安倍総理大臣の後任を選ぶ自民党の総裁選挙は、国会議員と都道府県連の代表による投票の結果、菅官房長官が新しい総裁に選出されました。菅氏は、16日、衆参両院の本会議で行われる総理大臣指名選挙を経て第99代の総理大臣に就任する見通しです。
安倍総理大臣の後任を選ぶ自民党の総裁選挙は、394票の「国会議員票」と、47の都道府県連に3票ずつ割り当てられた141票の「地方票」の、合わせて535票をめぐって争われ、14日午後2時から東京都内のホテルで開かれた両院議員総会で、国会議員と都道府県連の代表による投票が行われました。
開票結果は合わせて発表され、有効投票534票のうち、
菅官房長官が377票、
岸田政務調査会長が89票、
石破元幹事長が68票を
それぞれ獲得し、菅氏が新しい総裁に選出されました。
地方票では、菅氏が89票、岸田氏が10票、石破氏が42票をそれぞれ獲得していることから、国会議員票は、菅氏が288票、岸田氏が79票、石破氏が26票を獲得したものとみられます。
菅氏は、このあと午後6時から党本部で記者会見し、今後の党運営の方針や、重点的に取り組む政策課題などについて、みずからの見解を明らかにすることにしています。
直ちに党役員人事の検討へ 16日に首相に就任する見通し
また直ちに幹事長や総務会長など、党役員人事の検討に入り、15日に正式に決定することにしています。
そして、16日に召集される臨時国会で、衆参両院の本会議での総理大臣指名選挙を経て、第99代の総理大臣に就任する見通しです。
菅 新総裁「目指す社会像は『自助、共助、公助、そして絆』」
自民党の菅・新総裁は、両院議員総会で新しい総裁に選ばれたあと壇上であいさつし、冒頭「自民党総裁として、およそ8年、総理大臣として7年8か月にわたって、日本のリーダーとして国家・国民のために、尽力いただいた安倍総理大臣に心から感謝を申し上げる」と述べました。
そのうえで「新型コロナウイルスが拡大するという国難にあって政治の空白は許されない。この危機を乗り越え、国民1人1人が安心し、安定した生活ができるように安倍総理大臣が進めてきた取り組みを継承して進めていかなければならない。私にはその使命がある」と述べました。
そして菅氏は「私の目指す社会像は、『自助、共助、公助、そして絆』だ。役所の縦割りや既得権益、悪しき前例主義を打破して規制改革を進めていく。国民のために働く内閣をつくっていく」と述べました。
菅 新総裁 勝利を報告「前例主義打ち破り規制改革進める」
菅・新総裁は、両院議員総会のあと会場のホテルでみずからを支持した議員を前に、総裁選挙の勝利を報告しました。
この中で菅氏は「立候補表明してから本当に短い期間だったが、選挙対策本部長を務めた小此木・元国家公安委員長をはじめ、各グループや衆議院選挙の当選同期の議員の皆さんに大変なお力添えをいただき、こんなにも多くの票を獲得して新総裁に就任することができた。また、地方票についても獲得に自信がなかったが、日ごとに支援の輪が広がっていることを実感できる選挙戦だった」と振り返りました。
そのうえで「行政の縦割りや既得権益、悪しき前例主義を打ち破って規制改革を進めることで、国民に納得してもらえる仕事を絶対に実行したい。この気持ちを忘れないで自民党総裁として一生懸命に頑張るので、皆さんの支援を心からお願いしたい」と述べました。
安倍首相「令和時代に最もふさわしい自民党新総裁」
安倍総理大臣は、両院議員総会であいさつし「きょう、自民党総裁のバトンを菅義偉・新総裁に渡す。7年8か月、官房長官として国のために、黙々と汗を流してきた菅氏の姿をずっと見てきた。この人なら間違いない。令和時代に最もふさわしい自民党の新総裁ではないか。菅・新総裁を先頭に、『コロナ禍』を乗り越えて、輝く日本を築き上げていこう」と述べました。
岸田政調会長「総理・総裁を目指すべく努力続けたい」
岸田政務調査会長は、記者団に対し、「大きな方向性が決まっていたにもかかわらず、派閥の枠組みを超えて多くの支持をいただいた。大変ありがたいことで、これからも多くの方々に理解と協力をしてもらえるよう努力したい」と述べました。
そのうえで、記者団が、「来年の自民党総裁選挙に再び立候補するのか」と質問したのに対し、岸田氏は「そう受け止めてもらって結構だ。これから先の政治日程がどうなるのか全く予想はつかないが、将来に向けて、総理・総裁を目指すべく努力を続けたい」と述べました。
石破元幹事長「来年のことは、まだ終わったばかりで言えない」
石破元幹事長は、記者団に対し、「厳しい状況の中で、『石破』と書いてもらえたことは、ありがたいことで、真摯(しんし)にお礼を言いたい。いろいろな声が寄せられた総裁選挙であり、すべてを反映させることは難しいが、菅・新総裁には、政治の光があたらない人に、光をあてるような政治を期待したい」と述べました。
一方、次の総裁選挙への対応については、「来年のことは、まだ終わったばかりで言えない。新体制がどうなり、何を打ち出すのか。一党員として、自民党が多くの支持を得られるように協力したい。いま言えるのはそれだけだ」と述べました。
自民党 新しい党役員人事 菅新総裁に一任
両院議員総会のあと、自民党は、会場のホテル内の別室で、臨時の役員会や総務会を開き、新しい党役員人事を、菅・新総裁に一任することを決めました。
自民党総裁選の決起集会で、集まった人たちに手を振る菅義偉官房長官=14日午後、東京都港区(松本健吾撮影)
自民党総裁選で勝利し、第99代首相に就任する見通しの菅義偉(すが・よしひで)官房長官は秋田県のイチゴ農家の長男に生まれた。高校卒業後、裸一貫で上京し、民間企業に就職した後に法政大に入学。サラリーマン、衆院議員秘書や横浜市議を経て国会議員になったたたき上げだ。自民党の非世襲議員の首相は、父が石川県の町長だった森喜朗氏(平成12~13年)を除けば海部俊樹氏(同元~3年)以来となる。
特定の派閥に属さない党総裁の誕生も異例となる。13年の総裁選で小泉純一郎氏が無派閥で挑み、勝利したが、直前まで森派(現細田派)に所属していた。菅氏もかつて派閥に籍を置いたが、直近の11年間は無派閥で、事実上の「初の無派閥出身の総裁」と言える。
約7年9カ月続いた安倍晋三政権下では発足当初から官房長官として首相の女房役を務め、在職日数は歴代最長。北朝鮮のミサイル発射などの危機管理を担当しつつ、外国人観光客の増加や利水ダムの事前放流など複数の省庁にまたがる課題に積極的に取り組んだ。
政治の師は故梶山静六元官房長官。改革が必要だと判断した課題には「剛腕」ぶりを発揮して挑む。携帯電話料金の値下げのほか、総務相時代に導入したふるさと納税もその一例だ。
政策通としての実績は、幅広い人脈に支えられている。政治家だけでなく経済界や官僚、メディア関係者らとも朝、昼、夜と会食を重ねて情報を収集。官僚の報告をうのみにせず、自ら当事者に電話して「役所からこういう報告があったが、本当か」と確認することもあったという。
「令和おじさん」として知名度を上げた。周囲に対しては気配り上手で、慕う議員は多い。酒は一滴も飲まず、パンケーキや大福など甘いものが大好きという一面も。趣味はウオーキング。「目の奥が笑っていない」(野党幹部)と見た目は怖いが、素顔は孫をかわいがる普通の71歳だ。(大島悠亮)
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