image004

戦闘支援型多目的USVの研究

近年、無人兵器システムの進化が著しく、その中でも無人水上艇(USV:Unmanned Surface Vehicle)の軍事利用が注目されています。特に戦闘支援型多目的USVは、警戒監視のみならず、対艦ミサイルの搭載や対潜水艦戦(ASW)における捜索・攻撃能力を備え、有人艦艇を支援する存在として開発が進められています。令和6年度概算要求の概要に初登場した宇宙船みたいなステルス艦のイラストがあった。その後詳細はまったく公開されていない。

本記事では、戦闘支援型多目的USVの役割や技術的特徴を考察し、将来的な運用について詳しく解説します。

image136

戦闘支援型多目的USVのイラストは令和5年度 政策評価書にあるイラストだが戦闘支援型多目的USVは短魚雷を発射する場面が描かれているので、対潜作戦において短魚雷を発射する。イラストでは戦闘支援型多目的USVは衛星を介して集団で行動している。


image041

またSUVは護衛艦とともに行動している。新型FFMやイージス・システム搭載艦(ASEV)等今後計画されるSUVやUUVを搭載する護衛艦に搭載されると思われる。

image005
海自の対潜水艦はマルチスタティック戦術を展開するにあたり戦闘支援型多目的USVを受信艦のひとつとして活用出来る。



USVの基本概念と発展

USVは、遠隔操作や自律航行技術を活用し、海上での様々な任務を遂行する無人艇です。従来は偵察・監視任務が主でしたが、AI技術やセンサー技術の進歩により、より高度な作戦遂行能力が求められるようになりました。特に戦闘支援型USVは、有人艦艇と連携しながら戦闘任務に貢献することを目的としています。

戦闘支援型多目的USVの役割

  1. 警戒・監視 戦闘支援型USVは、海域の警戒・監視を担い、敵艦艇や潜水艦、航空機の動向をリアルタイムで把握することが可能です。高性能レーダーや赤外線センサーを搭載し、昼夜を問わず広範囲の監視が可能となります。

  2. 対艦攻撃能力 近年では、USVに対艦ミサイルを搭載する構想が進められており、有人艦艇と連携して攻撃を行うことが可能になります。例えば、USVが先行して敵艦を探知し、遠隔操作またはAI制御によりミサイルを発射することで、有人艦艇のリスクを軽減しつつ攻撃能力を向上させることができます。

  3. 対潜水艦戦(ASW) USVは、ソナーを搭載し、潜水艦の捜索や対潜攻撃にも活用されます。特に複数のUSVを協調させ、広範囲にわたって潜水艦の探知と追跡を行うことで、従来の有人艦艇や航空機と比較して効率的な対潜戦が可能となります。また、対潜水艦魚雷の搭載によって直接攻撃も行えます。さらに、マルチスタティックソーナーを活用し、母船と連携して探知能力を向上させることも可能です。USVが複数の位置からソナー信号を発信・受信することで、潜水艦の位置をより正確に把握し、効果的な対潜戦を展開できます。

  4. 対空戦(防空支援) USVは母船の前衛として対空戦能力を持つことも可能です。特に対艦ミサイルの迎撃を目的とした防空システムを搭載することで、有人艦艇を脅威から守る役割を担います。高性能レーダーと連携した迎撃ミサイルやCIWS(近接防御システム)RAM(英語: Rolling Airframe Missile)を搭載することで、敵の対艦ミサイルを早期に探知し、撃墜することができます。これにより、母船の生存性を向上させ、艦隊全体の防衛力を強化することが期待されます。

  5. 機雷戦 USVは機雷探知・除去の任務にも適しています。従来、機雷掃海は高リスクを伴う作業でしたが、無人化によって人員の危険を低減しつつ、安全かつ迅速な機雷除去が可能となります。

技術的特徴

  1. 自律航行・AI技術 最新のUSVは、自律航行技術を活用し、設定されたミッションを遂行できます。AIによる状況判断能力も向上しており、敵の脅威をリアルタイムで評価しながら最適な行動を取ることが可能です。

  2. ステルス設計 戦闘支援型USVは、敵のレーダーに探知されにくい低視認性(ステルス)設計が施されています。これにより、敵艦隊に接近しやすくなり、奇襲攻撃や監視任務を効果的に遂行できます。

  3. 通信・ネットワーク連携 USVは有人艦艇や無人航空機(UAV)とデータリンクを介してリアルタイムで情報共有を行い、統合的な戦術運用を可能にします。これにより、従来の艦隊戦闘の概念を大きく変える可能性があります。

  4. モジュール設計 戦闘支援型多目的USVは、ミッションに応じて装備を変更できるモジュール設計が採用されることが多いです。例えば、ある作戦では対艦ミサイルを搭載し、別の作戦ではソナーと対潜魚雷を装備することで、多様な戦場環境に適応できます。

将来の運用構想

戦闘支援型USVの運用は、今後ますます重要になると考えられます。例えば、

  • 有人艦艇の護衛部隊としての運用 空母打撃群や護衛艦隊と連携し、前方で監視・警戒を行うことで、有人艦の安全性を確保します。

  • 群制御による戦術的活用 AIを活用したスウォーム(群)戦術によって、複数のUSVが連携して敵艦隊や潜水艦に対処する戦術が期待されています。

  • 長距離作戦支援 燃料補給なしで長期間のミッションを遂行できる設計を採用し、遠方の海域でも作戦可能な能力を持つUSVの開発が進んでいます。

まとめ

戦闘支援型多目的USVは、警戒監視のみならず、対艦攻撃や対潜戦など多様な任務を遂行できる新たな戦力として期待されています。AI、自律航行、ステルス技術などの進化によって、従来の艦隊運用の形が大きく変わる可能性があり、今後の発展が注目されます。有人艦艇と連携しながら、リスクを軽減しつつ効率的な戦闘を可能にする戦闘支援型多目的USVUSVは、未来の海戦の形を大きく変える存在となるでしょう。