<記者用説明文>
ペンギンが高速に泳ぐ仕組みに倣った摩擦低減バブルコーティング 
物質・材料研究機構 内藤昌信
 ☎029-860-4783 学会発表番号 2R15 

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図1ペンギンの羽毛を模倣したバブルコーティング

<研究成果のポイント> 
●ペンギンが流動抵抗を低減して高速に泳ぐ秘密は羽毛中に含まれた気泡にあっ た。
 ●樹脂とフィラを組み合わせることで水中でも気泡を保持できるバブルコーティン グを開発

 <研究成果の概要>
 船舶輸送にとって水から受ける摩擦抵抗の低減は、コストやエコの観点から重要な 課題です。その対策の糸口として、私たちはペンギンが水中で高速に泳ぐ秘密に着 想を得た“バブルコーティング”を開発しました。
このバブルコーティングは、塗 膜中に空気の気泡を保持し、塗るだけで超撥水・多孔性塗膜を形成できることが特 徴です。船舶だけでなく医療や食品、建材など、摩擦の低減が求められている幅広 い分野への応用が期待できます。 

<研究成果解説文>
ペンギンが高速で泳ぐ仕組みを真似た摩擦低減コーティング材料の開発に成功 
Polymer Preprints, Japan 2018, 67 
著者名:内藤昌信 1, 2 
著者所属 
1. 物質・材料研究機構 
2. 東京大学大学院新領域創成科学研究科
 * E-mail: NAITO.Masanobu@nims.go.jp

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図2 ペンギンの羽毛を模倣した超撥水多孔体

船や水中移動体が受ける抵抗は、主に造波抵抗、形状抵 抗、摩擦抵抗に大別される。そのうち、造波抵抗と形状 抵抗については、流体力学のシミュレーション技術等の 向上によって大幅に低減できるようになった。

しかし、 船が受ける抵抗の 50-80%にも及ぶとされる「水と船体 壁面との界面で生じる摩擦抵抗」を大幅に低減させる技 術は未だに確立されていない。 

我々は、ペンギンの高速遊泳を可能にしている羽毛の多 層階層性がもたらす摩擦低減効果にヒントを得て、塗膜 中に空気のバブルを保持することができる超撥水・多孔 性塗料“バブルコーティング”を開発した。

ペンギン は、撥水性の羽毛の中に空気のバブルを保持し、それを 加速に併せてバブルとして放出することで、瞬間的な摩 擦低減効果を得ていると言われている。

我々が今回開発 したバブルコーティングは、樹脂とフィラを混ぜるだけ という簡便な方法で高い気泡保持能と超撥水性を発現で きる点がこれまでの撥水技術とは一線を画するオリジナ リティーである。

また、本法は様々な形状にも適用でき ることから、摩擦の低減のみならず超撥水や多孔性塗膜が求められる医療や食品、建材など幅広い分野において 応用が期待できる。

本研究は、防衛装備庁が実施する安 全保障技術研究推進制度の支援を受けたものである。

水中での航走は、水という大きな抵抗により、速度が大きく制約される。ところが、イルカ・鯨で約50km(27ノット)やシャチ80km(43ノット)、バショウカジキ110km(60ノット)移動することができる。水陸両用となるとペンギンだが、最速のジェンツーペンギンだと水中を35km(18ノット)で泳ぐことができる。



有人で最も高速な原子力潜水艦旧ソ連のアルファ型42ノット現役では米国のシーウルフ型で 約35 ノット程度。最も高速な水中武器である魚雷は 60 ノット程度が水中速度の上限となっている。 

ところが水中航走体で高速性を追 求する場合に、スーパーキャビテーション現象を利用すると、常識を超えた200ノットという水中速力を出すことが可能となる。

ロシアがリードする従来のスーパーキャビテーション技術を日本が周回遅れで開発しているというニュースではない。

日本でも、マイクロバブルとかスーパキャビテーション技術を研究開発している。

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三菱重工でも社内実験で水中速度100m/s=360km/h≒200ノットを達成している。日本でも、その気になればスーパーキャビテーション技術を使った水中ミサイルの開発はいつでも技術的には可能である。
1.はじめに
水中航走体は,周囲の水の抵抗により,速度が大きく制約される。有人で最も高速な原子力潜 水艦で 30 ノット程度,無人で最も高速な水中武器である魚雷でさえ 60 ノット程度が,その速度の 上限となっている。 
水中航走体の流体抵抗としては,物体後方の圧力が回復しないことによる圧力抵抗と,水の粘 性による物体表面の摩擦抵抗に大きく分類されるが,このうち,摩擦抵抗が大きな割合を占める 場合が多い。 
摩擦抵抗の低減については,古くから研究が行われており,その代表的なものとしては,いわ ゆる「鮫肌」に由来するリブレットを利用したものや,ポリマーやマイクロバブルを放出するものなど があり,マイクロバブルの放出については,商用の船舶において実用化に至っている。
これらは, 同じ速力で摩擦抵抗を低減してエネルギー効率を改善することを目的とする。他方,高速性を追 求する場合には,スーパーキャビテーション現象を利用することが考えられる。 スーパーキャビテーション現象は,液体の中において,物体の速度が上昇した際に発生するキ ャビテーション(気泡)が物体全体を覆うまで発達した状態のことで,高速で水中を航走する物体 の先端でスーパーキャビテーションを発生させて航走体全体を気層で覆うことで,摩擦抵抗の大 幅な低減が可能となる。
 水中航走体への適用例はまだ少ないが,ロシアでは200ノットで水中を航走する高速魚雷が実 用化されているほか,ドイツや米国でも研究事例があり,水中における飛躍的な高速化技術とし て着目されている。 当社においても,基礎的な水槽試験から小型の水中ロケットを用いた実射試験までを社内で 研究しており,本稿でその概要を述べる。 
(略)
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試験装置内においてスーパーキャビテーション・ロケット推進 状態で,データ取得が行えることを確認できた。また,高速度カメラで取得された画像から,航走 体の移動距離を算出することで速度を推定した結果,目標の 100m/s を上回る速度が得られるこ とを確認できた。
(略)
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スーパーキャビテーション現象とは、液体の中において、物体の速度が上昇した際に発生するキャビテーション(気泡)が物体全体を覆うまで発達した状態のことで、高速で水中を航走する物体の先端でスーパーキャビテーションを発生させて航走体全体を気層で覆うことで、摩擦抵抗の大幅な低減が可能となる。 

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現在ロシアには1977年の旧ソビエト連邦時代に開発したVA-111 シクヴァル(ロシア語:Шквалシュクヴァール;英語:shkvalもしくはsquall、sjkval)スーパーキャビテーションを利用した超兵器がある。

水中速度200ノット(370km/h)を超えることが可能であり、ロケットエンジンで推進力を得るため、「魚雷」と言うよりは「水中を推進するロケット」に近い。いくつかの報告書では250ノット(463km/h)以上、また300ノット(560km/h)の派生型の研究が進行中だったことが示されている

配備が公表されたのは1990年代初期であるが、私はにわかに信じていなかった。

当初初期型は誘導装置がなく、敵潜水艦から発射された魚雷に対する兵器として設計されている。この魚雷は、敵潜水艦に回避を強要し、また有線誘導中の魚雷のワイヤーを切らせることを期待できる。その後、この高速を活かし核弾頭を搭載してアメリカ海軍を一挙に壊滅させる、という利用法が生み出されたと考えられている。

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初期の設計では単に慣性誘導システムのみに頼ったもので弾等は核弾等(150キロトン広島に落とされた原爆の10倍)だったが、しかし、シクヴァルの射程はわずか7km もし核弾頭のシクヴァルを水中から発射したら、発射した潜水艦も沈んでしまう笑ってしまう欠陥兵器だった。そこで、後期型は限定的な誘導と通常弾頭で、射程が伸びたがそれでも射程は11~15kmに留まる。

米国のMk48の射程は公表されてはいないがMk-48 ADCAPで、50km(雷速40kt時)/38km(雷速55kt時)日本の89式は50km(雷速40kt時)/39km(雷速55kt時)とされている。

スーパーキャビテーション現象を利用するには、弾体先端から泡を噴出させ、弾体ぜんたいを泡で包む燃料の関係から、超高速でも、射程が短いのである。

そこで、スーパーキャビテーション現象ではなくコーティング塗装で水中速度の改善策として研究対象となったのが、ペンギン応用超撥水・多孔 性塗料バブルコーティング技術である。

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           ステルス長魚雷G-RX6

スーパーキャピテーションとは違い、泡で弾体を包むわけではないので、長射程の長魚雷で100ノットや潜水艦全体をコーティングすれば、通常動力潜水艦でも30ノット強の速力を出す事が可能となる可能性がでてくる。また、沿岸部での運用を考えている、比較的平底の30FFM船底に塗れば少ないコストで高速化出来る可能性がある。30FFMは、当初目標最高速度40ノットであったが、コストの関係から高速性能を諦め現在30ノット強の速度となっているが、ペンギンコーティングでどのくらいの効果があるか未知数だが、当初計画の40ノットに近づく速度性能の向上が見込める

次期水陸両用車両や、水上艦艇への応用も期待出来そうだ。

その6に

6 高機能塗料による艦艇等の能力向上 (想定する主な技術:低摩擦塗料、海洋生物付着防止、深度圧や長期使用等への耐久性等)

マッチポンプというか・・・ペンギン応用超撥水・多孔 性塗料バブルコーティング技術を開発しておいて、公募かよ!UHX問題の学習効果がない防衛装備庁は酷いね。

疑わしい公募はよくない、後々不正取引といって問題になるのは目に見えています。

執筆中