US seeks formal alliance similar to Nato with India, Japan and Australia, State Department official says【South China Morning Post】Robert Delaney2020.09.01

米国は、インド、日本、オーストラリアとの間でNATOと同様の正式な同盟関係を模索していると国務省高官は述べている。

ワシントンの目標は、「中国からの潜在的な挑戦」に対する防波堤として、インド太平洋地域の国々に協力してもらうことだと、米政府関係者は言う。
今秋にはデリーで4カ国が会談する予定だという。

ワシントンは、インド、日本、オーストラリアとのインド太平洋地域の防衛関係をより緊密にし、「四つの国」としても知られる北大西洋条約機構(NATO)に近いものにすることを目指していると、米国務省の高官は月曜日に語った。

米国政府の目標は、「中国からの潜在的な挑戦」に対する防波堤として、この地域の4カ国と他の国のグループ化に協力してもらうことであり、「インド太平洋地域のより多くの国々、さらには世界中の国々を引き付けるような形で、それらの当事者の共有する価値観と利益の周りに臨界的な質量を作り出すことである......最終的には、より構造化された方法で整列させることである」とスティーブン・ビーガン国務副長官は述べている。

"インド太平洋地域には、強力な多国間構造が実は欠けている。"NATOや欧州連合(EU)のような不屈の精神を持っているわけではない。アジアで最も強力な機関は、しばしば、十分な包括性を持っていないことが多いと思いますが、このような構造を正式に構築するための誘いがあるのは確かです。

"NATOでさえ比較的控えめな期待から始まったことを忘れてはならない。そして多くの国が(最初は)NATOの加盟よりも中立を選んだ」とビーガン氏は付け加えた。

ビーガン氏は、ワシントンは太平洋のNATOの野心を「チェック」しておくだろうと警告し、そのような正式な同盟は「他の国が米国と同じようにコミットしている場合にのみ実現するだろう」と述べた。

ビーガン氏は、米印戦略パートナーシップ・フォーラムが主催するオンライン・ディスカッションで、リチャード・バーマ元駐インド米国大使との会話の中で、4カ国のグループが今年の秋にデリーで会談する予定であると述べ、オーストラリアがインドのマラバル海軍演習に参加する可能性があることを、より正式な防衛圏に向けた進展の一例として挙げた。

インドは「インドのマラバル海戦演習にオーストラリアを招待する意向を明確に示しており、これはインド太平洋の航行の自由と海の安全を確保する上で大きな一歩となる」と述べた。

主にベンガル湾で行われているこの海軍演習は、1992年から米国とインドが毎年実施しており、2015年からは日本も参加している。

オーストラリアは2007 年に一度マラバルの演習に参加した。シドニーのシンクタンクローウィー研究所の7 月のレポートによれば「中国政府は圧力をかけてきた、インドは参加するオーストラリア政府の明確な意思にもかかわらず、表向きは不必要に中国に刺激することを恐れて、招待を繰り返すことをしなかったたことを意味する」とのことだ。シンガポールも2007年に参加した。

ローウィー研究所の報告書によると、6月にヒマラヤのガルワン渓谷で中国軍とインド軍が衝突し、少なくとも20人のインド兵が死亡したことから、インド政府はオーストラリアをマラバル演習に再び参加させようとする意見が強まったという。

日本と米国はすでに今年の練習に参加するように招待されているが、中共ウィルスのために遅れているが、インド政府はまだ正式にオーストラリアを招待していない。

ビーガン氏のコメントは、ドナルド・トランプ大統領の国家安全保障顧問ロバート・オブライエン氏のコメントに続くものである。オブライエン氏は金曜日、南シナ海における中国の領有権主張を「ばかげている」と呼び、マイク・ポンペオ国務長官が9月と10月に4カ国インド、日本、オーストラリアを訪問し、それぞれのカウンターパートとの会議を予定していることを強調した。

国務省の関係者はまた、ワシントンは韓国、ベトナム、ニュージーランドが最終的に拡張版の四つのクワッドに参加するのを見たいと考えていることを示唆し、四つのグループがコロナウイルスのパンデミックへの対応について、これらの国の当局者と「非常に協力的な」会議を行ったことを引用した。

これら7カ国の高官による会議は、「非常に、非常に協力的なパートナー間の信じられないほど生産的な議論であり、我々が太平洋地域を構成しているこの利益の組み合わせを推進するために本当に最善を尽くす国の自然なグループ化を見るべきである」とビーガン氏は述べています。
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【Bloomberg News】2020年9月1日 12:52 JST 更新日時 2020年9月1日 18:10 JST


日本とインド、オーストラリアの経済相は1日開いた会合で、インド太平洋地域のサプライチェーン強靱(きょうじん)化に向けた取り組みを行うことで合意した。日印豪の3カ国は貿易を巡る中国の支配力に対抗するため連携を模索していると、事情を知る日印の関係者がこれまでに明らかにしている。

  共同声明によると、3カ国の経済相はサプライチェーン強靱化イニシアチブの年内開始に向け早急に具体策を打ち出すよう各国の当局者に指示した。会合は1日午後にテレビ会議形式で行われ、梶山弘志経済産業相のほか、インドのゴヤル商工相、豪州のバーミンガム貿易・観光・投資相が出席し、共通認識を持つ域内諸国に参加を呼び掛けたという。

  日印豪は、米国を加えたインド太平洋の安全保障協力の枠組み「日米豪印戦略対話(QSD)」の参加国。米国務省高官は8月31日、米国がこの4カ国の枠組みを同地域でのより広範な安全保障同盟の基盤として正式な形で発足させたい意向を示していた。



はじまりは2007 年第一次安倍政権の安倍晋三首相が提唱し、四カ国の事務レベル協議が開催されたインド太平洋構想である。安倍総理のの辞任オーストラリアの左翼政権の誕生など紆余曲折があたが、現在日米豪印戦略対話(四カ国戦略対話:Quadrilateral Security Dialogue)は、日本、アメリカ合衆国、オーストラリアおよびインドの四カ国間におけるそれぞれ二カ国間同盟を基に非公式な戦略的同盟が維持されている。

マラバールと呼ばれる共同訓練は、1992年に米国とインドの2ヶ国間演習として始まったが、1998年にインドが核実験を強行したことでマラバール訓練は中止されることになる。しかし2001年9月に発生した「米国同時多発テロ事件」がきっかけで、再び共同演習が再開されることになった。日本は2007年から同演習に参加、2015年には、米印が正式に日本をマラバール参加国メンバーとして承認したが、2007年にはオーストラリアとシンガポールが参加したが、中国の圧力で、オーストラリアの参加がなかった。

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しかしながら、2020年5月9日、ヒマラヤ南西部に位置するカシミール地方の東部、インドが実効支配するシッキム州ラダックと中国の支配下にあるアクサイチンの境界付近のガルワン渓谷で、中印の部隊が衝突、インド側死者20人(当初3人)の国境付近で中印両軍の殴り合いによる衝突が発生した。インドは本年7月に11月開催予定のマラバール2020にオーストラリアを招待した。

インドがオーストラリアをマラバール海軍演習に招待した背景【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】【ロイター】2020.7.27 

【FISCO】
7月15日、オーストラリアの政治アナリストであるグラント・ワイス氏の「インドはオーストラリアをマラバール海軍演習に招待するのか」というコメンタリーが「THE DIPLOMAT」誌に掲載された。オーストラリアのモリソン首相とインドのモディ首相は6月4日にテレビ会議方式の首脳会談を開き、すでに防衛協力の拡大で合意し、従来の「戦略パートナーシップ」から「包括的戦略パートナーシップ」への格上げや、外交・防衛閣僚協議(2プラス2)の隔年開催が決まった。

その際、両首脳は、海軍間の相互運用能力向上のため情報交換を推進することも確認しており、「国際共同演習(マラバール)」への豪州の参加、豪州が主体となって隔年ごと豪州で実施している「多国間軍事演習(カカドゥ)」への招待、米海軍が隔年にハワイ島沖で実施している「環太平洋海軍軍事演習(RIMPAC)」等の機会をとらえた緊密な連携強化を図ることが合意された。

従って、冒頭の質問に対する回答は「イエス」であり、ワイス氏の豪印及び中国に対する見方が「自由で開かれたインド太平洋構想」の参考になる部分もあろうかと思い、ワイス氏の結論にいたる考え方を紹介する。

2000年初頭のインドは、アメリカ主導の秩序作りに反対の立場をとり、「非同盟」、「世界秩序の多極化」の外交方針や「米国の一極支配」への対抗姿勢を示していた。ところが、2018年9月、インドはアメリカと「2プラス2」を開催し、両国の関係強化を明確に示した。インドが従来の方針を変更した理由についてワイス氏は、「この方針を変更したのは、中国の最近の自己主張的な身勝手な行動の結果であり、中国の戦略上の大きな失敗である」と中国を批判している。

「インドが、本能的に好戦的な隣国中国が自国領土への侵攻を繰り返すことにより、主要なパワーブロックとの同盟関係の維持に分があると結論付けたのではないか」と分析している。

ワイス氏によると「オーストラリアの2017年の外交政策白書では、インドを『第一次』の重要国として認識しており、海上安全保障をはじめとする『共通の利益』が存在している」と指摘している。「特にインドのアンダマン・ニコバル諸島とオーストラリアのココス諸島は戦略的な海域に位置しており、両国がインド洋東部の主要な要衝において重要な海上警備態勢を維持し、ともに協力しあうことが望まれる」と島嶼防衛の共通的価値を説いている。

ワイス氏は、コメンタリーの最後に、「インドは同盟の利点を見出す方向に向かっている。オーストラリアの国防・外交政策は、同盟関係の構築と維持を中心に構成されており、 過去の関係に関わらず、お互い有能で信頼できるパートナーであると見なし始めている。中国は、4つの民主主義国家間の海軍協力を封じ込め戦略として抗議するだろうが、北京は自分自身を責めるしかないのだ」と締めくくっている。ただし、ワイス氏の主張する「インドの外交方針変更」という観測は、豪印両国の国防・外交協力関係の強化だけなのか、あるいは今後、同盟関係樹立まで発展するのか、動向を注視していきたい。

アメリカのトランプ大統領は、9月以降にアメリカで開催予定の先進7カ国(G7)首脳会議の枠組みを拡大すると宣言し、豪印両首脳はG7への招待を歓迎する意向を表明している。両国が拡大G7に加わることでさらに対中包囲網が強化されることになるだろう。中国の力による現状変更の試みに対して、対中包囲網による抑制が機能するか否かに注目したい。

マラバール演習の実施に繋がった。

日米豪印といった民主主義国家による4カ国連絡協議である日米豪印戦略対話QSD(Quadrilateral Security Dialogue)をNATO北大西洋条約機構のインド・太平洋版である軍事同盟結成軍事同盟へ格上げして国際秩序に従わない中国を抑え込む動きが始まった。

クアッドでは言いにくいので新名称を考えた。
I-PaDO (Indo-Pacific Dialogue Organization)インド-太平洋対話機構ではどうだろうか?


かつてのソ連に対抗したNATO的な軍事同盟がインド太平洋地域にはない。
膨張し世界の秩序を乱す中共に対し、日米豪印の4カ国が中心に、中国を包囲する集団安保体制を構築するのは時代の流れである。 
 
日米同盟、グローバル同盟の主軸にオーストラリアやインドとマラバール軍事演習参加国で
「クアッド」を結成し、更にシンガポール、ニュージーランドを中心に「クアッド・プラス」へ拡大するとのニュースも流れています。

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米国のインド太平洋戦略//ハンギョレ新聞社

ここに韓国が参加するか否かが話題となっていますが、文在寅政権下では参加はありえません。いや、法則が発動してしまうので、韓国を同盟国にしてはいけない。

【デイリー新潮】9/8(火) 15:00 


文在寅(ムン・ジェイン)政権が米韓同盟を公然と壊し始めた。日米韓の防衛相会議を欠席したうえ、閣僚や駐米大使が公開の席で同盟の存続を疑問視した。韓国観察者の鈴置高史氏が深掘りする。


ルビコン河を渡った韓国

鈴置:韓国の保守系紙が大騒ぎしています。日米韓は8月29日にグアムで防衛相会談を開催する予定でしたが、韓国が欠席したからです。

 韓国は中国と北朝鮮の顔色を読んで、米国と少しずつ距離を置いてきました。それがついに堂々と「離米」するに至ったのです。

朝鮮日報は社説「韓米日・国防長官会談に不参加、国民をどこに連れて行くのか」(8月31日、韓国語版)で「米韓同盟破壊」に悲鳴をあげました。結論部分を訳します。

・北朝鮮のSLBM(潜水艦発射型ミサイル)完成は目前だ。中国は東アジアの覇権を露骨に推し進めている。中ロは昨年、朝鮮戦争以降初めて東海(日本海)上空で合同訓練を実施し、ロシア軍用機は独島(竹島)領空を侵犯した。
・こんな北中ロの脅威を、韓米日による安保の共助なくしてどうやって防ぐのか。敵性国の顔色を見るほどに卑屈になって、国の安全保障を担保できるのか。

 米韓同盟に詳しい日本の安保専門家も「韓国はルビコン河を渡った。仮想敵に対し米国との絆を見せつけるための会談に参加しなかったのだから」と眉をひそめました。

「習近平訪韓」が脅し材料

――韓国政府は不参加をどう説明しているのですか? 

鈴置:国防部も鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官自身も「(外遊すれば)帰国後に隔離されて業務に支障が出る」と説明しました。

 しかし、公務の海外出張者は隔離を免除するとのルールが韓国にはあるのです。8月9日に康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が訪独した時も、このルールが適用されています。だから「隔離」は説明にならない。

 中央日報は「韓日米国防相会談から抜けた韓国国防長官の釈明『離任・就任式に出席できないから』」(9月1日、日本語版)で「弁解になっていない」と厳しく批判しました。

――結局、「中朝への忖度」なのですね。

鈴置:韓国の保守系紙は「ことに、中国に気を使った」と見ています。8月22日に中国外交トップの楊潔篪・共産党政治局員が釜山で、韓国大統領府(青瓦台)の徐薫(ソ・フン)国家安保室長と会談しています。

 この会談で、中韓は習近平国家主席の早期訪韓を確認しました。文在寅政権にとって習近平訪韓は政権浮揚の有力な武器。それを実現するためにも、日米韓3か国の防衛相会談には参加できなかったのでしょう。

 2017年10月30日、中国は韓国に「3NO」――3つの「しないこと」を約束させました。これにより、米国とのMD(ミサイル防衛網)構築、米国のTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)追加配備と並び、日米韓3か国の軍事同盟など中国包囲網への参加も、韓国は禁じられたのです。

「3NO」を破れば、習近平訪韓が取り消されることはもちろん、どんなイジメをされるか分かりません。防衛相会談は中国非難の場に

――でも、これまでは日米韓で防衛相会談を開いていた……。

鈴置:最近では2019年11月17日にタイで開きました。しかし、その後に状況がガラリと変わった。米中対立が激しくなった結果、日米韓の防衛相会談を開けば、中国を非難する場になることが確実になったのです。

 2019年11月の日米韓防衛相会談では共同声明を発表しました。北朝鮮の非核化に向けた3か国の共同対処が主眼であり、「東シナ海」など具体的に中国を示す文言はありませんでした。

 一方、韓国の欠席により3か国ではなく、日米の2か国で実施した8月29日の防衛相会談。エスパー(Mark Esper)長官と河野太郎大臣は「自由で開かれたインド太平洋地域」との展望を共にしたうえ、東シナ海と南シナ海、さらにはこの地域と世界での法の支配に基づいた秩序の維持で協力することを改めて確認しました。


・Secretary Esper and Minister Kono exchanged views on their shared vision for a free and open Indo-Pacific region.  The Secretary expressed serious concern regarding Beijing’s decision to impose a national security law in Hong Kong, as well as coercive and destabilizing actions vis-à-vis Taiwan.  Both Ministers restated their commitment to maintain a rules-based order in the East and South China Seas, and more broadly in the region and world.

エスパー長官は「中国による香港国家安全維持法の強要と、台湾を不安定にするに強圧的な行動」にも懸念を表明しています。ただ、日本側の発表資料には「香港」「台湾」に触れたエスパー長官の発言のくだりはありません。

 いずれにせよ、こんな、中国に弓を引く会議に韓国は参加できない。韓国には、今回の日米韓防衛相会談が米国に突き付けられた「踏み絵」に見えたことでしょう。そして中国に忠義を示すため、踏み絵を蹴飛ばして見せたのです。

――では今後、韓国は3か国の防衛相会談に参加しない? 

鈴置:米中対立は激しくなる一方。これを考えると、日米韓防衛相会談そのものが消滅する可能性が高い。下手すると「米韓」防衛相会談も、「米韓」首脳会談も開けなくなります。米国が踏み絵――「会談後に発表する共同声明に中国非難を盛り込もう」と提案すれば。

反米の本性を現した文在寅政権

――この先、米韓同盟はどうなるのでしょう? 

鈴置:文在寅政権は3か国防衛相会談を蹴り飛ばしたのを期に本性を現しました。 中朝を仮想敵とする米韓同盟に異を唱え始めたのです。この政権の中枢は、大統領を筆頭に「米韓同盟こそが諸悪の根源」と信じる左派で固められています。

 9月2日、李仁栄(イ・イニョン)統一部長官が「米国との軍事同盟から脱しよう」と呼びかけました。左派系のキリスト教団体を訪問した時のことです。東亜日報の「李仁栄『韓米同盟は冷戦同盟…平和同盟に転換しうる』」(9月2日、韓国語版)から発言を引きます。

・韓米関係がある時点には軍事同盟と冷戦同盟を脱皮し、平和同盟に転換できると考える。

「平和同盟」がいったい何を指すのか、李仁栄長官の発言からはうかがえません。そもそもそんなものが存在するのか、首をかしげざるを得ません。ひとつ言えるのは韓国の閣僚が「米国との軍事同盟は破棄しよう」と主張したことです。

――どんな文脈からこの発言が飛び出したのですか? 

鈴置:直前に「米朝関係の進展にかかわらず、韓国は北朝鮮との関係改善に取り組む方針である」との趣旨で発言しています。合わせて読めば「いずれ、北朝鮮は敵ではなくなる。そうなったら米韓の軍事同盟は不要だ」との主張です。もちろん「中国は韓国にとって敵ではない」との前提で語っています。

 左派に限らず普通の人も、ほとんどの保守も韓国人は中国を敵に回すつもりは毛頭ない。「北朝鮮も敵でなくなった時には米国との軍事同盟は不用」との考え方は韓国でかなりの説得力を持ちます。

 共通の敵のない同盟の存在意義は薄い。それどころか韓国の場合、重荷になっていく。米中対立が深化するほどに、米国との同盟を維持する韓国は中国に憎まれるのですから。

米国の要求を拒絶した駐米大使

――韓国の閣僚が同盟廃棄を言い出すとは、米政府は驚いたでしょうね。

鈴置:もっと驚いたのは、駐米韓国大使までが米韓同盟に疑義を示したことでしょう。9月3日、イ・スヒョク駐米韓国大使はジョージ・ワシントン大学・韓国研究所で講演した時の発言です。

 朝鮮日報の「米国が中国牽制に参加を要求するのに…駐米大使『安保は米国、経済は中国』」(9月5日、韓国語版)の前文が以下です。

・イ・スヒョク駐米大使が「韓米同盟の未来の姿を深く考えなければならない」とし「中国が最大の貿易相手という事実を考慮せねばならぬ」と語った。鋭い米中対立の中、連日、同盟国に支持を訴える米国に一線を引く発言を駐米大使が公開的にしたということだ。

 イ・スヒョク大使は「我が国は安保の側面では米国を頼っている」とも語り、米国の重要性に言及してはいます。が、その次に「安保だけでは国家の存続は難しい」と述べて、中国包囲網に参加せよとの米国の要求を拒んだのです。

「同盟の未来の姿を深く考えなければならない」との発言は、「うるさいことを言うなら、中国側に寝返ってもいいのだぞ」との米国に対する脅しでしょう。

 この大使は6月3日、韓国メディアの特派員とのオンライン懇談会で「(米中の間で)選択を迫られる国ではなく、もはや我々が選択する国になったとの自負心を持っている」と述べています(「文在寅の懲りぬ『米中二股外交』 先進国になった! と国民をおだてつつ…」参照)

 米中を天秤にかけて「板挟み」を乗り切るという韓国の作戦を体現している人なのです。特に今回は、韓国メディアの特派員との懇談会という内輪の席ではなく、公開の場で――米国人の前で、「同盟を辞めてもいいのだぞ」と言い放ったのです。

核さえ持てば大丈夫」

――韓国は米韓同盟を破棄してやっていけるのですか。

鈴置:デイリー新潮の「日本への毒針? 原潜保有を宣言した文在寅政権 将来は『核武装中立』で米韓同盟破棄」で指摘したように、韓国は中立化と同時に核武装する、という作戦を立てています。

「自前の核を持てば米国と離れても問題ない」という国民へのプロパガンダも始まりました。中央日報の「韓国外交安保専門家『米中の一方に寄るのは危険…強軍で外交を支えるべき』」(9月1日、日本語版)が典型です。

 ソウル大学の全在晟(チョン・ジェソン)教授にインタビューした記事です。全在晟教授は外交部、統一部、国防部、南北会談本部の諮問委員を務める文在寅政権のブレーンです。

 記事の見出しにもある通り「中立の勧め」ですが、全在晟教授は「強力な軍事力を持てば、それを実現できる」と訴えました。以下です。

・原子力潜水艦と空母は、米中の対決構図に影響を受けず韓国が独自で海上輸送路を保護する役割をする。

「核武装しよう」と明示的に語ってはいませんが「原潜の保有」は「核弾道弾を持つ」こととほぼ同じ。「日本への毒針? 原潜保有を宣言した文在寅政権 将来は『核武装中立』で米韓同盟破棄」で解説した通りです。

「共通の価値観」には馬耳東風

――核武装とセットで中立化に動く韓国を、米国はどう扱うつもりでしょうか。

鈴置:安保専門家は「離米する韓国に核武装は許さないだろう」との意見で一致しています。だからこそ韓国は「米国側にいる」フリをして核武装する作戦なのでしょうが。

 米国は公的な人物の「離米発言」に対してはVOA(Voice of America)を通じ、その都度、牽制しています。李仁栄長官には「国務省『米韓同盟は冷戦同盟』との指摘に『安保協力を超えた確固とした紐帯関係』」(9月5日、韓国語版、一部は英語)で釘を刺しました。

 見出しの「安保を超えた紐帯」とは「米韓は民主主義や法による支配、人権など共通の価値を持つではないか。中国にはそんなものはないぞ」ということです。それを支える本文は以下です。

・While our Mutual Defense Treaty remains the bedrock of our alliance, our shared values of freedom, democracy, human rights, and the rule of law have further strengthened our unwavering bonds with the ROK.

 ただ、この説得は「民主主義を世界中の人が追い求めている」と信じ込む米国人のナイーヴさを露呈しています。

 韓国では法律が極めて恣意的に適用されます(『米韓同盟消滅』第4章「『妄想外交』は止まらない」参照)。「法の支配」という点で韓国は米国よりも中国に近い。「米韓は価値観を共通する」と言われて韓国人がどこまでピンと来るか……。

Quadに韓国は入れない

――親米派にクーデターを起こさせる手は? 

鈴置:その可能性は極めて薄いと思います。そこまでして韓国を自分の側に置くインセンティブは米国にない。対中戦略を考えた際、軍事的に韓国はさほど重要な位置にないからです(日本への毒針? 原潜保有を宣言した文在寅政権 将来は『核武装中立』で米韓同盟破棄」参照)

 それに、韓国の親米派に中国に立ち向かう覚悟があるか、はなはだ怪しいのです。仮に、クーデターが成功しても「親米に見えて実は従中」政権が登場する可能性が高い。

 米国の安保専門家から韓国に関しヒアリングを受けるたびに、これを聞かれます。保守も含めた韓国人の「離米従中」は米国人も専門家なら、よく分かってきたと思います。

 総じて言えば今のところ、米国は韓国を様子見しています。8月31日、ビーガン(Stephen Biegun)国務副長官が、中国牽制用の集まり「Quad(日米豪印協議)」をNATOのような多国間の常設機構に格上げする方針を打ち出しました。

 国務省の「Deputy Secretary Biegun Remarks at the U.S.-India Strategic Partnership Forum」(8月31日、英語)で読めます。

 ビーガン副長官は「韓国、ベトナム、ニュージーランドの3か国を加えた『Quadプラス』に拡大するつもりか」との質問に「やや慎重である。すべての国が同じ速度で進むべきだからだ」と答えています。

・ I think we’re going to have to be a little bit careful here in doing that, although I think from an American perspective that would be easy.  We’ve got to make sure everybody’s moving at the same speed.

 要は「中国の顔色を見る韓国などを包囲網に加えれば、機構が弱体化する」との考えを示したのです。韓国にとっては米中のどちらを選ぶかの決断に、猶予期間が与えられたわけです。

韓国の死命決める米中半導体戦争

――米国の「様子見」が終わる時は来るのでしょうか。

鈴置:米国の対中攻撃を韓国が邪魔すれば、韓国への「お仕置き」を発動すると思います。焦点は米国によるファーウェイ(華為技術)への締め付けです。サムスン電子がファーウェイに中核部品を供給すれば、米政府はサムスン電子に制裁措置を科すでしょう。

 制裁の程度にもよりますが、同社が韓国経済に占める大きさを考えると、国全体に相当な痛みをもたらすのは間違いありません。さらにFRB(連邦準備理事会)が韓国に供給している為替スワップも停止すると思われます。これは韓国の金融市場を大きく揺らします。

 注目すべきは、米政府がファーウェイ締め付けの度を増していることです。非米国企業には、ファーウェイが設計に関与し、米国の技術の絡む半導体の供給を禁じてきました。8月17日にはそれをファーウェイが設計しない半導体にも広げました。

 つまり、ありとあらゆる半導体をファーウェイには売るな、ということです。「米国の技術が絡む」との但し書きが付いていますが、「米国の技術が絡まない半導体」は皆無と見られますので、事実上「半導体は一切、売るな」ということです。

 日経の「米、ファーウェイ徹底包囲網 テック経済圏から遮断」(8月18日)は「米政府関係者は、サムスン電子や台湾の聯発科技(メディアテック)などが設計する半導体を想定商品として示唆した」と報じました。サムスン電子は米国の照準鏡のど真ん中に入っているのです。

 メモリーで世界最大手のサムスン電子が半導体供給を中断すれば、ファーウェイは死活的な打撃を受けます。それを防ぐため中国政府が韓国政府に対し、米国の締め付けをサムスン電子に無視させるよう圧力をかける可能性が高い。

 サムスン電子が無視すればもちろん、米国は韓国に鉄槌を下します。半導体を舞台にした米中戦争は韓国の死命を決するのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年9月8日 掲載

インド太平洋地域に新しい趨勢が生まれつつある。

世界を敵に回す中国は、インドとの関係も拗らせている。中国共産党による「戦狼外交」や「マスク外交」により、中国は世界中から孤立しているが、インド太平洋地域を見据えた中国の動きは着実に進展しており、台湾、南シナ海、東シナ海(尖閣諸島)で領有権の主張を止めていない。

日米同盟にインドとオーストラリアが同盟に加わることは、インド太平洋、ひいては国際的な自由主義秩序にとって不可欠なものである。

「包括的戦略パートナーシップ」から後方支援に関する相互取り決め(MLSA)を締結して防衛協力を強化した。

急速に台頭しつつある世界的な反中国の動きを考えると、これはインド太平洋地域において戦略的に意義深く、戦略的・軍事的にも一致しており、次の段階では「軍事同盟」へ向かうだろう。

これは時代の流れである。