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250304-F-AF000-1001 Air Force designates two Mission Design Series for collaborative combat aircraft Concepts of the uncrewed fighter aircraft YFQ-42A (bottom) and the YFQ-44A are pictured in artwork. The aircraft are designed to leverage autonomous capabilities and crewed-uncrewed teaming to defeat enemy threats in contested environments. (U.S. Air Force artwork courtesy of General Atomics Aeronautical Systems, Inc. and Anduril Industries)

 YFQ-42AとYFQ-44Aのイメージ

2025年3月4日、アメリカ空軍は史上初めて無人戦闘機に正式な型式名を与えました。それが、ジェネラル・アトミックスYFQ-42Aと、アンドゥリル・インダストリーズYFQ-44Aです。


Y:プロトタイプ(試作機、生産開始となるとYが取れます。)

F:ファイター(戦闘機)

Q:無人機

また、YFQ-42AとYFQ-44Aについて、

42と44は、設計番号(Design Number)Aは、最初のシリーズを意味しています。

この名称は航空機の命名規則に基づいたもので、「Y」はプロトタイプ、「F」は戦闘機、「Q」は無人機を意味しています。したがって、これらの機体が制式採用される段階になれば、FQ-42、FQ-44という名称になる可能性が高いと考えられます。

これらの無人戦闘機は「共同交戦航空機(Collaborative Combat Aircraft, CCA)」として開発されました。CCAプログラムの目的は、有人戦闘機と無人機が協力し、戦闘に勝利するための新たな戦術を確立することにあります。特に「ロイヤル・ウイングマン(Loyal Wingman)」というコンセプトのもと、無人戦闘機は有人戦闘機の補佐役として、もしくは状況次第では先陣を切る役割を担うことが想定されています。

CCAの最大の特徴の一つが「半自律」という点です。従来の無人機は遠隔操縦が必須であり、オペレーターの指示なしでは動作しませんでした。しかし、CCAは異なり、戦闘機パイロットが「攻撃せよ」といったコマンドを送ると、その後の詳細な動作はAIが自律的に判断し、実行します。具体的には、敵の編隊のどの機体を優先的に攻撃するか、どのルートで接近するか、あるいは回避機動をどう取るかといった戦術的判断をAIが行うのです。

CCAのメリットは、有人戦闘機よりも安価であること、そして撃墜されても人的被害が発生しないため、リスクの高い攻撃を任せられる点にあります。例えば、敵の防空網を突破する際、先陣を切ってミサイルを発射し、迎撃を引きつける役割を果たすことが想定されています。また、レーダーや電子戦装備を搭載し、戦場を索敵したり敵の通信やレーダーを妨害したりすることも可能です。

こうした技術革新の中で、次世代戦闘機F-47の存在も注目されています。F-47は、有人機と無人機がクラウドシューティングによって連携し、戦場における優位性を確立することを目的としています。クラウドシューティングとは、ネットワーク化された戦闘機群がリアルタイムで情報を共有し、最適なターゲットに対して迅速な攻撃を実施する概念です。F-47は、このシステムの中心として、CCAとシームレスに連携することで戦闘効率を飛躍的に向上させる役割を担います。

さらに、F-47はウィングマンとしての機能も備えており、複数のCCAを指揮する司令塔としての役割を果たします。F-47のパイロットは、従来の戦闘機のように単独で戦うのではなく、複数の無人戦闘機を従えた指揮官として戦場を駆け巡ることになります。これにより、有人戦闘機がリスクを最小限に抑えつつ、無人機を最大限に活用した戦闘が可能になります。

また、CCAの最大の利点の一つは「訓練飛行が不要」という点です。有人戦闘機のパイロットは年間200時間以上の飛行訓練を必要としますが、CCAはAIによって制御されるため、そのような訓練コストを大幅に削減できます。これにより、普段は一定数を無可動状態で保管し、有事の際には短期間で一挙に機数を増やすことが可能となります。

無人機といえども、CCAは非常に高度な機能を持つため、必ずしも有人戦闘機と比べて大幅に安価となるわけではありません。しかし、運用コストの削減や戦闘時のリスク分散など、多くの利点をもたらすことは間違いありません。

アメリカ空軍は、少なくとも1000機のCCAを導入することを目指しています。このような無人戦闘機はアメリカ以外の国々でも開発が進んでおり、2025年現在では有人戦闘機に匹敵する能力を持つ機体は存在しないものの、その実現は時間の問題といえるでしょう。

一方で、完全自律飛行する「無人戦闘機」の実現にはまだ多くの課題が残されています。例えば、倫理的・法的な問題、敵によるハッキングのリスク、AIの意思決定に関する透明性など、クリアすべき障壁は多岐にわたります。そのため、現時点ではCCAのように「半自律」の形態が主流となっています。

しかし、技術の進歩により、将来的には戦場の空に有人機と無人機が混在する新たな時代が到来することは確実です。F-47のような次世代有人戦闘機は、複数の無人戦闘機を従えた指揮官としての役割を果たすことになり、戦闘の概念そのものが大きく変わるでしょう。

YFQの意味は、次の通りです。


共同交戦航空機(Collaborative Combat Aircraft, CCA)とは?


近年、米国を中心に「共同交戦航空機(Collaborative Combat Aircraft, CCA)」の開発が進められています。これは、有人戦闘機と連携して作戦を遂行する無人戦闘機(UCAV)の一種であり、AIや高度なセンサーを活用し、独自の意思決定やデータ共有を行うことができる次世代の航空機です。特に米空軍は、F-35や次世代戦闘機(NGAD)と組み合わせることで、従来の戦闘機運用の概念を大きく変えることを狙っています。

現在、CCAプログラムにおいて注目されているのが、ジェネラル・アトミックス社のYFQ-42Aと、アンドゥリル・インダストリーズのYFQ-44A、そして日本も無人戦闘機です。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。


ジェネラル・アトミックス YFQ-42A

YFQ-42Aは、General Atomics社製です。

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240229-F-F3963-1003 AFRL’s XQ-67A Makes 1st Flight AFRL’s XQ-67A Off Board Sensing Station, or OBSS, designed and built by General Atomics, took its maiden flight Feb. 28 from Gray Butte Field Airport, Palmdale, California. XQ-67A completed several test points and safely recovered on the first of a series of flight tests. The XQ-67A is the first of a second generation of autonomous collaborative platforms, or ACP.(Courtesy photo.)

下図の第2世代の自律型AI無人機プラットフォームXQ-67Aに続く機体です。

概要

ジェネラル・アトミックスは、MQ-9リーパーをはじめとする無人機の開発で知られる企業です。その同社が開発するYFQ-42Aは、AIを活用した次世代の無人戦闘機であり、米空軍のCCAプログラムの一環として試験が進められています。

特徴

  1. ステルス設計:低被探知性を考慮した機体設計で、敵のレーダーに捕捉されにくい。

  2. 高度なAI制御:機動飛行や戦術的判断をAIが自律的に行い、パイロットの負担を軽減。

  3. モジュラー兵装システム:ミッションに応じて、空対空ミサイルや電子戦装備を搭載可能。

  4. 有人機とのシームレスな連携:F-35やF-22とリアルタイムでデータ共有し、共同作戦を実施。

運用の可能性

YFQ-42Aは、有人機の「ウイングマン」として機能するだけでなく、敵防空網への浸透作戦や、電子戦による撹乱、ISR(情報・監視・偵察)任務など、多岐にわたる用途が想定されています。


アンドゥリル・インダストリーズ YFQ-44A

YFQ-44Aは、Anduril社製です。Anduril社は、Furyと呼ばれる大型無人機をCCAの役割を果たせる高性能のマルチミッション対応させる計画です。他に、複数のセンサーやドメインでコマンド・アンド・コントロールに使用できるオープン・システム・ソフトウェア・プログラムである「Lattice software」の開発をしています。この他にも、Altius-600Mなどのドローンを開発しています。

下図は、第1世代のAI無人機XQ-58Aヴァルキリーから放出されたAltius-600の写真です。

XQ-58Aヴァルキリーのウェポンベイが開いています。

XQ-58Aヴァルキリー有人機との連携や新たなコンセプトを開発するテストベッド・プラットフォームです。

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210326-F-F3963-9001 Valkyrie deploys Altius-600 The XQ-58A Valkyrie demonstrates the separation of the ALTIUS-600 small unmanned aircraft system in a test at the U.S. Army Yuma Proving Ground test range, Ariz., March 26, 2021. The test was the first time the weapons bay doors have been opened in flight. (U.S. Air Force courtesy photo)



アンドゥリル・インダストリーズは、ソフトウェアとハードウェアの融合に特化した新興防衛企業であり、従来の防衛産業とは異なるアプローチを取っています。YFQ-44Aは、低コストでありながら高性能な無人戦闘機として開発されています。

特徴

  1. 低コスト・高性能:従来の戦闘機に比べてコストを大幅に抑えつつ、優れた戦闘能力を発揮。

  2. クラウドベースの戦術AI:ネットワーク上でAIが連携し、状況判断を共有。

  3. スウォーミング(群制御)能力:複数のYFQ-44Aが連携して作戦を遂行。

  4. 容易な運用と保守:迅速な修理・交換が可能な設計。

運用の可能性

YFQ-44Aは、大量運用を前提とした設計となっており、敵の防空網突破や囮作戦、電子戦支援に適しています。有人機を守るための盾としての役割も果たす可能性があり、米空軍のCCA構想において重要な位置を占めています。

日本の無人戦闘機


三菱重工、AI搭載の戦闘支援無人機の模型初公開 2025年中に実機の飛行試験を初実施へ

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員




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三菱重工業が2024国際航空宇宙展で初公開した戦闘支援無人機の模型(筆者撮影)

日本の防衛最大手企業の三菱重工業は10月16日に東京・有明の東京ビッグサイトで開会した「2024国際航空宇宙展」で、人工知能(AI)を搭載する戦闘支援無人機の模型を初公開した。AI活用によるこの自律型無人機は、日英伊が2035年度までの共同開発完了を目指している有人の次期戦闘機と連携する。


その一環として、三菱重工業担当者は筆者の取材に対し、防衛装備庁の契約に基づき、AI搭載の無人機の飛行試験を2025年中に初めて実施する方針を明らかにした。


三菱重工業が今回公開したのは、以下の2種類の戦闘支援無人機の模型だ。いずれも現在はコンセプト段階にある。


●戦闘型の戦闘支援無人機


1つ目は戦闘型の戦闘支援無人機の模型だ。三菱重工業担当者によると、模型は全長1メートルほどで、実物の10分の1サイズになるという。この模型は今回初めて公開された。この無人機は陸上から離陸し、相手を攻撃して帰還するコンセプトとなっている。ウエポン(兵器)を内装化したり、レーダーを搭載したりと運用に合わせて様々な使い方ができるよう設計されている。


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三菱重工業が2024国際航空宇宙展で初公開した戦闘支援無人機の模型(筆者撮影)

日本の防衛最大手企業の三菱重工業は10月16日に東京・有明の東京ビッグサイトで開会した「2024国際航空宇宙展」で、人工知能(AI)を搭載する戦闘支援無人機の模型を初公開した。AI活用によるこの自律型無人機は、日英伊が2035年度までの共同開発完了を目指している有人の次期戦闘機と連携する。


その一環として、三菱重工業担当者は筆者の取材に対し、防衛装備庁の契約に基づき、AI搭載の無人機の飛行試験を2025年中に初めて実施する方針を明らかにした。


三菱重工業が今回公開したのは、以下の2種類の戦闘支援無人機の模型だ。いずれも現在はコンセプト段階にある。


●戦闘型の戦闘支援無人機

1つ目は戦闘型の戦闘支援無人機の模型だ。三菱重工業担当者によると、模型は全長1メートルほどで、実物の10分の1サイズになるという。この模型は今回初めて公開された。この無人機は陸上から離陸し、相手を攻撃して帰還するコンセプトとなっている。ウエポン(兵器)を内装化したり、レーダーを搭載したりと運用に合わせて様々な使い方ができるよう設計されている。


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三菱重工業が2024国際航空宇宙展で初公開した戦闘型の戦闘支援無人機の10分の1サイズの模型。現在はコンセプト段階になっている(筆者撮影)

ミサイル技術を転用した戦闘支援無人機


2つ目はミサイルの形状をした戦闘支援無人機だ。模型は全長6メートル弱で実物大になる。この模型は、これまでSNSのXなどに投稿された写真の中に写り込んでいたことがあった。模型で示されているように機体前方下部にはカメラが設置される。この無人機はミサイルと同じように、使い捨てタイプのコンセプトとなっている。機体に記された「ARMDC-20X」のARMDCはAffordable Rapid Prototype Missile Drone Conceptの頭文字略語を意味し、日本語直訳は「低価格の迅速プロトタイプ(試作品)ミサイルドローンコンセプト」になる。数字の20はタイプ(種類)を示し、Xはこの無人機が今も開発中であることを意味する。


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三菱重工業が2024国際航空宇宙展で初公開した、ミサイル技術を転用した戦闘支援無人機の実物大の模型。現在はコンセプト段階になっている(筆者撮影)





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三菱重工業が2024国際航空宇宙展で初公開した、ミサイル技術を転用した戦闘支援無人機の実物大模型。機体前方下部にはカメラが設置されている。筆者の手の一部が反射してカメラカバーに写っている(筆者撮影)


三菱重工業担当者は筆者の動画撮影インタビューに応じ、上記の2種類の戦闘支援無人機について、この他にも一般向けにより詳しい丁寧な説明を尽くしてくれました。ぜひ以下の動画をご覧いただきたい。




●戦闘支援無人機コンセプトの4つの特徴

三菱重工業は、戦闘支援無人機コンセプトの特徴として、①高度なAI技術の利用、②コストなどの負担が低く損耗しても許容されるアトリタブル(損耗許容性)、③様々なミッション(任務)に対応、④ステルス設計の4点を挙げている。

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日本は、中国を念頭に数的に劣勢で不利な空対空戦闘を前提にして、有人戦闘機と無人機が連携して任務を行う「チーミング」の技術の獲得を急いでいる。無人機が戦闘機のミッションの一部を担うことで、数で勝る相手との戦力の差を補うとともに、無人機が有人戦闘機に随伴し、これまで有人機が担っていた役割を請け負うことで、パイロットの生存性をより高めることもできる。無人機の方が有人戦闘機よりも安く生産・運用でき、コスト面でもメリットがある。


三菱重工業は2022年度から防衛装備庁が発注した「無人機へのAI搭載技術の研究試作」を開始した。2024年8月2日にも同庁発注の「AIを搭載した戦闘支援無人機等のソフトウェアの安全性確保に関するシミュレーション評価役務」を2億4260万円で落札した。


このほか、川崎重工業が2022年4月に同庁発注の「自律向上型戦闘支援無人機の機能性能及び運用上の効果に関する研究試作」を約39億円で落札。SUBARUも2023年11月に「戦闘支援無人機システムのコスト構造等に係る検討役務」を約4722万円で落札した。日本エヤークラフトサプライも同月に「戦闘支援無人機システムの機能・性能に関するミッションレベルの成立性分析手法の検討」を約2億円で落札するなど、各社が戦闘機との連携による戦闘が可能な自律型戦闘支援無人機の研究開発や運用実現に取り組み、しのぎを削っている。


なお、アメリカ空軍は、F35戦闘機やB21爆撃機のような有人軍用機に随伴して偵察機や空の通信ハブとしても機能する、こうした戦闘支援無人機を「Collaborative Combat Aircraft(CCA)」と呼んでいる。日本語では「協調戦闘機」と訳されることが多い。

特徴

  1. 日本独自の技術力を活用:国産のセンサー技術やデータリンクシステムを搭載。

  2. F-3(次期戦闘機)との連携:日英伊共同開発のF-3と連携し、作戦の多様化を図る。

  3. 電子戦能力の強化:最新のECM(電子対抗手段)を備え、敵の通信・レーダーを妨害。

  4. ステルス性の向上:低RCS(レーダー反射断面積)を追求し、敵の探知を回避。

運用の可能性

日本の無人戦闘機は、近隣諸国の軍拡に対応するため、領空防衛や先制攻撃能力の強化を目的として開発されています。また、米軍との共同運用も視野に入れ、相互運用性を確保することが期待されています。


F-3の ロイヤルウイングマン

概要

F-3の「ロイヤルウイングマン」は、日本の次世代戦闘機F-3と連携する無人戦闘機です。日英伊の共同開発によるF-3計画の一環として、無人機との高度な連携が重視されており、敵の防空網突破や戦闘支援を目的としています。

特徴

  1. AI主導の自律飛行:状況に応じて戦術を判断し、F-3の指揮下で作戦を遂行。

  2. 高いステルス性能:F-3と同様の低RCS設計で、敵の探知を回避。

  3. 電子戦・ISR能力の向上:敵レーダー妨害や偵察任務を担い、F-3を支援。

  4. 複数機との連携:F-3と複数のロイヤルウイングマンが協調して戦闘を展開。

運用の可能性

ロイヤルウイングマンは、日本の防衛戦略において、領空防衛や遠距離作戦支援において重要な役割を果たすと期待されています。また、F-3とのネットワークを強化することで、戦闘の柔軟性を大幅に向上させることが可能になります。




CCAの未来と戦略的意義

CCAは、有人機の負担を減らしつつ、戦場での柔軟性と生存性を向上させる重要な要素です。米国のYFQ-42AやYFQ-44Aは、コストパフォーマンスと性能を両立し、次世代の航空戦力の主軸となることが予想されます。一方、日本の無人戦闘機も、国産技術を活用しつつ、日米の共同運用を前提に開発が進められています。Ddogの個人的なイメージではF47やGCAP(F3)は現在AWACSが担う指令管制機で空戦や地上攻撃を行うのが日米新無人戦闘機CCAになるとうとわかりやすいかもしれません。

これらの無人戦闘機が実戦配備されれば、空戦の概念は大きく変わるでしょう。従来の戦闘機同士のドッグファイトではなく、AIを活用したCCA戦術が主流となり、戦場の様相はより高度かつ複雑なものとなります。

CCAの発展が、航空戦の未来をどのように変えるのか、今後の動向に注目が集まっています。