2020/01/20 追記

IR汚職疑獄で2020年はスタートし、2020東京オリンピックが行われる。
「今、日本経済は景気が良い!」と考える方は皆無であると思う。

私は、もはや日本経済に希望を見いだせなくて、景気や経済の見通しが悪いにもかかわらず、日経平均が上昇する理屈には理解できず、あまりにも自分が逆神すぎて、当ブログで経済や株価のことを控えていた。不景気の株高といえばそれませだが、安倍首相と財務省、日銀がやらかした経済失政は日本を滅ぼしかねないという危機感は、20年前に感じた危機感となんら変らないどころか、当初のシナリオは悪くはなかったのだが、日銀と財務省による抵抗で成功することができなかった安倍ノミックスの失敗は絶望すら感じる。

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景気動向指数が悪いにもかかわらず、2度も政権中に消費税引き上げの安倍政権の決定は、経済失政と断言できる。更に、習近平を国賓招待でもしようなら、経済だけでなはく外交も失政となる。

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あきらかに日本は「衰退」局面にあるのが今の日本経済ではないか!
6月にはポイント還元が終わり、オリンピックが終われば、日本経済は何も明るい希望が見えない。

しかし、メディアも学者もエコノミストも、大手メディアや野党は「桜を見る会」を騒いでいるようでは、日本の未来を暗澹とさせる。

不勉強な政治家は野党、自民党、官僚だけではなく、大半の無関心な国民が「日本の将来を奪う」なんかグレタみたいな意見だが、いまの日本人全てが責任者だ。

消費税を上げて、景気の後退が激しすぎて、やっと12/13 4兆3千億円の補正予算を計上するようだが、いままで政府財務省の主張することは間違いであった。多少手遅れだが、補正予算を計上されたことは悪いことではない。

更に、中国・韓国・北朝鮮の反日諸国の没落。偏向メディアの退潮、徐々にではあるが日本に巣喰う国賊達が炙り出され始めたのは、微かな希望と感じる。

しかし、普通に働いている日本人の賃金が上がらなければ、日本経済の復活はありえない。

世界と比較しても、日本の実質賃金は異常な減少傾向にあります。消費増税で消費が落ち込んでいますが、その前からの賃金低下でモノが買えない状況です。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2019年12月11日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)

1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

増えるわけがない消費。なぜ日本企業の人件費は削られ続けるのか

■消費増税後に消費が低迷

消費税引き上げ後の消費が大きく落ち込んでいます。

そこには、単なる駆け込みの反落では片づけられない「構造的な弱さ」を感じます。それは、日本の消費者の所得が着実に減少していることです。


年金の実質減額だけでなく、実は勤労者の賃金も異例の減少を続けています。

■世界で異例の賃金減少

財務省の「法人企業統計」によると、企業が実際に支払った人件費が、今年4-6月以降、前年比でマイナスになっていることはすでに当メルマガで紹介しました。

消費税引き上げ前から、日本の消費が弱いことは広く認識されています。それを裏付けるようなデータがいくつもあります。

中でも衝撃的なのが、OECD(経済協力開発機構)の賃金比較データです。OECDは、加盟国の時間当たり賃金を1997年と2018年と比較しています。

この21年間で時間当たり賃金が最も増えたのが、韓国で167%増です。次いで、英国が93%増、米国が82%増と続くのですが、その中で唯一、この間の時間給が減っているのが日本で、この間8%減となっています。

各国でインフレの状況が異なるので、実質賃金で比較してみると、それでも結果は変わらず、日本の実質賃金が異常に減少傾向にあるのが目立ちます。

97年を100として直近の実質賃金を見てみると、スウェーデンが140、フランスと英国が130弱、米国とドイツが120弱と、いずれも増加していますが、日本は90にも届かず、この間に10%以上減少しています。

厚生労働省によると、日本では昨年、年金世帯が全体の52%を占めるようになりました。

年金支給額は平均で年間260万円程度と言われますが、これには「マクロ経済スライド」が適用され、将来的に実質減額方向にあります。


全世帯の半分以上の世帯で、実質所得が右肩下がりとなるわけですが、残りの勤労者世帯でも、時間給、実質賃金ともに、この20年で減少傾向にあることが分かりました。


■家計消費がシェアダウン

これでは、消費が増えないのも仕方ありません。

今年7-9月期の実質家計消費額(実際の支出を伴わない帰属家賃を除く)は年率240.3兆円ですが、97年の7-9月期の家計消費が234.7兆円ですから、この間ほとんど増えていないことになります。


この間GDP(国内総生産)は増えているので、GDPに占める家計消費の割合は、97年当時の47.1%から、足元は44.4%に低下しています。

アベノミクスでは雇用賃金が増えたと安倍総理は豪語していますが、この間も賃金は増えず、消費のシェアダウンはむしろこの間に大きく進みました。

因みに、安倍政権が誕生した2012年10-12月期のGDPに対する家計消費の割合は47.3%あり、97年と変わりません。

消費がシェアダウンしたのは、安倍政権の7年間で顕著に進んだことになります。


■円高の賃金抑制と政府支援

日本の賃金が世界でも異例の減少を見た背景にはいくつかの要因がありますが、中でも大きかったのが80年代、90年代に急速に進んだ円高の影響です。

1985年の「プラザ合意」を機に、ドル円は1ドル240円から一気に120円まで円高になりました。これも90年には一旦160円近くにまで戻したのですが、95年4月19日には80円割れとなりました。いずれも短期間にドルの価値が半分になりました。

国際競争にさらされる企業にしてみれば、輸出品は同じものを輸出しても受け取りが半分になり、輸入品と競合する企業は、海外の競合品が半値になるわけで、これに対抗するためにはコストの大幅カットが必要になります。

最大のコストが人件費なので、人件費を海外と競争できるレベルまで落とす必要がありました。


もっとも、日本ではいきなり賃金を半分にすることはできないので、あらゆる合理化努力を進め、多くの企業が国内生産から海外生産にシフトする中で、国内の人員カット、人件費カットを進めました。


■円高恐怖症が浸透?

関西の家電メーカーからは日銀に対して「日銀は我々を殺す気か」と厳しい批判が浴びせられ、企業のみならず、日銀にも円高恐怖症が浸透しました。

政府、日銀は何とか円高を是正しようと、為替介入や金融緩和で対応しましたが、民主党政権時も1ドル70円台の円高がはびこりました。


こうした円高の歴史の中で、国際競争力を維持するための企業努力、賃金抑制が企業の「体質化」していきました。

安倍政権になって異次元緩和から円高が大幅に是正されたのですが、企業の円高恐怖症は変わらず、その後も人件費の抑制は続いています。

そして安倍政権自体、企業の事情を考え、政治サイドからも人件費抑制につながる政策をいくつも打ち出しました。

派遣法の整備などで非正規雇用を促進し、彼らが雇用の4割近くを占めるようになり、非正規雇用については企業が社会保険料負担を免除される道を作りました。


さらに働き方改革も、人件費抑制に寄与しています。これが施行された今年4月以降、人件費はマイナスになっています。

■賃上げ期待消滅のインパクト

消費の源泉は所得にあり、それが増えなければ消費も増えないのですが、プラス・アルファの影響があります。

それは借り入れへの影響です。1970年代、80年代には、良い悪いは別にして、無理をしてでも借金をして車や家を買いました。

その時は所得に対して返済負担が大きいとしても、給料が年々増えるので、返済負担は直に軽くなると信じていたからです。

実際、ベースアップのほかに、毎年のように定期昇給もあったので、かなりの確率で所得の増加を前提に、借り入れをすることができました。

しかし、今日では賃金が増える期待はほとんどなく、むしろいつ職を失うかわからない状況です。

そこで借金をすれば、負担が重くなるか、返済不履行に追い込まれかねません。


このため、いくら金利が安くても、借金してモノや家を買うのは大きなリスクを伴います。

■国内投資に冷水、企業貯蓄へ

企業にしても、国内市場は人口減少が確実に進み、国内市場は右肩下がりと予想すれば、国内の設備投資には慎重にならざるを得ません。

そもそも、企業の人件費抑制が前述のように国内消費を抑圧し、これも国内市場の縮小要因になっています。


生産も輸出で稼げなければ、増産の余地は少なくなります。従って、投資も海外が多くなる半面、

■国内投資は抑制されます。

結局、人件費の抑制で利益を上げても、それを投資に回さず、企業が「内部留保」という貯蓄に貯めこんだ分、景気が抑制され、低成長、低生産性、競争力の低下、賃金抑制という悪循環を引き起こしています。

これを断ち切らなければなりません。

つまり、企業が内部留保に貯めこまずに、利益をボーナスなどで労働者に還元するか、設備投資、研究開発投資に回して技術力、生産性を高めることです。


一部には内部留保課税の声もありますが、産業界に支えられる政権としては「北風政策」もできず、今回、内部留保を積極的に投資などに回す企業に、税制で優遇しようという「太陽政策」を打ち出す模様です。

しかし、人件費カットをやりすぎて国内消費が縮小し、企業投資を冷え込ませてしまえば、何のための人件費抑制かわかりません。

ニワトリに餌をやらなければ、卵を産まずに死んでしまいます。

若者の貧困化が進行しているから、結婚ができず、少子化が進む悪循環に堕ちている。
緊縮財政を止めて国民の所得を実質的の増やすと方向に転換しない限り日本が生き残る道はない。

もし、緊縮財政を止めて国民の所得を実質的の増やすと方向に転換したならば、500兆円を超える企業の内部留保を賃金に振り向けることが可能であれば、日本は手のひらを返したように世界の覇権すら握ることもありえるかもしれない。
武者陵司「令和の大相場始動シリーズ(4) 「2020年、積極的に株式に向きあう年に」<前編>【Yahooファイナンス】12月24日(火)10時30分配信 株探ニュース

この夏悲観の中で生まれた相場が、懐疑の壁をよじ登っている。この悲観・懐疑の強さこそ、大相場の最も重要な条件である。武者リサーチは、2020年日経平均3万円をめざす大相場が始まった可能性が強いと考える。

(1)不確実性は概ね霧消、世界景気にポジティブサプライズも

●大半の暗雲は消えた

 2019年初頭と1年後の現在との決定的差異は、不確実性の霧が消えたことである。米中貿易戦争は12月15日の追加関税直前に、一次合意が成立し休戦で決着した。米英を除くすべての先進国長期金利がマイナスになるという金融異常事態も、FRBの3度の利下げと世界景況感の好転で安定化した。Brexit(ブレグジット)は英国総選挙における保守党大勝により、選択肢は大きく狭まり見通し難はなくなった。ハイテク5G関連投資も現実に動き出し潜在的インパクトの大きさが見えてきた。世界景気の拡大終焉説の非現実性も今やコンセンサスになっている。

●最大懸念、米大統領選挙はトランプ勝利の公算大

 最大の不確実性は政治、米国大統領選の帰趨だが、トランプ氏再選の可能性が大きいのではないか。戦後現役大統領が選挙に敗れたのは任期中に米国経済がリセッションに陥ったJ・カーターとG・ブッシュ(父)だけである。リセッションが考えにくいこと、共和党内での圧倒的支持に加えて対抗する民主党の選挙政策が大きくスウィングし安定性がないこと、などを考えると、トランプ再選の可能性はかなり高いのではないか。少なくとも年前半は視界良好という珍しい年である。

 霧が晴れた市場で何が起きるか、カギを握るのは巨額の投資資金の行方であろう。年前半は絶好のリスクテイク環境、人々の想定を超える世界株高の公算が大きいと考えられる。

(2)長期好況終焉説の誤り、ミニサイクルの回復局面

 現在が米国の長期好況の終わりなのか、それともミニリセッションの底入れ局面なのかが、ここ一年間の経済論争の焦点であった。多数派の意見は2009年以来10年にわたって続いた史上最長の景気拡大の終焉が間近い、というものであったが、その可能性は当面なくなり、2020年中も景気拡大が続くとする見方が大勢となっている。オランダやオーストラリアでは20年を超える景気拡大が続いた例があり、景気拡大に寿命があるわけではない。

 ただ、長期景気拡大の中にもミニサイクルがあり、市場はその影響を受けている。最近では2015年春ピーク、2016年央ボトム、2018年春ピーク、2019年秋ボトムとなっている。2018年半ばからのミニ後退は、スマホや自動車の買い替えサイクルでピーク感が強まっている時に、米中貿易戦争が勃発し、不透明感から多くの投資案件が棚上げされたことによって起こった。しかし今、買い替えサイクル一巡とともに、米中貿易戦争の不透明感も解消されつつある。ミニサイクルは2019年で底入れし2020年にかけて反転する可能性が強いのではないか。

●中国需要は安定化へ

 この3~4年の景気ミニサイクルは、貿易と投資によって変動しており、いずれも製造業の景気循環といえる。米国の場合、製造業の国民所得に占める割合は11%と中国29%、ドイツ22%、日本21%に比して著しく小さく、循環の波を小さくしている。製造業分野では、自動車もスマホも鉄、セメントも今や中国が世界最大の市場であり、世界の製造業景気循環は米国以上に中国が波を造っている。2018年以降の世界経済ミニ循環の落ち込みは、中国内需の悪化によって引き起こされた面が大きく、今はその底入れ反転の局面にある。

 落ち込みの主因である自動車需要が底入れし、内需を抑制してきた体質改善のための金融引き締め、インフラ投資抑制策も大きく転換されている。金融緩和により不動産価格は上昇し、不動産投資も押し上げられていくだろう。加えて2018年春以降の落ち込みをけん引した貿易戦争による不確実性が、消えた。棚上げされていた投資は復活し、第三国(例えば台湾)では新規投資が起きる。

●5G関連、半導体投資飛躍の兆し

 さらに 5Gなど新技術投資が始まり、最先端半導体などで競争先行のための投資が活発化し始めている。中国は5G投資実績で他を引き離す構えで、中国国内での5Gハイテク投資が急増、他国もそれに引きずられて投資競争が始まりつつある。例えばTSMC(台湾積体電路製造)の半導体製造装置発注額は7~9月は77億ドルと過去の10~20億ドルベースを大きく上回った。2019年まで休止していたデータセンター投資も5Gをにらんで活発化する様相である。

 2018年以降の米中摩擦激化による中国半導体投資の一時休止が、半導体の需給の想定外の改善を引き起こす可能性があるのではないか。最も製造業景気変動に敏感な米国半導体株が最高値を更新している。

 米国では技術革新・産業革命の寄与により史上最長の景気拡大が続いている。新技術の下で企業の生産性が高まり業績が好調、また人々のライフスタイルが、例えば“所有からシェアへ”などと大きく変化し、新しいサービス事業分野が生まれている。雇用は全分野で拡大しているが、教育医療、娯楽観光、専門サービスなどが特に好調である。こうした技術革新によるサービス業の景気は大きく波打つことなく着実に拡大している。

 さらにFRBの3回、0.75%の利下げでイールドカーブが正常化し、金融面での逆風は消えている。金融緩和政策は世界各国で展開されており、その効果が顕在化することも見込まれる。2020年前半はリスクテイクが大きく活発化していくだろう。

 日本経済も、(1)消費税増税以上の景気対策、真水で13兆円の寄与は大きい、(2)グローバル製造業、特にハイテク需要浮揚の恩恵、(3)着実に進む資産インフレ、日銀の辛抱強い金融緩和の成果が期待できる。



(3)米国における株式資本主義の隆盛、続くのか

●米経済好調の正体、株式資本主義

 米国の金融の健全性が、先進国中では突出した米国経済の好調さを支えているが、その正体は株式資本主義であろう。

 日欧では巨額の余剰貯蓄が国債市場に滞留しマイナス金利を引き起こしている。ただ、米国だけは例外で、資本循環が維持されている。長期金利は昨年8月1.4%まで低下したものの、それをボトムに上昇している。日欧のように、国債市場が余剰資本を吸収し金融循環がそこで停止するといったことは起きていない。

 それは米国企業が自社株買いと巨額配当により利益のすべてを株主に還元し、その結果もたらされた株高が家計の資産を増価させ、堅調な消費をけん引しているからである。過去4年間(2015~2018年)に米国企業(非金融)は4.09兆ドルの税引き利益を計上したが、4.24兆ドルとその100%以上を株主に還元した。内配当2.29兆ドル、自社株買い1.95兆ドルとなっている。リーマンショック以降の10年間、米国国内の投資主体、米国家計、年金、保険、投信はすべて米国株式を売り越してきた。唯一企業の自社株買い(10年累計3.9兆ドル)だけが株式を買い上げてきたのである。

 企業の巨額の株主還元が家計の金融所得を押し上げ、また株価上昇による資産効果もあって、旺盛な消費が維持されている。株高をけん引とする資産価格上昇が家計の純資産を著増させたことは、特筆に値する。2009年4Qリーマンショック後のボトムでは49兆ドルに落ち込んでいた家計純資産は、2019年2Qには113兆ドルへと10年間で64兆ドル(米国GDPの3倍)も増加したが、そのうち年金資産は10兆ドルから27兆ドルへと増加し、年金財政を支えている。

 ただし、米国でも日本・欧州と同様に、家計、年金、保険、投信の国内余剰資金は一手に国債に集中してきた。2015年のテーパリング以降、FRBと外国人が米国国債を売る中で、一手に買い続けてきたのは米国国内投資家(家計・銀行・機関投資家)だった。米国人も株式投資には警戒的だったのである。

●企業の株価本位財務戦略の賜物

 このように見てくると米国の株高は、企業の株価本位の財務戦略の賜物であったことが分かる。米国企業は内部留保を吐き出し自社株買いを実施、それが株式需給の好転とROEの向上につながり、株価が上昇する、という戦略である。米国企業の財務バランス悪化を伴う株価本位政策は、(次期リセッションにおいて企業抵抗力を弱めるという問題点はあるものの)マクロ経済の観点では、企業の余剰が家計に還流することで、健全な資金循環を保つ役割を果たしており、望ましいといえる。

●株価本位の金融政策(=量的金融緩和政策)

 金融政策も今や米国では株価本位となっている。かつての銀行貸し出しによって信用創造を制御する金利政策は、ゼロ金利と企業の借金需要の消滅で機能しなくなった。代わって登場した量的金融緩和政策は、バーナンキ議長はリスクプレミアムを引き下げる政策と説明したが、平たく言えば株価と不動産価格の押し上げ政策である。そのために巨額の資金が必要になり中銀のバランスシートの大膨張に帰結したのである。

 金融の機能が、信用創造による購買力の創出にあるとすれば、その手段はもはや銀行貸し出しではない。その手段は株式を中心とした資産価格の上昇としか考えられない。リーマンショック以降、米国経済が先進国の中で突出した成長を続けられたのは、株高による需要創造が寄与したとも言える。米国が経済社会総体として推進する株価上昇とは、新たな金融レジーム、金融の中心に株式が座る、株式資本主義時代の到来と言うべきなのかもしれない。

●需要創造を資産価格で行うか、財政で行うかは政治が決める

 産業革命により供給力が恒常的に増加する時代においては、いかにそれと軌を一にして需要創造するかが、喫緊の課題となる。株価上昇による新たな購買力の創造か、政府の介入による財政的需要創造か、その選択は政治が決める。例えば急進的なエリザベス・ウォーレン氏が大統領となれば、株式を中心とする政策軸の大転換が実施され、株式市場は短期的に大きな打撃を受けるかもしれない。想定される最大の株式投資リスクであろう。

(4)5G新技術時代の始動、サイは投げられた

●不可逆的投資競争が始動

 5Gなど新技術投資が始まり、最先端半導体などで競争先行のための投資が活発化し始めている。中国は5G投資実績で他を引き離す構えで、中国国内での5Gハイテク投資が急増、他国もそれに引きずられて投資競争が始まりつつある。例えばTSMCの半導体製造装置発注額は2019年7~9月は77億ドルと過去の10~20億ドルベースを大きく上回った。2019年まで休止していたデータセンター投資も5Gをにらんで活発化する様相である。2018年以降の米中摩擦激化による中国半導体投資の一時休止が、半導体の需給の想定外の改善を引き起こす可能性があるのではないか。最も製造業景気変動に敏感な米国半導体株が最高値を更新している。

 グローバルサイバー空間(=第七大陸)はますます巨大化し、脱国境の5G革命が進行していく。賢明な制度設計は必須、デジタルをいかにコントロールするか、監視国家化とどう向き合うか、課題は多いが、5G、IoT時代の投資競争が始動したことは確かである。

(2020年1月1日記 武者リサーチ「ストラテジーブレティン242号」を転載)


しかし、↓こんなことをやっているようでは、日本はダメだ!

【産経ニュース】2020.1.4 02:00産経新聞特別記者 田村秀男


※この記事は、月刊「正論2月号」から転載しました。

 日本は官民が結集して半導体の技術開発に取り組んだ結果、八十年代後半には競争力で米国を脅かすハイテク王国だったが、今や見る影もない。韓国、台湾に後れを取り、中国資本による買収をあてにする始末である。主要メーカーの液晶部門を統合、国家資金を投入して設立されたジャパンディスプレイ(略称JDI)が代表例である。収益力のない企業は市場から淘汰すべきとのビジネススクール教科書流思考によるが、甘過ぎやしないか。ハイテク覇権を狙う中国にとって、市場原理主義に凝り固まった日本はまさに思うつぼにはまっている。

 ジャパンディスプレイは、経済産業省主導の官民ファンドの産業革新機構(INCJ)が二千億円を投じ、日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶パネル事業を統合して二◯一二年四月に発足した。その前にはパナソニックの液晶部門が東芝に、セイコーエプソンと三洋電機の液晶部門がソニーにそれぞれ統合されていたので、日本の大半の液晶表示装置メーカーの液晶部門がJDIに集約されたことになる。文字通りの「日の丸液晶」会社である。

 JDIは発足から約二年で東証一部に上場したものの、業績は六期連続の赤字で、二◯一九年四~九月期の連結決算は千八十六億円の赤字(前年同期は九十五億円の赤字)、同年九月末時点で千億円超の債務超過に陥った。

 財務危機を乗り越えるために、台湾・中国の電子部品メーカーや投資会社が作る「Suwaコンソーシアム」と業務提携し、同コンソーシアムから最大八百億円を調達することを目指し、二◯一八年十二月ごろから交渉に入った。Suwaコンソーシアムは、中国最大の資産運用会社、嘉実基金管理、台湾のタッチパネルメーカーの宸鴻集団と台湾の蔡一族投資ファンドCGLによって構成されている。JDIはことし四月に、嘉実基金と蒸着方式有機ELディスプレイの量産計画に関する業務提携で基本合意し、宸鴻集団とは液晶ディスプレイに関する業務提携基本契約を結んだ。

週刊ダイヤモンド誌は二〇一九年二月七日付けの電子版で、「JDIに買収提案の中台連合が取締役過半数派遣で狙う『実効支配』」と報じた。記事の概要は以下の通りだ。

 中台連合はJDIの技術を活用して中国・浙江省に有機ELパネル工場を建設する計画で、JDIの東入來信博会長兼最高経営責任者(CEO)と、福井功常務執行役員らJDI幹部、JDIの筆頭株主であるINCJの勝又幹英社長と東伸之執行役員が一八年十二月に最初の協議のため、浙江省を訪問した。有機ELパネル工場投資額は約五千億円、資金は中国政府の補助金を活用する。早ければ一九年中に建設を開始し、二一年の量産開始を見込む。

 有機ELは液晶よりも高画質、高解像度の表示を可能にし、スマホ、テレビから市民監視用モニター用など用途は限りない。記事通りにことが進めば、習近平政権が執念を燃やす国家補助によるハイテク国産化計画「中国製造2025」に日本の有機EL技術が飲み込まれることになる。「中国製造2025」はトランプ米政権が厳しくチェックしており、同計画の主役企業の通信機器大手ファーウエイ(華為技術)などは米国製部品や技術の利用が困難になっている。JDIの救済を名目に、日本の最新技術を取り込む意図がありありとうかがわれる。







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