水上を航走できる新型の水陸両用車(「AAAV」:先進水陸両用強襲車)の研究にアメリカ海兵隊が着手した。その後、莫大な予算が投入され、「より早く、より遠くへ」という海兵隊のコンセプトを盛り込んだ「EFV」(遠征戦闘車)が開発された。開発したのはアメリカの重機械メーカー、ジェネラル・ダイナミクスである。

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        海上航行テスト中のEFV試作車(写真:米海兵隊)                         
 しかし、ユーザーであるアメリカ海兵隊によると問題山積の車両であり(“アメリカの恥になるため”公式には問題点は公表していないが)、かつ調達価格も考えられないくらい高額であるため、莫大な予算をかけたEFVプログラムはオバマ政権によって打ち切られた。

 結局、アメリカ海兵隊は、「時代遅れのAAV-7」に取って代わる21世紀の戦場に対応できる新型水陸両用車を手にすることができなくなってしまった。

 ただし、新型車両の調達を完全に中止してしまうと、新型車両開発予算そのものが将来にわたって消滅しかねない。そのため、とりあえずの“繋ぎ”として「ACV-1.1」(水陸両用戦闘車-1.1型)と呼ばれる新型水陸両用車を調達することにしている。だが、ACV-1.1はAAV-7の後継車両とみなすことはできず、「EFV開発以上の予算の無駄遣いになる」と多くの海兵隊関係者たちが危惧している代物である。
SAIC ACV 1 Next Generation Marine Amphibious Vehicle Presentation (Modern Day Marine 2016 Interview)
打ち砕かれた“海兵隊の期待”

 こうして、アメリカ海兵隊はEFVプログラムがキャンセルされ、“化石”のようになりつつある「時代遅れのAAV-7」を今後も(計画では2030年代まで)使い続けなければならない状況に陥った。そのため、なんとかして現代戦に適する「高速かつ長距離の水上航走可能な」かつ「EFVのような超高額でない」新型水陸両用車を手に入れたいと常々考えていた。

 そのような状況に苦しんでいた海兵隊関係者たちが、三菱重工業が社内研究していたMAVの情報に接し、極めて大きな関心を寄せたのは無理からぬところである。なぜならば、「MAVが完成した暁には、EFV以上の高速水上航走能力を持ち、EFVにはなかった諸性能をも実現させることが可能な、まさにアメリカ海兵隊が求める新型水陸両用車である」と海兵隊関係者たちの眼には写ったからである。

 ところが、それら海兵隊関係者たちの“希望の星”を破砕する“ミサイル”が日本側から発射された。すなわち、日本国防当局による50両以上にのぼる「時代遅れのAAV-7」の調達である(2015~2016年度に調達、参考「自衛隊の『AAV-7』大量調達は世紀の無駄遣いだ」)。

 各種水陸両用作戦(強襲を除く)に有用な水陸両用車の初期訓練のために、とりあえず実車が現存するAAV-7を手に入れることは自然であるし、必要である。実際に、日本が水陸両用能力を持つことに喜んだ海兵隊関係者たちの間には、自衛隊が当面の育成期間(水陸両用戦のドクトリンや組織などを構築するのに要する数年間)に必要な20両程度の訓練用AAV-7を海兵隊手持ちの1330両の中から供与するアイデアもあった。

 ところが、日本側は「中古では嫌だ」と言ってきたという。そこで、アメリカ海兵隊が「なんとかして新型に交代させなければ」と考えている「時代遅れのAAV-7」の“新車”を製造して日本に売却することになった。

 だが、とうの昔にAAV-7の製造ラインは閉じられている。製造ラインそのものを再開させなければならないため、1両あたりの調達価格は7億円という途方もない値段になってしまった。

 この調達に対し、筆者の周辺では「海兵隊から中古AAV-7を手に入れれば“タダ”だったのに」「BAE(日本向けAAV-7は全車両をBAE Systemsが製造輸出する)は笑いが止まらない」といった驚愕の声が聞こえてきたものだ。

 海兵隊関係者たちの驚きは、「時代遅れのAAV-7」が1両7億円という価格に留まらなかった。なんと自衛隊は訓練用のAAV-7だけではなく、部隊編成用に52両(実際には車両評価用6両と配備用52両の合計58両)もAAV-7を調達するというのである。水陸両用戦のエキスパートたちからは「なぜ、日本はあわてて52両ものAAV-7を手にしたがっているのか?」「水陸両用戦に関するドクトリンも誕生させていないのに、いったいAAV-7をどのように使おうとしているのか?」といった疑問がわき上がった。

海兵隊関係者がショックを受ける理由

 そして、MAVの情報を知っている海兵隊関係者たちは、次のようにショックを隠せない。

「50両以上ものAAV-7を自衛隊が手にしてしまうと、おそらくそれで水陸両用車の調達は当面ストップとなるだろう。いくら陸自が水陸両用能力を手にしようとしているといっても、水陸両用車を100両、200両あるいはそれ以上保有するような大規模な海兵隊化を目指している動きはない。とすると、MAVの開発はどうなってしまうのだろうか? 日本政府主導の開発プロジェクトが進まなければ、われわれ(アメリカ海兵隊)も、使い物にならないACV-1.1ではない『MAV』という真の新型水陸両用車候補が存在すると主張して、この窮地を乗り切ることができなくなる」

 この点こそ、まさに日本国防当局の問題点である。

 日本国内メーカーが、独自の技術を投入して新型水陸両用車の研究を進め、そのMAVに対して、水陸両用車に関しては突出した経験とノウハウを有するアメリカ海兵隊関係者たちが大いなる期待を寄せている。そのような状況下で、日本国防当局自身がアメリカ海兵隊が捨て去りたがっている「時代遅れのAAV-7」を、実戦配備用としてまとめ買いしてしまったのでは、海兵隊関係者たちがペンタゴンやトランプ政権に対して「日本には、海兵隊にとってぜひとも手に入れたい新型水陸両用車技術がある」と説得することなどできなくなってしまう。

 もしも日本政府、そして国会が、このような自国に横たわる技術の発展を阻害するような異常な兵器調達を是正して、日本製新型水陸両用車(あるいはその技術)をアメリカ海兵隊が採用するに至ったならば、少なくとも西側諸国の水陸両用車のスタンダードは日本技術ということになる。

 現代の水陸両用車は、日本政府や国会が忌み嫌う“攻撃型武器”ではなく、主として海上から海岸線への(またはその逆)の兵員輸送に用いられる軽装甲輸送車である。現在、水陸両用車の活躍が最も期待される戦闘シナリオは、混乱地域から民間人を救出し海岸線から水上の艦船へと避難させる非戦闘員待避作戦である。そして実際には、戦闘よりも大規模災害救援作戦に投入され獅子奮迅の働きをするのが水陸両用車である。したがって、軍事的見地からは噴飯物の“攻撃型兵器”を根拠に兵器の輸出に反対する勢力にとっても、国産水陸両用車(あるいはその技術)の輸出に反対する理由は見当たらない。

 日本政府は、国益を大きく損なうような、かつ正当化理由が見出しにくい「時代遅れのAAV-7」の大量輸入は、高額の違約金を支払ってでも即刻中断し、アメリカ海兵隊関係者たちも絶賛している日本技術を発展させるべきである。                           
(本コラムの見解は三菱重工業の見解とも、またアメリカ海兵隊の見解とも無関係であり、筆者個人の意見である。)  

三菱MAVとは?

三菱重工が陸上自衛隊向けに開発した16式機動戦闘車の技術を流用し、自社資金で開発した8×8装輪装甲兵員輸送車 三菱MAV(Mitsubishi Armored Vehicle)と思っていたが、防衛装備庁が開発中の新型水陸両用車両のことも
三菱MAV(Mitsubishi Amphibious Vehicle)と呼ぶのか?両方ともMAVと呼ぶと混乱してしまうので、三菱重工は正式に発表すべきだ。因みに三菱重工長崎機工(株)には防振装置シリーズのMAVがあり区別が必要である。

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Googleで”三菱MAV”と検索したところ・・・1ページのトップが私の記事だった(失笑)
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アルゴリズムで私の記事が選ばれたのは結構なことだが・・・・ちょっと・・・。

水陸両用車両が言及され、イメージ図が掲載されたのは平成25年(2013年)の防衛白書 第II部 わが国の防衛政策と日米安保体制 2 平成25年度防衛力整備の主要事項 だった
南西諸島をはじめとする島嶼を含む領土の防衛態勢の充実のため、装輪装甲車11両や軽装甲機動車44両、多用途ヘリコプター1機を取得し、迅速な展開を可能とする輸送力や機動力の強化を図るほか、水陸両用車を参考品として購入し、海上からの着上陸作戦能力の強化に向けた検討に着手する
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三菱重工は8×8の三菱MAV(Mitsubishi Armored Vehicle)も水陸両用の三菱MAV(Mitsubishi Amphibious Vehicle)どちらも陸自向けではなくワールドマーケット向けに輸出用として検討している。

実はわたくしも勘違いしていたのだが、防衛装備庁の陸上装備研究所のパンフレットの水陸両用車両と、三菱重工の水陸両用車両は別物ではないか?
形状がまるで違う、三菱重工の水陸両用MAV前部にフロートを付加するのも不自然だ。防衛装備庁の陸上装備研究所と三菱重工はそれぞれ似たような研究(装輪装甲車)を近年重複する傾向にあり、防衛装備庁の水陸両用車と三菱自工の水陸両用車は別物であると思う。
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「将来水陸両用技術の研究試作」の要旨http://www.soumu.go.jp/main_content/000000107.gif 評価書http://www.soumu.go.jp/main_content/000000107.gif 参考http://www.soumu.go.jp/main_content/000000107.gif を読む限り、やはり上記の三菱製水陸両用車とは別車両であろう。もしくは、三菱製水陸両用車は試作車両である。

参考の画像
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詳細モデル拡大
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この詳細モデルはイメージ図や陸上装備研究所のイラストに水陸両用車両↓とも異なる。
決定的なのは、事前の事業評価には日程表が提示してある。
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今は研究中であり、100歩譲っても、三菱重工の車両はあくまでもプロトタイプ以前の試作車両にすぎないのである。

将来水陸両用車輛は水際機動能力向上技術(水際での機動困難な条件を克服して機動性を高める技術)と海上高速航行技術(海上で車両が高速航行できる技術)が他国の水陸両用車両より別次元の卓越した高性能車両を目指し、EFV計画が頓挫した米海兵隊への輸出も考慮しているという。

米国でも採用されるには、現用のAAV-7の問題点も考慮することも必要かもしれない。だからといって、時代遅れのAAV-7の大量購入の理由にはならない。

なぜ時代遅れのAAV-7の大量購入を計画しているのか?その理由は軍事的必要性より、政治的必然性からだと思う。

一つは中国の尖閣上陸の危機レベルが差し迫っていること、もう一つは米国の尖閣が紛争地域になった場合、日米安保条約において参戦するラインを確認したからであると思う。

米軍は自衛隊が戦わない限り、交戦しない。マティス国防長官は尖閣が日米安保の適用範囲だとは言ってくれたが、米軍単独では戦わない。

日本が上陸作戦(尖閣ではなく石垣島や宮古島)を想定した場合、どうしても既存の車両が早急に必要だということだろう。

だが、新車にする必要はない、1輌1億円程度で導入できたはず。いったい誰が新車で7億にしたのか?、野党は加計よりそっちを追求すべきだろう。

新車で7億円としたのは、もしかしたら新水陸両用車両の価格が7億を想定すれば、新水陸車両を導入しやすいからかが理由ではないのか?清谷君出番だ!