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英海軍の次世代空母「HMS Queen Elizabeth(クイーンエリザベス)」が完成。26日に外洋での試験航海に船出した。

HMS Queen Elizabethは今後、6週間に渡って試験航海を行うことで艦船の基本機能の試験を実施。その後は、今後の母港となる英海軍の中核拠点となるPortsmouth Naval Baseに帰港することを予定している。

HMS Queen ElizabethはF-35Bを36機、AgustaWestland AW101(Crowsnest)ヘリコプターを4機搭載可能な正規空母で、この種の空母としては最新鋭のものとなる。

当初は、F-35の導入に遅延が生じる可能性が懸念されていたが、現在はメドが付いており、英海軍は試験航海の後は、Portsmouth Naval Baseでミッションシステムの試験に移行し、2018年からはF-35Bの実機を用いた実試験に移行することを予定している。

Portsmouth Naval Baseには、HMS Queen Elizabethと二番艦となるHMS Prince of WalesのためのQueen Elizabethクラスセンターと呼ばれる整備用施設の建造も進められている。

関連設備を含めたQueen Elizabethクラス2隻の総予算は60億ポンド(約8600億円)で、日本のいずも型軽空母2隻の予算の3倍近い費用が投じられている。

ただし、Queen Elizabethクラスの建造は多数の国内企業で分散して行われているため、高額な建造費は一種の公共投資的な側面も強いものとなっている。
HMS Queen Elizabeth 
Her Majesty's Ship Queen Elizabeth 直訳すると女王陛下のクイーンエリザベス号
英国の新しい空母「クイーン・エリザベス(HMS Queen Elizabeth)」が2017年6月26日、スコットランドのロサイス造船所(Rosyth Dockyard)を出発し、試験航海に向かった。 
Queen Elizabeth、初代エリザベス女王陛下は、テューダー王朝メアリ1世の次に王位についたの女王(在位1558~1603年)イングランドの王として統治した。当時の世界帝国はスペインであり、スペインは旧大陸・新大陸に広大な領土を持つ初代の「太陽の沈まぬ帝国」であった。一方イングランドは、ウェールズを含めて人口300万人ほどの、ヨ―ロッパの辺境の1小国にすぎなかった。ちなみに当時フランスの人口は1500万人、スペインは人口800万人であった。

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無敵艦隊の壊滅 収蔵:ロンドン国立海事博物館

新興勢力であるイングランドは、7つの海を支配するスペインポルトガルに対し、対抗上、海賊達による海賊行為を容認することで、上前をはね、国力を伸ばしてきた。海賊行為を取り締まるべく、スペインの無敵艦隊が鎮圧しに、イングランドに押し寄せたのだが、あろうことか、イングランドは、海賊達を自国海軍に組み込み、大国スペインとの決戦を挑むことになった。それが有名な1588年アルマダ戦争(海戦)である。大国スペインの無敵艦隊を、辺境の国イングランドが撃破したのは驚天動地の大事件だったわけである。エリザベス1世の強い意志は、後の大英帝国といわれるようになった18世紀以降のイギリスの中興の祖として、誇り高い名前なのである。

それだけにクイーン・エリザベスの名前が付いた軍艦は、日本で言えば、大和、武蔵、アメリカであれば、アメリカ、エンタープライズに匹敵する大看板の名前の一つだ。因みに、姉妹艦のプリンスオブウェールズも、先代はマレー沖で撃沈はされたが、由緒正しき名前の一つである。

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この英国の最新鋭空母は、実に未来的な船である。アメリカの最新型原子力空母ジェラルド・R・フォードが排水量10万1600トンで、乗員4000人であるのに対して、HMSクイーン・エリザベスはその3分の2の排水量の満載排水量67,669トンにもかかわらず、乗員はわずかに679人、飛行隊が配備される場合でも1000人前後であるに過ぎない。人手を極力廃した、省力化・自動化が近未来的な船だと言われています。
ちなみに満載排水量:27,000トンの空母いづも いづも型護衛艦は470名である。

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そもそも軽巡洋艦の改造ながら、世界初の航空母艦は英国のフューリアス(1917年改造)である。
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正式に空母として建造したのは我が帝国海軍の空母鳳翔(1922年就役)である。

だが、当時の空母は、戦艦の補助艦艇にすぎず、実験的な試みにすぎなかった。
よもや、敵戦艦を撃沈し、海戦の主役になるなど、誰も想像することなどできなかった。

航空母艦が、海軍の主役に躍り出たのは、我が日本帝国海軍による1941年12月8日6隻もの正規空母をつらねて太平洋を渡り、ハワイ真珠湾在泊中の米太平洋艦隊に大打撃を与えた真珠湾攻撃からである。


それと真珠湾攻撃の2日後、マレー沖にて、帝国海軍の陸上攻撃機のみの攻撃で英国東洋艦隊の主力戦艦、プリンスオブウェールズとレパルスを沈めたマレー沖海戦である。



1588年のアルマダの海戦から約4百年続いた、大艦巨砲主義が終焉し、空母の時代へと時代は移って行った。20世紀中は航空母艦は海軍の花形であった。

しかし、海軍の花形となって七十有余年、21世紀、空母を巡る事情は、花形スターは、いつまでも、空母にセンターを務めさせるには、厳しくなってきた。

超音速で飛行する巡航ミサイル/超音速地対艦ミサイルが登場し、実用化は疑わしいが対空母用の対艦弾道ミサイルDF-21Dが登場。さらに、無人航空機の能力向上もある。米国のステルス無人戦闘攻撃機X-47Bは航続距離3000km以上飛行し、爆弾/ミサイルを約2トンも搭載可能なのだ。

強力無比なミサイルと、より安価なロボット航空機の組み合わせは、昔ながらの空母の栄光を色褪せさせて余りある。長らく海の女王だった航空母艦は、かつての戦艦と同じ道を歩む瀬戸際にあります。現代の戦争では無用の長物になる恐れするあるのです。

しかしながら、空母無用論が台頭する中で、21世紀初頭、現実には、中国、インド、オーストラリア、スペイン、そしてイタリアまでもが、新たに航空母艦を建造し、日本も、ヘリコプター搭載の護衛艦いづも型、ひゅうが型の2クラス計4隻も保有し、世界中の海軍では空母建造ラッシュ、空母保有バブルとなっている。



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要目
基準排水量 45,000トン 満載排水量 67,669トン
全長 284m 全幅 73m 水線幅 39m 吃水 9.9m
最大速力 26 ノット 航続距離 10,000海里(18,520 km)
乗員 個艦要員767名、航空要員610名、司令部要員95名
兵装 ファランクスCIWS3基 30mm単装機銃4基
搭載機 F-35B ヘリコプター 40機

それにしても、完成に漕ぎ着けることができて、良かった。一時は完成も危ぶまれ、途中インドに売却するのではないかと危ぶまれた。2008年のリーマンショック後、英国の国庫は枯渇した。2010年の時点で、英国海軍は主要艦19隻を残すのみに弱体化していた。空母新造への期待は大きく、4万トンだった排水量は6万5000トンに引き上げられたり、計画自体がいったん白紙になりかけた。

次いで、費用節約のために装甲が削られることになった。搭載する戦闘機も二転三転した。搭載予定のF-35自体が問題を抱える為、開発が延期に次ぐ延期となり、英国防省は当初、短距離離陸・垂直着陸機F-35Bの調達を計画していた。それが一転して通常固定翼型のF-35Cになり、また短距離離陸・垂直着陸機F-35Bに戻されたのだ。
2010/2/14(日) 午前 0:01
2010/10/20(水) 午後 6:56

F-35の開発の遅れもあって一番艦の就役予定は2020年にまで延期され、しかも当初は12機のみの搭載で暫定運用されるという。

Queen Elizabethクラス2隻の総予算は当初2隻を合わせて20億ポンドと考えられていた調達費用が、60億ポンド(約8600億円)〜70億ポンド(約1兆円)、最大で約1兆2300億円にまで膨らむ予測さえある。

自衛隊の1番艦「いずも」(22DDH)は平成22年度(2010年度)予算で建造費1,139億円(初度費込み:1,208億円)、2番艦「かが」(24DDH)は平成24年度(2012年度)予算で建造費1,155億円(初度費込み:1,170億円)が計上されている。いずも型の3倍以上の価格とは確かに高いが、排水量もいずも型の3倍あるのだから価格も相応である。

もし、日本も、固定翼機を運用するのであれば、クイーンエリザベス型は目標となる艦と言えよう。

かつての日の沈まぬ帝国と言われた大英帝国、その海軍は帝国の誇りであった。栄光の英国海軍の象徴として、空母クーン・エリザベスは再び王座に座ろうとしている。