もくじ

第1章:はじめに ― なぜ今、次世代潜水艦なのか
第2章:現行艦の限界と次世代への課題
第3章:29SS(仮称)の技術的展望
以下続き
第4章:次世代潜水艦の課題と国家戦略
第5章:次世代潜水艦がもたらす戦略的変化
第6章:装備輸出と国際共同開発の可能性
第7章:マイクロ原子炉の戦略的可能性
第8章次世代潜水艦計画総括と未来展望

第1章:はじめに ― なぜ今、次世代潜水艦なのか

近年、東アジア海域の安全保障環境は急速に変化しており、日本を取り巻く脅威は一層複雑化・多様化している。中国海軍の急速な増強、北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)開発、さらにはロシア極東艦隊の活発化といった事象が、日本にとって深刻な戦略的課題となっている。これにより、海上交通路(シーレーン)を確保する必要性はかつてないほど高まっている。

また、中国の空母戦力の南シナ海・西太平洋への展開や、軍事衛星を活用した広域監視能力の強化など、日本の防衛・抑止戦略に直接影響を与える動きが活発化している。台湾有事や朝鮮半島情勢の不安定化も含め、今後数十年を見越した戦略的備えが不可欠である。

その中で、海上自衛隊が担うべき役割は従来の「沿岸防衛」から「広域抑止」「持続的プレゼンス維持」へと大きく変化している。特に、敵に発見されずに戦域深部へ潜入し、長期間にわたって情報収集・監視・攻撃態勢を維持できる潜水艦は、他の戦力では代替し得ない独自の存在価値を持つ。いわば、「見えざる盾」としての役割がこれまで以上に重要視されている。

イメージ 1
そうりゅう型うりゅう

日本の潜水艦技術は、戦後一貫して通常動力型に特化して発展してきた。1980年代の「ゆうしお型」から1990年代の「おやしお型」、2000年代の「そうりゅう型」、そして現在の「たいげい型」へと続く進化は、世界の海軍関係者から高く評価されている。


⇑戦後日本の潜水艦小史
特に静粛性、センサー性能、深度性能の三要素で日本潜水艦は常にトップクラスの水準を維持してきた。また最大潜航深度についても世界最高の性能を有していることは海軍関係者の間では常識となっている。「そうりゅう型」「たいげい型」の公式航行可能深度は500メートル作戦可能深度は約600mとされる。米原潜のシーウルフ級原子力潜水艦バージニア級の潜航深度が約500mといわれ世界のほとんどの潜水艦が400メートル以下を限界とするので、これらの真下を航行することが可能である。


日本の兵器はその兵器の能力がカタログスペックを下回ることはまずありません。


私の知る限り深度1000mに届く魚雷や爆雷は存在しない。最高機密なので存在したとしてもで限界深度に関しても1000mを超えることはなく、潜ったとしても500m程度で、通常は水深100m程度となります。つまり日本の潜水艦は潜水艦戦において無双状態なのだ。


中国の潜水艦の最大深度については膨張する中国海軍は張り子の虎か?を参照してください。中国が潜水艦技術のフィードバックを目的に12隻、購入したロシア製のキロ級潜水艦も、潜航深度が300m程度といわれています。改良商型のカタログスペックですら300~400mで中国大手検索サイト百度の掲示板に「わが国の原子力潜水艦は200メートル潜ると変形する」というスレッドが立てられた。 
スレ主は「091型原子力潜水艦の潜水試験中、230mに達した時に船内から音や水漏れ、変形が発生した」と主張。 中国では粗悪な材料を使う手抜きの“おから工事”がしばしば問題になるため、「原子力潜水艦までおから工事とは恐れ入った。これじゃ日清戦争前に軍事費をくすねた 西太后と同じじゃないか」など、皮肉を込めたコメントも多かったが、半ばあきらめも感じられる意見が多く寄せられた。 

「そうりゅう型」「たいげい型」、非公式スペック(実際の性能)は1000mを越えている可能性は高いことも有名だ。根拠として海上自衛隊の潜水艦救難艦は深度1000メートルでの救助活動が可能な深海救難艇を搭載しているほか、乗組員(水中作業員)は450メートルの深さで潜水作業した記録を持つこと、「おやしお型」「そうりゅう型」「たいげい型」で使用されているNS110は降伏耐力110kgf/mm2の性能(1平方ミリメートルあたり110kgまで引っ張りに耐えられる.)で、鋼板能力だけからみれば最大深度は1000mを越える。
ちなみに銀の値段とほぼ同じのチタン合金6Al-4V-Tiは100kgf/mm^2だそうです。
チタン合金6Al-4V-Tを使用した攻撃型潜水艦で一番深く潜れる旧ソ連のMike級(NATOコードネーム: マイク型姉妹艦無しは(安全潜入深度1000m)/(最大潜入深度1250m)であることから「そうりゅう型」「たいげい型」は単純計算10%増しで(安全潜入深度1100m)(最大潜入深度1375m)となる。


image024
イメージ 13

この点では明らかに性能が「良い」といえるでしょう。

勿論、チタン合金も組成次第でもっと強力なものも作れるらしいがが、コストが馬鹿に

ならないのでソ連のMike級には姉妹艦はない。




しかし、それでも時代の流れは容赦なく、「そうりゅう型」「たいげい型」といえど従来型の技術的限界や、戦略環境の変化によって次世代への移行が避けられない状況にある。たとえば、従来のAIPシステムでは連続航続距離や最大出力に限界がある。さらに、現代の戦場ではサイバー戦・電磁波戦・宇宙空間からの監視といった、かつては想定されなかった脅威への対応も求められている。こうした状況を受け、日本は従来の延長線上にあるAIP潜水艦はそうりゅう型で早々に見切りをつけ、革新的な推進方式、・燃料技術、小型原子炉(マイクロ炉)~全固体原子炉搭載潜水艦開発が進行中であつ。そして自律型無人攻撃型潜水艦の運用といった「次世代潜水艦」の構想を本格化させている。




次世代潜水艦は単なる高性能兵器ではない。それは、当ブログで書かせていただいた新型FFM・GCAP/F-3烈風戦闘機と同じく国家の安全保障政策、外交戦略、産業技術基盤を結集させた総合的プロジェクトである。とりわけ、現代の安全保障は軍事力だけでなく、国際協力、経済的影響力、技術主導権といった多面的要素から構成される。潜水艦技術を軸に、日米豪印などとの多国間協力、海洋国家としての信頼構築、さらには経済安全保障の推進が可能になるのである。

さらに、潜水艦は単なる軍事兵器ではなく、「外交ツール」としての機能も持ちうる。すなわち、日本が東南アジア諸国やインド太平洋パートナー国と安全保障協力を深化させる上で、自国製潜水艦の輸出や技術協力は、極めて強力な信頼醸成手段となる可能性がある。

また、今後の海洋安保は二国間の枠組みにとどまらず、QUAD(日米豪印)やAUKUS(日米豪英)といった多国間安全保障枠組みの中で運用されることが前提となるだろう。そこでは、共通の装備体系、通信規格、指揮統制プロトコルを持つことが求められ、日本の次世代潜水艦にもこれらを組み込む必要が出てくる。

このように、次世代潜水艦の設計とは単に技術革新の問題ではなく、日本の安全保障戦略そのものを体現する国家的プロジェクトである。本稿では、現行の「たいげい型」に続くと目される29SS(仮称)以降の次世代潜水艦について、その技術的進化、国家戦略上の位置づけ、そして将来的な国際的な展開可能性をも含め、多角的に論じていく。

第2章:現行艦の限界と次世代への課題


現在、海上自衛隊が運用している最新鋭の通常動力型潜水艦「たいげい型」は、リチウムイオン電池の導入により大幅な性能向上を果たした艦である。その前の「そうりゅう型」ではスターリングエンジンを搭載したAIP(非大気依存型推進)システムが導入され、水中航行時間の大幅な延長が実現された。しかし、これらの現行艦にも依然として克服すべき制約が存在している。AIP(非大気依存型推進)システムについては運用してその実用性に難ありと判断し、ディーゼル+AIP(非大気依存型推進)+リチウムイオン電池からディーゼル+リチウムイオン電池方式へと海自では早々に見切りをつけた。



潜水艦としての航続距離と作戦継続能力には依然として限界がある。たいげい型のリチウムイオン電池は充電の迅速性とエネルギー密度の高さという点で大きなアドバンテージを持つが、依然として浮上してスノーケル運転によるディーゼル発電が必要であり、敵の監視衛星や無人哨戒機に発見されるリスクをゼロにはできない。

第二に、電磁波や赤外線、音響といったマルチスペクトル監視技術の進化により、従来の「隠密性」に頼る作戦手法は根本的な再考を迫られている。現代の戦場では、潜水艦の航跡をAIやデータリンクでリアルタイムに追跡・蓄積し、潜在的な行動パターンを可視化する新たに量子センサー技術などが登場しつつある。これにより、いかに静粛であっても「完全に見えない存在」であることが困難になってきている。



さらに、既存のAIPシステムには出力不足という根本的課題がある。スターリングエンジンは極めて静粛ではあるが、その出力は極めて限られており、高速での機動戦闘や電力消費の激しい兵装・センサーの同時運用には向いていない。この点で、今後の潜水艦にはより高出力かつ持続可能なエネルギー供給手段が不可欠である。

また、日本の現行艦は通常動力型であり、原子力潜水艦に比べて戦略的な持続力、抑止力に限界がある。原潜であれば、文字通り数ヶ月にわたって水中に留まり続け、遠方の戦域でプレゼンスを維持できるが、たいげい型であっても補給と充電のための行動制約が存在する。これは地理的に広大なインド太平洋戦域において、任務継続性という点で大きな制約要因となる。

サイバー戦や電子戦への耐性も、今後の潜水艦に求められる重要な要素である。水中という閉鎖空間におけるセンサーとネットワークの統合化が進む中で、敵の電子妨害やサイバー攻撃により一時的に情報遮断された場合でも、自律的に判断・行動できるAI統合型指揮制御システムの導入が今後は必須となるだろう。

第3章:29SS(仮称)の技術的展望

image041
2019年6月幕張 で開催されたMAST Asia 2019で三菱重工は次期潜水艦29SS潜水 艦2019年6月に幕張で開催された防衛関連展示会で三菱重工が発表した次期潜水艦「29SS」(仮称)のコンセプトモデルが発表しました。この新型潜水艦は、その斬新な形状と革新的な技術により、国内外のメディアや軍事関係者から大きな注目を集めました。
まだ契約したのではなくあくまでもコンセプトモデルだが29SSは2025年から2028年にかけて開発が進められ、2030年代の就役を目指しています。従来の潜水艦とは一線を画す仕様を持ち、日本の海上防衛における新たな切り札となる可能性を秘めています。

29SS(仮称)は、「たいげい型」の発展型ではなく「新設計プラットフォーム」となる可能性が高いと見られている。

【1】主な技術的進展の予測

 特徴①:流線型の新設計ボディ
 特徴②:非スクリュー推進「ポンプジェット推進」もしくはヘルカリ型電磁推進方式」の採用 
 特徴③:次世代ソナーと統合制御システム
 特徴④:電波通信機器システム
   特徴⑤:リチウムイオン電池の改良新型電池の採用

  • 新型リチウムイオン電池の改良型:高温耐性、安全制御回路、長寿命化

  • 電動ポンプジェット推進の採用:従来のスクリューに代わる、より静粛で高速域も対応可能な推進方式

  • マストレス潜望鏡(デジタル式):通信マストと統合されたセンサーパッケージにより、浮上回数の低減※たいげい型で実現済

  • 艦内AI統合による戦闘システム管理:状況認識・脅威評価・電力配分のリアルタイム最適化


    数か月以上の任務遂行が可能で、安定した出力と優れた静粛性を持ち、隠密性が高くなります。これにより、通常動力潜水艦でも戦略原潜のような運用が可能になると期待されています。
  • 無補給運用 居住性の改善 女性自衛官エリアの拡充等から更なるAI化AI 技術の導入による艦艇省人化について・省人化が進む艦艇の極省人化に関する研究



  「たいげい型」潜望鏡は非貫通式潜望鏡1型(英国タレス製CMO10型を三菱電機でライセンス生産)1本、を搭載する。                  

さらに、艦体構造には新素材の使用(高張力鋼、複合材部品)も進むと予測されており、軽量化と深度性能の向上が見込まれている。
イメージ 26

次々世代潜水艦/将来潜水艦(ポスト3000トン型)のイラスト情報の出所が潜水耐圧殻構成要素の研究であるから、「そうりゅう型」「たいげい型」の公称最大深度500~600m非公称最大深度1000mが最大深度は千数百mに至ると思われる。


■ 特徴①:流線型の新設計ボディ

image037


まず注目すべきは、29SSが持つ独特な流線型の船体です。艦首には傾斜角を持つ丸みのある形状が採用され、艦橋(セイル)は後方へと移動し、船体と一体化しています。この設計により水中での流体抵抗を抑え、高速航行と静粛性の向上が期待されます。ステルス性にも貢献しており、敵に発見されにくい隠密行動が可能になるでしょう。

ATLA:超高速魚雷、高速潜水艦、超高速滑空艇開発を可能とするペンギン応用超撥水・多孔 性塗料バブルコーティング技術を開発2018/11/4(日) 午後 5:39 


バブルコーティングでは居場所を特定されてしまうので、ペンギン応用超撥水・多孔 性塗料バブルコーティング技術が用いられる可能性がある。

現在研究中だが、実用化されれば、原潜ほど長時間30ノットで水中を潜航することはできないが、短時間であれば、通常動力型の僅かな電源でも水中で40ノット以上の高速を出せるかもしれなくなる。

特徴②:非スクリュー推進「ポンプジェット推進」もしくは「ヘルカリ型電磁推進方式」の採用


image082
ヘルカリ型電磁推進方式はプロペラキャピュテーションを失くす為、神戸大学が開発したが、中国に技術流失した。


さらに注目すべきは、従来のスクリュー式プロペラに代わって「ポンプジェット」か推進方式か「ヘルカリ型電磁推進方式」が採用されると予想されている点です。ポンプジェットは、船底から取り込んだ水を高圧で後方に噴射し推進力を得る方式で、米バージニア級原潜などに搭載されている最新技術です。

この方式は高速航行が可能であり、方向転換や急停止も比較的容易。また、静音性も高く、敵のソナーに探知されにくいという利点もあります。ただし、製造が難しく、低速時の操舵性や燃費に課題があるため、実運用には高い技術が求められます。

特徴③:次世代ソナーと統合制御システム

イメージ 16イメージ 27

29SSには、新型の高性能ソナーも搭載されると見られています。艦首に配備された監視ソナーは、朝鮮半島近海の複雑な地形に対応できるよう最適化され、艦体側面には光干渉技術を応用したアレイが装備される予定です。

これにより音波のみならず光の反射を利用した探知も可能となり、敵潜水艦の発見能力が飛躍的に向上。また、これらの情報は統合コントロールシステムに集約され、射撃管制や状況判断をリアルタイムで支援します。

特徴④:電波通信機器システム


隠密性が重要な潜水艦にとって水上で使用する電波機器の運用は限定的である。特に電波を編射する通信機やレーダーの運用には最新の注意が払われている。逆に水上艦や対潜哨戒機からのレーダーや通信電波などを探知する電波探知機は最重要電波機器であり、電波探知専用マストや電子光学潜望鏡/電子光学マストからの信号を処理して方位測定のはか電波周波数など各種情報を取得している。将来的にはマストの水上での被探知を避けた短時間の複数電波受信から重要情報を取得・解析可能だ。

レーダーは潜水艦が水上航行する場合に水上艦船や航路標識などを探知するのに使用されているが(‘‘そうりゅう”型以降ではZPS-6Fを搭載)戦闘場面で活用されることは少ない。
イメージ 23

潜水艦がどの程度ネットワークされているか正直不明ではあるが、確実に能力は備えている。
イメージ 21

特徴⑤:リチウムイオン電池の改良新型電池の採用

海上自衛隊の潜水艦の戦い方は大洋を高速機動して敵艦隊を遊撃するのではなく宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡、大隅海峡、宮古海峡などのチョークポイント(戦略上重要な水上交通路)での待ち伏せ攻撃である。呉や横須賀からチョークポイントまではスノーケル航行してリチウムイオン電池に充電しチョークポイントでは待ち伏せ攻撃を行うので速度の鈍いAIPを使うまでもない。戦闘海域ではリチウム電池を多く積んだ方が有利である

イメージ 5

生存性を考慮すれば水面下で充電できる装置として燃料電池を搭載する方が望ましい。だが、「たいげい型」に燃料電池を搭載しなかった。これは水素吸蔵合金の技術的進展が遅滞し調達コストが高価になる見込みとなったためである。しかし、2014年12月にトヨタ自動車が燃料電池搭載車MIRAI,ホンダも2016年3月に燃料電池搭載車ホンダ・クラリティ フューエル セルを発売し、一気に民間での燃料電池の普及が進みコスト的課題がクリアーできた可能性がある。新型潜水艦と表現するのだからSS29には燃料電池を搭載する可能性があるが、いまのところ不明である。
リチウムイオン電池

リチウムイオン電池とは、正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う電池のことです。二次電池の一種で、スマートフォンやノートパソコンEVなど、幅広い機器に使用されています. 軽量で高電圧が出せるのが特徴で、現在最も大容量の電力を蓄えることが可能な電池です.
現在のリチウムイオン電池は、プラス(正極)にリチウム化合物、マイナス(負極)にカーボン系材料が主に使われています。充放電のときは、その2つの電極の間をイオンが行き来します。ここでイオンの往来する道となるのが電解質。現在のリチウムイオン電池は、有機溶媒と呼ばれる液体が使われます。

〈図〉リチウムイオン電池の構造

image085
正極と負極が触れ合わないように、セパレータ(池の正極と負極を隔て、イオン伝導性を確保する材料:)リチウムイオン電池など、二次電池で短絡を防ぎ、イオンが行き来できるようにするための板状の材料)が存在。セパレータはリチウムイオンを通し、流れを阻害しない。

全固体電池

image041

特徴は「中身すべてが固体」であること。実のところ、今ある「リチウムイオン電池」は、その中身に電解質という液体が使われています。その液体を固体化したものが「全固体電池」となります。リチウムイオン電池の進化版と言ってもいいでしょう。

固体電池」>「リチウムイオン電池」

液体を固体化することで、全固体電池は、さまざまなメリットを得ることができます。まず、充電スピードが速くなります。トヨタ、日産、ホンダが世界的に先行して全固体電池を開発している。自動車メーカーいわく、充電にかかる時間は3分の1に短縮されます1)。さらに、電池の容量も大きくなります。これも自動車メーカーいわく、エネルギー密度が2倍2)。また、固体ですから液漏れがなく、安全面でも利点がありますし、作動温度範囲も広く、高温や低温状態でも充放電が可能です。

トヨタ、日産、ホンダという3社が、足並みをそろえて2028年頃の市場導入を目標に掲げています。現実的には1~2年ほどの誤差はあるはずですが、それでも2030年までには、各社から全固体電池を搭載したEVが発売されているとのこと。

全固体電池を搭載することで潜水艦は、より長時間シュノーケルによる充電なしで活動できるようになり、そして充電にかかる時間も圧倒的に少なくなる。

空気電池空気


image044
【日本化学未来館】電極・電解質・イオン種、全方位で進化し続ける二次電池(酸素)を使った電池です。その軽さと、理論的には貯められるエネルギー量が最も多いので、
“究極の二次電池”などとも呼ばれています。
容量はリチウムイオン電池の15倍
「空気電気」>「固体電池」>「リチウムイオン電池」

燃料電池
次世代潜水艦でディーゼル+超高性能電池+燃料電池が採用されるかマイクロ原子炉を搭載否かはわからないがマイクロ原子炉げなければ燃料電池になる可能性も高い。 
瞬発力を出して水中高速を出した後、海面でシュノーケルで充電するか海底で燃料電池で充電するか選択オプションがある方が、生存力は高いと思う。次世代潜水艦は外洋でも原潜に対峙できるようになると思う。
イメージ 18
イメージ 19


リチウムイオン電池の改良安全性
LiBはエネルギー密度が高い優れた電池ですが、可燃性の電解質を含んでいることから発火や爆発の危険性があるのです。 特にEVには高電圧部品が搭載されていることから、事故などによって大きな衝撃・圧力が加わった場合に、発火などの二次的な被害が世界的に多発しています。

軍艦である潜水艦は、戦闘時損傷すれば、電気化学セルのショートも引き起こしかねない。結果、加熱され、リチウムと電解質との反応により可燃性ガスが生成され、燃焼および温度の急上昇が起きる。
image090

こうした例はよく知られている。電池の損傷から複数台のテスラ電気自動車が炎上した。燃え盛るリチウム電池の消火は非常に難しい。リチウム電池は空気に触れずに燃え、リチウムと水の反応は水素を生成するからだ。鉛蓄電池は様々な問題があるが、燃えない。

image094

そのため、執拗な追跡と爆雷による攻撃という極限状況下で、リチウムイオン電池搭載潜水艦のリチウムイオン電池は強く損傷し、発火するおそれもある。火災は潜水艦にとって最も恐ろしい危険性だ。そのため、おうりゅう以降の搭載リチウムイオン電池は、発火しにくいリチウムイオン電池の開発に成功したと言う。

 リチウムイオン電池・安全性




我が国は、安全で信頼性の高い潜水艦用のリチウムイオンバッテリー開発に多額の予算を投じてきた。より強靭な隔壁、安定した原材料と自動消化器などを導入し、数々のストレス実験によって、戦闘時にも安全性が求められると判断し、実用化に至ったという。「おうりゅう」用のリチウムイオン電池の開発には、GSユアサが参画した。

※参考
リチウムイオン電池発火事故が多発して、サムソン製のスマートフォンは飛行機に持ち込み禁止となっているが、おうりゅう進水報道直後、あせった韓国海軍は自国の潜水艦にもリチウムイオン電池を搭載すると発表してしまった。島山安昌浩級潜水艦バッチ2以降は従来の鉛蓄電池にかえてリチウムイオン蓄電池が導入さる。バッチ2 1番艦2023年3月30日起工 2番艦2024年7月12日起工 3番艦発注済 まだ就役した艦はない。怖ワ!

関係者は、「潜水艦用のリチウムイオン電池は、まず安全性が重要だ。ある程度蓄電量を減らすことでより高い安全基準を確保できた。また、新たな電池は爆発や海水、火災、及び極端な温度などの劣悪な条件でのテストも経験している」と語ったとのこと。たぶん見栄とケッチャナヨな無責任な嘘であろう。韓国製リチウムイオン電池搭載の韓国製潜水艦の乗員は相当の勇気と覚悟が要るはずである。(笑)南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏


【3】攻撃兵器 防御兵器 UUV

■ ①:新型魚雷

29SSには日本独自開発の潜水艦用長魚雷18式魚雷(ひとはちしきぎょらい)(G-RX6)が搭載されると思われる。これは従来の89式魚雷を改良したもので、複雑な音響環境でも目標識別と高精度の近接起爆が可能です。

さらに、推進装置には低振動の新型タービンが用いられることで、発射時の騒音も抑えられ、ステルス性を一層高める仕様になっていると見られます。



現在、500mをこえる深々度魚雷を製造している国は世界で日本以外にはない。
現在自衛隊に実戦配備されている89式長魚雷は静粛性を重視し、長距離航走を可能とするため、水素・酸素燃焼タービンを採用。有効射程 27海里 / 50キロメートル(40kt時)21海里 / 39キロメートル(55kt時) 速度55ノット (102 km/h)※最大70ノット (130 km/h)説も 
 
89式の最大深度は最高軍事機密なのでかつて余命さんのHPで目にしただけだったが、89式の最大深度は900mとの噂 18式の最大深度等の噂はまだ耳にしていないが「そうりゅう型」「たいげい型」が最大深度1000mであれば18式は水深1000mからの発射は可能ではないだろうか?遠距離から89式長魚雷/G-RX6を発射し深海を走行し直下まで接近したところで垂直上昇攻撃するというスタイルをとれば標的となった潜水艦はまったく防御が不可能である。

日本の兵器はその兵器の能力がカタログスペックを下回ることはまずありません。潜航深度900mとあれば、それ以上。深々度魚雷の攻撃深度が900mとあればこれもそれ以上の能力を持っている。潜航深度900mとあれば、それ以上。深々度魚雷の攻撃深度が900mとあればこれもそれ以上の能力を持っている。

潜水艦の潜行可能深度というのはかなりレベルの高い機密になっているため、不明ですが
ウィキペディアでは
アメリカオハイオ級(1970)300mロサンゼルス(1972)457mシーウルフ(1990)610m
イギリストラファルガー級(1980)600m アスチュート級(2000)300m以上
ソ連/ロシアタイフーン級(1980)400m ボレイ級(2000)450m
日本はるしお級(1980)550m前後おやしお級(1990)600から650m

潜水艦用長魚雷18式魚雷(ひとはちしきぎょらい)(G-RX6)

イメージ 17

高性能な水上艦船及び潜水艦に対し、高度なTCCM機能※ を有し、深海域から浅海域までのいずれの海域においても探知、追尾及び命中性能に優れる潜水艦用長魚雷を開発中です。
※TCCM:Torpedo Counter Counter Measures(魚雷攻撃から母艦を防御するために魚雷を欺瞞或いは 妨害された際の対抗手段)
海自は更に次世代の新型魚雷(ステルス魚雷)を研究開発中である。

イメージ 7 新型魚雷(ステルス魚雷)
静粛型動力装置搭載魚雷 要旨 評価書 参考
イメージ 12

おとりと本当の標的をソナーで区別し、弾頭の爆発時間調整により深海、浅海それぞれの交戦に応じた効果を実現する。攻撃対象には水上艦艇、および潜水艦。

囮装置をはじめとする魚雷防御手段などへの対応能力向上や、深海域のみならず音響環境が複雑となりやすい沿海・浅海域においても目標を探知・攻撃できることを目的としている。

目標の形状を識別し、囮との区別も行える音響画像センサーおよび、同様に囮識別に有効かつ最適タイミングでの起爆が可能なアクティブ磁気近接起爆装置が搭載される。

本魚雷の開発に当たり89式魚雷の部品を活用するとあり、動力機関も踏襲している。使用燃料は試験時にオットー燃料IIを採用している。

魚雷は、目標を直撃したときでけでなく、目標の近くを通った時にも爆発する必要がある、このため磁気起爆装置が付いている。これまでの起爆装置は目標の艦艇から生じる磁気を感知して爆発する仕組みだった。これに対し「アクテイブ磁気起爆装置」は、自らが磁気を出し目標の艦艇により磁場が変わることを感知して最適タイミングで起爆する装置。これで「18式魚雷」は正に一撃必殺の長魚雷となった。
イメージ 11

image104
(防衛装備庁)アクテイブ磁気起爆装置を搭載する18式長魚雷の概念図。
平成31年度に開発費94億円が計上され、三菱重工が開発・製造を担当、初号機は2022年(令和4年)2月に納入される。
image106

18式長魚雷に搭載する「アクテイブ磁気起爆装置」。写真の黒い四角部分が磁気センサー。このセンサーは小さな囮/デコイなどは検知しないし、海底や海面からの残響などの影響を受けないので目標を確実に捕捉できる。



 ②:VLS Vertical Launch System(垂直発射システム)

潜水艦の垂直ミサイル発射システムの研究に297億円
日本政府は、2022年12月に発表した「防衛力整備計画」に、垂直ミサイル発射システム(VLS)を搭載した潜水艦を開発することを盛り込んでいます。
image067
水中垂直発射総理の研究イメージ(画像:防衛省)
image070
川崎重工次期潜水案のコンセプト案「そうりゅう型」「たいげい型」と異なり中央構造物(セイル)がやや船体後方に移動している(画像川崎重工)

③潜水艦発射ミサイル
  • 魚雷発射管(水平発射)・・・既存の潜水艦の装備。直径533mm
  • VLS(垂直発射)・・・将来の潜水艦に装備予定。大きさは未定

 なお防衛省は潜水艦用のVLSれとは別に魚雷発射管から発射できるタイプのミサイルも開発する現在開発中の12式地対艦誘導弾能力向上型は大型化した上にステルス形状化の為に角張った断面をしており、直径533mmの円筒に収まりそうにありません。

  • 魚雷発射管から(水平発射12式地対艦誘導弾能力向上型の形状を変更(推定射程:200~400km以上))ハープーンHarpoon
  • VLS(垂直発射)から17式艦対艦誘導弾の水中発射型、形状変更は不要(推定射程:400km~1500km以上)トマホーク (BGM-109 Tomahawk) 島嶼防衛用高速滑空弾(性能向上型推定射程:3000km以上)
  •  現時点では「潜水艦発射型誘導弾」がどのような設計になるのか詳しい説明はありません。17式艦対艦誘導弾は12式地対艦誘導弾(通常型)から派生した対艦ミサイルなので、どちらにせよ12式地対艦誘導弾の派生型となりそうです。島嶼防衛用高速滑空弾についても検討されると思う。
  • VLS(垂直発射)から07式垂直発射魚雷投射ロケットも検討されると思います

 巡航ミサイルの水中発射型はミサイルを丸ごとカプセルに収納して射出して、海面でカプセルを脱ぎ捨ててブースターに点火して上昇しますが現時点では不明。

④TCM潜水艦魚雷防御システム
image055

散水上艦や敵対潜機から発射されて接近する魚雷を防御するために潜水艦魚雷防御システム(TCM:TorpedoCounterMeasures)が開発され、“そうりゅう’’型8番艦(2017年就役の‘‘せきりゅう”)から装備が開始されている。自走式デコイ(MOD:MObileDecoy)および発射機で構成されているTCMは魚雷防御に極めて重要であり、次世代潜水艦にも装備が継続されるだろう。


TCM-torpedo counter measure

⑤:静粛性潜水艦用静粛型駆動システム 
静粛性

image058

事業名 潜水艦用静粛型駆動システムの研究試作 

諸外国において、潜水艦を探知するソーナー技術の進展は著しく、従来は検出対象としていない雑音から探知できる可能性が高まっていることから、我が国の潜水艦においても雑音の静粛化対策は喫緊の課題となっている。そのため、本事業により、駆動装置から発生する雑音を低減する新たな方式の静粛型駆動システムに関する研究を行い、潜水艦の更なる静粛化潜水艦の駆動装置が発する雑音を低減させるため、新たな方式に変更することで、潜水艦の更なる静粛化を図り被探知防止能力を向上させる必要がある。

熱排出の課題

マイクロ原子炉による熱排出は探知リスクを高める可能性があり、熱音響的ステルス技術や冷却系統の静音化が求められます

量子センサーの課題



image097

無人機UUVとの連携
image053

イメージ 29
近年は無人機器の開発が盛んであり、軍用に限らず無人航空機(UAV)、無人水上艇(USV)または無人水中艇(UUV)のような形態で運用されている。しかし潜水艦からUSV発進・運用の必要性は低いと考えられて世界的にも実例は見当たらないようであるが、
無人機との連携が考えられている。

イメージ 28

将来的にはUUVを従え、機雷の敷設/掃海母艦となる可能性がある。本艦が機雷を水中曳航する複数のUUV艦隊を誘導し、仮想敵沿岸地域に機雷を秘密裏にばら撒くことも可能である。また危険な機雷が敷設された海域における機雷探知や掃海をUUVに任せることも可能だろう。敵潜水艦の音響情報の収取等にUUVと連携もありうる。
image060

image065

【4】29SSやその後継艦の展望 ― 原子力や核融合の可能性は?

さらに未来を見据えると、29SSやその後継艦にはマイクロ原子炉、あるいは核融合による動力の導入も議論されています。特にレーザー核融合はCO₂を出さず、放射性廃棄物もほとんど出ないクリーンな技術として注目されており、安全性の高さから再生可能エネルギーとしても期待されています。

重水素を燃料とする核融合は、海水から容易に得られるため、日本のように資源の乏しい国にとって理想的なエネルギー源とも言えるでしょう。

■ 三菱重工が提示した次期潜水艦29SSのコンセプトは、従来の常識を覆す革新に満ちています。高速・静音性・高性能センサー・先進魚雷・次世代バッテリーなど、その全てが未来の海中戦闘を見据えた設計です。
原子力や核融合については、第8章:次世代潜水艦計画総括と未来展望にて


第4章:次世代潜水艦の課題と国家戦略

日本が取り組む次世代潜水艦の開発は、国家安全保障と抑止力の根幹に関わる重要な取り組みである。しかし、その実現には高度な技術革新と同時に、構造的かつ長期的な課題の克服が求められている。本章では、次世代潜水艦開発における主要課題と、それに対する国家的な対応策について論じる。


1. 人材確保と教育制度の脆弱性

次世代潜水艦には、原子力推進や長期間の無人自律運用など、従来型をはるかに超える複雑な技術が採用される可能性がある。これに伴い、必要とされる人材のレベルも飛躍的に高まっている。

しかし現在、日本には潜水艦運用に特化した高度な教育機関が十分に整備されておらず、とりわけ原子力技術に精通した技術者や整備士、艦長級の専門職の育成体制は極めて脆弱である。これは日本が原子力潜水艦を保有していないという事情とも関係しているが、今後の防衛構想において選択肢を広げるためにも、早期に教育・訓練体制の拡充が求められる。

また、海上自衛隊の潜水艦乗員は過酷な任務環境に置かれ、精神的・身体的なストレスも大きい。若年層を中心に人員確保が難航し、離職率の上昇や訓練の長期化が現場の大きな負担となっている。

対応策としては以下が考えられる:

  • 防衛大学校や理工系大学との連携による「潜水艦技術士官コース」の新設

  • 原子力・海洋技術を専攻する大学院・研究機関の整備

  • 自衛官志望者への奨学金制度や職業訓練制度の強化

これらの制度整備によって、次世代艦艇に対応可能な人材の継続的な確保が可能となる。


2. 防衛産業基盤の空洞化とサプライチェーンの脆弱性

次世代潜水艦の建造・運用には、特殊鋼材、深海耐圧構造材、騒音抑制技術、精密電子制御など、極めて高い技術力が要求される。これらの多くは長年にわたる防衛産業の蓄積によって成り立ってきたが、近年ではその基盤が大きく揺らいでいる。

まず問題となるのは、中小企業の廃業・撤退による「技術の消滅」である。特に潜水艦用の高張力鋼や騒音吸収材、プロペラの鋳造技術などは一部企業に集中しており、民間転用が難しいことから経済的に成立しにくい。この結果、防衛装備品に必要な部品の製造が「一点依存」化しており、災害や経営破綻によって生産が途絶するリスクが高まっている。

また、熟練工の高齢化と後継者不足も深刻である。熟練した溶接工や機械加工技術者は、潜水艦の耐圧殻や静音構造の製造に不可欠であるが、若年層への技術継承が進まず、技術者の数自体が減少傾向にある。

この問題に対しては以下の戦略が有効である:

  • 防衛装備庁による「戦略技術支援ファンド」の設立と運用

  • 潜水艦向け装備を扱う中小企業に対する長期契約や設備投資支援

  • 熟練工を中心とした「技能マイスター制度」の国家的認定と継承支援

さらに、地方の工業高校や高専と連携し、防衛産業への進路誘導や研修プログラムを組み込むことで、将来の技術者層の厚みを確保することが必要だ。


3. 技術継承と産学官連携の制度化

次世代潜水艦の建造は、三菱重工業や川崎重工業といった大手造船企業の知見だけでなく、彼らを支える多数の下請け企業、そして海上自衛隊の運用ノウハウの結晶によって初めて成り立つ。だが、これらの知識・経験を次世代へと計画的に継承する制度は、いまだ十分に整っていない。

特に注目すべきは、運用現場と設計現場の「知の断絶」である。防衛産業における民間と軍の間には情報共有の壁があり、艦艇の実戦的知見が次の設計に反映されにくいという構造的課題がある。これを打開するには、産学官が一体となって、情報共有と共同研究を行う枠組みの創設が不可欠である。

具体的な制度化の方向性としては:

  • 「防衛装備イノベーションセンター(仮称)」の設立と大学・企業の共同研究拠点化

  • 技術者・整備士志望の学生を対象とした「防衛装備インターンシップ制度」の導入

  • 技術伝承を担うOB技術者の再雇用・教育機関派遣制度

さらに、企業内での「OJT(On the Job Training)」を補完する形で、外部の教育機関と連携した技能検定制度や国家認定資格制度を整備することにより、継承の可視化と制度化が進むと考えられる。

解決策の一つは大幅な
AI化による省人化だが一気に無人化することも視野入れるべきだと思う。

image027

 




AI化AI 技術の導入による艦艇省人化について・省人化艦艇の極省人化に関する研究



国家的視座の必要性

次世代潜水艦の建造は単なる艦艇開発ではなく、人材、産業、知識という国家資産の総合運用を意味する。防衛装備品の多くは民間市場での競争力を持たないがゆえに、市場論理ではなく戦略論理による支援が求められる分野である。

したがって、防衛産業と教育、研究、技術者育成を「安全保障の一部」として捉え、長期的視点から制度的支援と資源投入を行うことが不可欠である。国家がどこまで本気でこの分野に投資し、戦略的に育てていくかが、次世代潜水艦の成否を左右する最大の要因となる。

第5章:次世代潜水艦がもたらす戦略的変化

日本が進める次世代潜水艦の開発と配備は、単なる戦力強化を超えた国家戦略上の転換点を意味する。防衛装備品の中でも潜水艦は特殊な存在であり、その行動は秘匿され、姿は見えず、存在そのものが相手国の意思決定に影響を及ぼす「戦略的兵器」としての側面を持つ。image076



1. インド太平洋戦略との整合性とシーレーン防衛

日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋(FOIP:Free and Open Indo-Pacific)」構想は、単なる外交スローガンではなく、海上交通の自由を確保し、法の支配を基盤とする国際秩序を維持するという、安全保障と経済安全保障の両面にまたがる国家戦略である。その中核をなすのが、日本列島から台湾・フィリピン・インドネシアを経由してインド洋に至る「第一列島線・第二列島線」上の海上交通路、すなわちシーレーンの防衛である。



image079


従来の通常型は日本近海のチョークポイントでの待ち伏せ攻撃では絶対的な力をもつが、日本はエネルギー資源や食料、原材料の大半を海上輸送に依存しており、これらの海路が封鎖された場合、国家機能そのものが停止しかねない。南西諸島からバシー海峡、さらに南シナ海に至る海域は、中国海軍の活動拡大と重なる「グレーゾーン」地帯となっており、ここにおいて優れたマイクロ原子炉搭載の次世代潜水艦は秘匿性と継戦能力を持ち外洋で敵対原子力潜水艦潜水艦と対峙することも可能となり、シーレーン防衛も可能となるため従来の通常動力潜水艦とまた異なる価値を持つ。
image073


次世代潜水艦は、より長期間の潜航能力と高度な自律航行、戦術通信機能を備えることで、インド太平洋全域において継続的な抑止力を発揮し得る。これにより、日本は日米同盟の枠内での役割分担において、より広域な海域の監視・阻止任務を担う能力を得ることとなる。日米豪印(クアッド)やASEAN諸国との協力体制においても、日本の戦略的信頼性は一層高まると見られる。


2. 非対称戦力としての潜水艦の価値

次世代潜水艦の最大の戦略的価値は、その「見えない力」にある。潜水艦は常に水中に潜航し、敵からの探知を避けることで行動の自由を確保する。その存在が敵に認識されないことこそが、逆説的に最大の抑止力となる。これを「不確実性による抑止」と呼ぶ。



潜水艦の配備数は限定的であっても、潜航中の艦がどこに存在するのか分からないという不確実性が、敵側の作戦行動に大きな制約を与える。たとえば敵艦隊が南西諸島に侵攻を試みる場合、日本の潜水艦が展開している可能性がある海域を避けざるを得なくなるため、戦術的自由が著しく低下する。航空機や水上艦による攻撃が明白なプレゼンスを前提とするのに対し、潜水艦は「沈黙の圧力」によって敵の選択肢を封じ込める。

さらに、次世代潜水艦には最新の魚雷や対艦ミサイル、さらには将来的にステルス性の高い水中無人機(UUV)を運用する能力が搭載される可能性があり、その一撃の破壊力は通常戦力を凌駕する。これにより、日本は正面装備に劣っていても、相手に対して「コストの高い選択」を強いることができる。いわゆる「非対称戦力」としての位置付けである。


3. 日本の技術力の象徴としての潜水艦

潜水艦の設計・建造には高度な科学技術が必要である。耐圧殻の構造設計、静粛性確保のための振動制御、複雑な電装・通信システム、さらに長期間の自律運用に必要なAI制御技術やナビゲーション技術は、どれ一つとっても極めて高度な水準を要求される。すなわち、潜水艦とは「国家の技術的総力」の象徴であり、それを持つ国は自動的に「技術大国」としての信頼と威信を得る。

とりわけ日本は、三菱重工業・川崎重工業を中心とする潜水艦造船技術で世界有数の実績を持ち、「そうりゅう型」「たいげい型」に代表される先進ディーゼル潜水艦は、世界各国から高い評価を受けている。もし今後、日本が次世代原子力潜水艦あるいはマイクロ原子炉搭載型の長期潜航艦を実用化できれば、その技術的インパクトは極めて大きい。

cc有語句や

これは純粋な軍事面にとどまらず、国際社会における日本の存在感を高める象徴的成果ともなり得る。例えば、技術協力を通じてイギリスやオーストラリア、ASEAN諸国などと連携することで、日本の防衛技術輸出や標準化政策にも弾みがつく可能性がある。GCAP(次期戦闘機共同開発)やUUV共同研究といった他の先端装備分野との相乗効果も期待される。


4. 戦略的プレゼンスの拡張と「日本型抑止戦略」

日本はこれまで「専守防衛」の原則に基づき、専ら自国領域の防衛に焦点を当ててきた。しかし地政学的現実を考えれば、日本周辺の安全保障は単独で完結するものではない。台湾有事、南シナ海問題、朝鮮半島情勢など、すべては「日本の防衛」と直結している。

次世代潜水艦が可能にするのは、こうした複合的な脅威に対して「領域外での抑止」を実現することである。潜水艦は空母のように目立たず、基地のように固定されておらず、必要なときに、必要な場所で、静かに圧力をかけられる存在である。これはすなわち、日本が「動的抑止力(Dynamic Deterrence)」を手にすることを意味し、国家戦略としての柔軟性を大きく高めることとなる。

さらに、次世代潜水艦は将来的に情報戦・サイバー戦にも対応する統合プラットフォームとしての可能性を秘めており、従来の「撃つ」兵器から「情報を制する」兵器へと進化することで、戦争の形そのものを変え得る潜在力を持つ。


:次世代潜水艦は「国家の意思」を伝える装置である

潜水艦の最大の特徴は、「何も語らずに全てを語る」点にある。その存在は秘匿されているが、確実にそこにいる。その沈黙の中にこそ、国家としての意志、技術的信頼、抑止力の覚悟が宿る。日本が次世代潜水艦を本気で開発・配備するということは、単に兵器体系の更新ではなく、国際社会に対して「我々は守るべき価値があり、それを守る手段を持っている」というメッセージそのものである。

こうした視点から見れば、次世代潜水艦は単なる軍事装備ではなく、「日本という国家の信念と戦略」を象徴する国家的プロジェクトであり、21世紀の海洋国家としての地位を確固たるものにする試金石となるのである。



しかしながら潜水艦は国家防衛の中でも最も機密性の高い兵器システムであり、以下のような理由から安易な輸出は極めて困難です。


■ 潜水艦が「最高の国家機密」とされる理由

1. 秘匿性・行動様式の極秘性

潜水艦の最大の武器は「どこにいるかわからない」という存在の不確実性です。この「沈黙の抑止力」を維持するには、行動パターン、潜行深度、音響データ、航行技術、通信方法など、あらゆる要素が秘匿されていなければなりません。

一度でも設計情報や運用ノウハウが漏れれば、敵国は探知・追跡技術を適応できてしまい、潜水艦の最大の強みである「見えない力」が失われます。

2. 静粛性・音響ステルス技術の秘匿性

潜水艦において最も重要な性能のひとつが**静粛性(サイレント・ランニング)**です。これは艦体の構造、機関の振動制御、推進音、流体力学設計、消音装置などの複雑な技術の結晶であり、国家機密の塊です。

特に日本の潜水艦はこの静粛性で世界最高水準とされており、その技術が流出すれば、日本の潜水艦の「透明性」が低下し、抑止力が損なわれます。

3. 機器構成センサー・戦術情報処理装置

潜水艦には最新のソナー、魚雷管制装置、通信装置、電磁波探知・回避装置、戦術処理システムなどが搭載されています。これらはすべて戦闘情報ネットワークと結びついており、構成を明かせば自国の戦闘指揮体系も推測可能になります。


■ 潜水艦輸出が極めて困難な理由

情報漏洩リスクと抑止力低下

技術だけでなく、運用教範や実戦データも漏洩すれば、敵対国がそれに対抗するためのソナー特性や探知プログラムを開発する可能性があります。これは自国の潜水艦戦力の無力化に直結します。

防衛装備移転三原則との整合性

日本は「防衛装備移転三原則」に基づき、厳格な管理の下でしか兵器輸出を行えません。潜水艦のような戦略兵器はこれに最も抵触しやすく、たとえ同盟国であっても政治的判断が必要です。

オーストラリアへの輸出断念の実例

三菱重工と川崎重工が共同提案した「そうりゅう型ベースの潜水艦」がオーストラリアへの輸出候補となったことがありましたが、最終的には機密保持や情報管理体制の不安から日本案は選ばれず、仏案(のちにAUKUS構想)に切り替えられました。


潜水艦はその性能、運用方法、そして存在そのものが「国家戦略の根幹」に関わるため、安易な輸出は国家安全保障上、自殺行為にもなりかねません。したがって、日本が次世代潜水艦をいかに優れたものとして完成させたとしても、それを他国に売却することは非常に限定的であり、厳重な審査と政治判断のもとでのみ行われます。

第6章:装備輸出と国際共同開発の可能性

日本の潜水艦技術の国際的評価と輸出の展望

日本の潜水艦輸出は極めて困難ではあるが、日本の潜水艦技術は、静粛性、航続距離、センサー性能、ステルス性など多岐にわたる分野で世界的に高い評価を受け導入希望国は確実に増えオーストラリア、カナダ、米国、欧州、台湾などへ中古潜水艦の輸出を契機に新造艦の輸出はいずれあるだろう。特に、リチウムイオン電池を搭載した「そうりゅう型」や「たいげい型」潜水艦は、非核動力でありながら長期間の潜航能力を有し、他国の関心を集めています。

これまで、日本は武器輸出三原則により防衛装備品の輸出を厳しく制限してきましたが、2014年の「防衛装備移転三原則」への転換により、一定の条件下での装備輸出が可能となりました。これにより、インド、オーストラリア、カナダなどとの技術協力や共同開発の機会が広がっています。

無人潜水艦(XLUUV)の開発と輸出の可能性

近年、無人潜水艦(UUV)の開発が各国で進められており、いずれ無人潜水艦(UUV)だけでなく1000トンを超える潜水艦も無人化されるでしょう。当ブログでは日本に最適なのは反撃用スタンドオフミサイルを搭載可能な無人大型潜水艦(XLUUV)ではないかと思います。このXLUUVは、排水量約2,000トン、スタンドオフミサイル20~30発を搭載し、高度な自律航行能力と先進的なソナーシステムを備えることが想定されています。水中通信システムにより、陸上司令部からの発射指令を受けることが可能であり、長期間の待機任務や浅海域での運用が期待されています


海中にただ反撃用ミサイルを搭載し。ただじっとしているんのは貴重な人員を充てるのは無駄ナンセンスだ!無人潜水艦の仕事である!

このようなXLUUVの開発は、輸出市場においても大きな可能性を秘めています。
特に、非核三原則に適合する形での技術輸出が進めば、国際的なプレゼンスを高めることができます。

米海軍の無人潜水艇発射ドローン計画と国際共同開発の展望
image008
The Navy Plans To Launch Swarms Of Aerial Drones From Unmanned Submarines And Ships
Unmanned surface and underwater vehicles capable of deploying drone swarms in contested territory could be game-changing for the Navy.
【THE WAR ZONE】 JOSEPH TREVITHICK MARCH 1, 2021
image030

海軍は無人潜水艦や船からの空中ドローンの大群を起動することを計画しています。
紛争地域にドローンの大群を展開できる無人の地上・水中無人機は、海軍にとって画期的なものになる可能性があります。

米海軍はレイセオン社に小型無人航空機「コヨーテ」のバージョンを契約しました。サービスによると、特に無人の地上および水中ビーグルの開発をサポートするために、無人機の大群を起動するためのプラットフォームとして、それらを望んでいると言います。

国防総省は、2021年2月26日の毎日の契約通知で、すべてのオプションが行使された場合は、ほぼ3300万ドルと評価される契約を発表した。発表によると、海軍研究局(ONR)がレイセオンに授与した契約は、"自律的な群/ストライク-巡回兵器 "の作業をサポートするための "コヨーテ・ブロック3(CB3)自律攻撃 "ドローンのためのものだったという。

これは、「無人水上艦艇(USV)と無人潜水艦(UUV)からの運用打上げ能力を達成するための迅速な能力開発の取り組み」である。意図された作戦概念(CONOP)と戦術、技術、手順(TTP)は、海上プラットフォームからの情報、監視、偵察(ISR)と精密攻撃能力を提供することである」と契約通知は付け加えている。"さらに、USVからの大量長距離精密攻撃(HVLRPS)とUUVからの発射(HVLRPF)のデモは、革新的海軍プロトタイプ(INP)や移動式精密攻撃機(MoPAV)の進捗状況など、これまでの取り組みを活用することになります。

レイセオンのウェブサイトでは、Block 3 CoyoteがBlock 1やBlock 2のデザインをベースにしているのかどうかは明らかになっていない。Advanced Ceramic Researchは、2007年に最初のCoyoteのデザインを最初に飛行させましたが、これはチューブ発射で、2セットのポップアップ翼とポップアップVテールを特徴としています。このデザインは、最終的にレイセオンのポートフォリオに入る前に、いくつかの会社の間を行き来しました。

image016
RAYTHEON

A Block 1 Coyote.


2017年、レイセオンは新しいブロック2バージョンに取り組んでいると発表した。2018年には、米陸軍がこれらのバージョンのコヨーテを対ドローン迎撃機として購入すると発表した。その年の後半、このヴァリアントは、まだチューブ発射ではあるが、よりミサイル的な構成を持つ実質的に異なる設計であることが明らかになりました。 

image018
JOSEPH TREVITHICK

A Block 2 Coyote.

元々のコヨーテは、主に小型で低コストの諜報・監視・偵察(ISR)プラットフォームとして販売されていた。しかし、レイセオンは過去に、ブロック 1 とブロック 2 のコヨーテの両方が、他の役割の中で、特に、巡回(ロイターニング)弾として構成される可能性があると述べている。巡回(ロイターニング)弾は、従来のミサイルや他の種類の武装ドローンとの間の溝を埋める兵器の一種である。

一般的に、イスラエルが先駆的に開発し、現在もその設計・製造をリードしている「うろつき弾薬」には、何らかの形の「マンインザループ制御システム」が装備されている。これにより、操縦者は衝突の瞬間までドローンが見ているものを「見る」ことができ、飛行の終盤で微調整を行うことができるようになる。これにより、移動する標的に対しても、武器の全体的な精度が向上します。また、標的地域に無実の傍観者が突然現れた場合など、状況が変化した場合には、ほぼ最後の瞬間に攻撃を中止することができるという点でも、安全性に余裕を持たせることができます。また、多くのうろつき弾薬は、飛行中に脅威と交戦しなければ、改修や再利用のために回収することも可能である。

人工知能が主導する飛行能力や目標設定能力などの自律的な群集技術も、うろつき弾に追加されることが多くなってきている。この種の大群は、より迅速に複数の標的を探し出し、自動的に、または人間の承認を得て、広い範囲に渡って交戦させることができる。ONRは、低コストUAVスワーム技術プログラム(LOCUST)の一環として、ブロック1コヨーテの群を使った実証実験をすでに実施していることに注意してください。

米海軍は、水面下の潜水艦から無人機を打ち上げる技術の開発に成功しており、魚雷発射管から無人機を発射し、数時間にわたりライブ映像を配信する能力を有しています。 また、国防高等研究計画局(DARPA)は、小型艦船に無人機を配備し、偵察や攻撃に活用する計画を進めています。 CNN.co.jpCNN.co.jp

これらの技術動向は、日本の潜水艦技術と組み合わせることで、国際共同開発の可能性を広げるものです。例えば、日本の静粛性やステルス性に優れた潜水艦技術と、米国の無人機発射技術を融合させることで、新たな装備の開発が期待されます。

技術継承と輸出の整合性

潜水艦技術の輸出においては、技術継承と輸出の整合性を確保することが重要です。特に、マイクロ原子炉搭載潜水艦の技術は、軍民両用技術としての可能性を秘めており、災害対策や発電モジュールとしての需要も見込まれます。これにより、輸出先国との技術協力や共同開発が進むことで、技術継承と輸出の両立が可能となります。


第7章:マイクロ原子炉の戦略的可能性

三菱重工の超小型原子炉(マイクロ炉)の技術概要
三菱重工業は、直径1m、長さ2mの超小型原子炉(マイクロ炉)の開発を進めています。このマイクロ炉は、設計寿命25年間で燃料交換が不要であり、熱出力1MW、電気出力500kWを想定しています。冷却材として二酸化炭素を使用し、黒鉛系材料の高熱伝導体を介して熱を伝える全固体原子炉であり、安全性と効率性を兼ね備えています。 日経クロステック(xTECH)+1日経クロステック(xTECH)+1日経クロステック(xTECH)


【三菱重工】多様なニーズに応えるマイクロ炉の開発- 全固体原子炉への挑戦
マイクロ炉は,既存の陸上発電用原子炉と比べて極めて小型な原子炉であり,送電網が充実し ていない地域での電源や熱源の利用を目的に様々な機関で開発が進められている。黎明期の原 子力分野では,大学や研究機関向けの研究炉や極地向けの小規模な原子炉が利用されてきた。 しかし,その後は他のエネルギー源と競争できる経済性が求められ,民間利用としては大型の発電 プラントが志向されている。この流れは当面続くと予想されるが,将来の人口減少や過疎化などの メガトレンドを考慮すると,大規模な電力需要だけでなく,電力利用のニーズも変化すると予想され る。この変化に対応するためには,図 1 に示すように多様な利用条件に適合し,安全で安定した小 型電熱供給源に加え,エネルギー備蓄や多目的に使用できる原子力エネルギーの新たな利用法 に対応することが求められる。特に,過疎地や離島,山間部,豪雪地帯,災害地などの地域でのニ ーズに応える必要がある。また,海外では教育・研究目的のためにマイクロ炉を大学研究施設とし て設置する動きも見られる。そのような新たな時代を見据え,三菱重工業株式会社(以下,当社)は 多様なニーズに応える革新的な多用途モジュール式マイクロ炉の開発を進めている(1)。 
 

image006
image009

全固体原子炉の特徴 2.1 主要仕様 既存発電用原子炉では事故により原子炉冷却材が喪失した場合に放射性物質の外部流出リス クが最も高まる。この事故要因を根本から排除するために,当社の多用途モジュール式マイクロ炉 は,原子炉冷却に流体を使用せず,炉心から発電系に高熱伝導体を用いて熱を取り出す全固体 原子炉の概念を採用した。従来の原子炉は流体の冷却材を炉心に直接流して冷却するため,原 子炉冷却材に起因した事故事象への対応に多くの安全設備が設置されている。一方,本マイクロ 炉は全固体原子炉の仕組みにより,炉心に直接冷却材を流さないことから,従来の原子炉と比べ て事故に至る想定事象数を削減(2)することができる。また,仮に炉心の温度が上昇しても核反応が 自然に低下して出力が一定に安定する固有の安全特性を持つ設計としている。表 1 に示すよう に,本マイクロ炉の 1 モジュールの代表的な熱出力は 1MWt で,電気出力に換算すると約 300kWe である。これは,送電網が充実していない地域の小規模コミュニティ向けに電気や熱を供 給することを想定した出力である。また,複数のモジュールを接続する機能を持ち,電気出力はニ ーズに応じて増やすことができる。可搬型のマイクロ炉は,工場生産された後,現地に運送して最 小限の施工で運転を開始することができる。この可搬性を実現するために,本マイクロ炉の炉心サ イズは非常に小さく,直径 1m 以下,長さ 2m 以下に設計している。また,このサイズを実現するた めに,ウラン濃縮度 20wt%を上限とした HALEU 燃料(High-Assy, Low-Enriched Uranium)を採 用し,燃料交換なしで 10 年以上の安定した運転を可能としている。運転制御システムとしては,原 子炉や発電設備のプラントデータを逐次取得し,シミュレーション技術を用いて原子炉の状況を監 視することができるデジタルツインシステムの採用を目指している。この技術により,少人数での運 転や遠隔監視が可能である。さらに,仮に原子炉が事故を起こした場合でも,自動的に原子炉は 停止し,高い除熱性能を持つ高熱伝導体により,炉心の崩壊熱は自然空冷のみで冷却される。なお,発電設備は,小型かつ高効率な超臨界圧 CO2サイクルの採用を検討している。

image012
2.2 炉心概念 炉心は,図 2 に示すように,原子炉容器の中央部に配置しており,その内部には非常用反応 度停止機構が備わっている。炉心内には,燃料と高熱伝導体である個々の結晶の配向性を整え た異方性熱伝導の性質をもつ高配向性グラファイトを配置しており,その周囲には通常運転時に 使用する制御ドラムと黒鉛製の反射体を配置する。制御ドラムは,周囲の半分に中性子吸収材を 設置しており,その制御ドラムの角度調整によって炉心の反応度は制御される。燃料から発生す る熱は,高配向性グラファイトを通じて径方向に熱伝導で輸送され,高配向性グラファイトの一部 に設置した発電系伝熱管内の CO2ガスを加熱する。なお,原子炉に供給される CO2ガスはリング 状のマニホールドを介して伝熱管に分配され,炉心で加熱された CO2ガスはマニホールドで再集 約され,発電設備へと供給される。また,原子炉容器と伝熱管,マニホールド間で生じる熱変形を 吸収するためベローズ構造を採用する。 
image015
2.3 安全概念 一般的に,原子炉の設計では“止める”“冷やす”“閉じ込める”の安全要素が考慮され,本マイ クロ炉もこれらの要素が十分に機能するように設計される。まず,制御ドラムの回転による緊急停 止によって原子炉を停止する“止める”機能がある。仮に制御ドラムが機能しない場合でも,非常 用炉停止機構により受動的に中性子吸収材が炉内に挿入されることで自動的に原子炉は停止 する設計である。次に,“冷やす”機能については,発電系による除熱を基本的な冷却機能として いるが,仮に発電系の除熱が機能しない場合でも,炉心の崩壊熱は空気の自然対流及びふく射 による冷却(自然冷却モード)で除去される設計である。図 3 に示すように,原子炉容器の側面部 は真空層を持つ断熱構造になっており,炉心温度上昇時は,メルティングヒューズが溶融して開 放孔が開放し,真空層に空気が流入することで自然冷却モードに移行する。シミュレーション解 析により,炉心中心温度は有意に上昇することなく,自然冷却のみで崩壊熱が除去されることを 確認している(3)。また,“閉じ込める”機能については,燃料部や原子炉容器などで放射性物質を 閉じ込める設計である。小型かつ可搬性機能を持つマイクロ炉に対しては,核テロ対策を含む核 セキュリティについて十分に考慮して設計する必要性が提唱されている(4)。そのため,本マイクロ 炉では,核セキュリティの深層防護の考えを導入し,簡単に破壊できない原子炉構造などの安全 設計を目指している。 
image018

マイクロ原子炉の概要と利点

マイクロ原子炉は、出力が数メガワット程度の小型原子炉であり、可搬性や迅速な設置が可能な点が特徴です。これにより、遠隔地や災害時の電力供給、軍事基地でのエネルギー自立など、多岐にわたる用途が期待されています。

軍事利用における可能性

米国防総省(DOD)は、特定の軍事施設で導入可能なマイクロ炉の開発企業を選定し、安全性、セキュリティ、信頼性を備えた原子力発電の供給に向けた取り組みを進めています。 これにより、軍事施設のエネルギー自立性が向上し、戦略的な柔軟性が増すとされています。一般社団法人 日本原子力産業協会一般社団法人 日本原子力産業協会

潜水艦への応用可能性

マイクロ原子炉の小型化と安全性の向上により、将来的には潜水艦への搭載も視野に入れられています。これにより、従来の大型原子力潜水艦に比べて建造コストや運用コストを抑えつつ、長期間の潜航能力を維持することが可能となります。また、非核三原則を堅持する日本においても、マイクロ原子炉を搭載した潜水艦の開発は、技術的な選択肢として検討される可能性があります。

国際的な展望と日本の役割

マイクロ原子炉の開発は、国際的にも注目されており、英国やカナダなどが積極的な取り組みを進めています。日本においても、三菱重工業などがトラックで運べる超小型原子炉の開発を進めており、将来的な輸出や国際共同開発の可能性が期待されています。



このようなマイクロ炉は、離島やへき地、災害時の電源としての利用が期待されており、可搬性に優れることから、様々な用途への展開が可能です。
日経クロステック(xTECH)+1日経クロステック(xTECH)+1

NATO施設へのマイクロ炉の配備検討と国際的な展開

米国のマイクロ炉開発企業であるラスト・エナジー社は、NATOのエネルギーセキュリティセンターオブエクセレンス(ENSEC COE)とのパートナーシップを発表し、マイクロ炉の軍事利用に関する研究を共同で行っています。将来的には、NATO軍事施設へのマイクロ炉の配備が検討されており、エネルギーのレジリエンスと効率性、重要なエネルギーインフラの安全確保が期待されています。 一般社団法人 日本原子力産業協会一般社団法人 日本原子力産業協会

このような国際的な展開は、日本のマイクロ炉技術にとっても大きなチャンスとなります。特に、三菱重工のマイクロ炉は、可搬性や安全性に優れており、NATOをはじめとする国際的なパートナーシップの構築が期待されます。

マイクロ炉の潜水艦搭載と戦略的意義

マイクロ炉の潜水艦への搭載は、戦略的な意義を持ちます。従来の原子力潜水艦は大型であり、建造や運用に多大なコストと時間がかかりますが、マイクロ炉を搭載することで、小型で高性能な原子力潜水艦の開発が可能となります。これにより、長期間の潜航能力や高い自律性を持つ潜水艦の実現が期待されます。

また、マイクロ炉は、災害時の電源供給や離島・へき地での電力供給にも活用できるため、軍民両用の技術としての可能性を秘めています。これにより、潜水艦技術の輸出や国際共同開発において、マイクロ炉の搭載が新たな価値を提供することが期待されます。日経クロステック(xTECH)+1日経クロステック(xTECH)+1


以上のように、日本の潜水艦技術とマイクロ原子炉技術は、国際的な装備輸出や共同開発の可能性を広げるとともに、戦略的な意義を持つものです。今後、これらの技術を活用し、国際的なパートナーシップを構築することで、日本の防衛産業の発展と国際的なプレゼンスの向上が期待されます。

第8章次世代潜水艦計画総括と未来展望

日本の次世代潜水艦計画は、単なる装備更新にとどまらず、国家戦略の要となりつつあります。アジア太平洋地域における安全保障環境が不安定化する中、次世代潜水艦は日本の抑止力と海洋安全保障における重要な資産となります。潜水艦技術の国際共同開発や輸出を通じて、日本はその技術的優位性を広め、次世代の戦略的展開に向けて着実に歩みを進めています。以上のように、日本の潜水艦技術とマイクロ原子炉技術は、国際的な装備輸出や共同開発の可能性を広げるとともに、戦略的な意義を持つものです。今後、これらの技術を活用し、国際的なパートナーシップを構築することで、日本の防衛産業の発展と国際的なプレゼンスの向上が期待されます。

1. レーザー核融合とは

レーザー核融合は、強力なレーザーを燃料ペレットに照射し、極端な高温・高圧を生み出して核融合反応を誘発する技術です。この方式は、従来の磁場閉じ込め方式と比較して、装置の小型化や迅速な反応制御が可能とされ、艦船への搭載が現実味を帯びてきています。JAFCO


2. 日本における研究動向

日本では、レーザー核融合の実用化に向けた研究が活発化しています。例えば、静岡県浜松市の施設では、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギー源としてのレーザー核融合発電の研究が進められています。 TBS NEWS DIG+1JAFCO+1

また、Blue Laser Fusion社は、独自のレーザー発生方式と放射性物質を発生させない燃料の組み合わせにより、レーザー核融合炉の開発を目指しています。同社は、2030年を目処に、原子力発電所1基分に相当する1ギガワットの発電能力を持つ実証炉の稼働を計画しています。 JAFCO


3. 技術的課題と進展

レーザー核融合の実用化には、いくつかの技術的課題があります。その一つが、高出力レーザーの反射戻り光を抑制するための光アイソレーターの開発です。大阪大学レーザー科学研究所などの研究チームは、ガラス製ファラデー素子を用いた光アイソレーターを開発し、大型高出力レーザーの安定運用に貢献しています。 ile.osaka-u.ac.jp

さらに、ローレンス・リバモア国立研究所の国立点火施設(NIF)では、3Dプリンティング技術を活用した燃料カプセルの大量生産に成功し、核融合発電の実用化に一歩近づいています。 メイテック ~エンジニアリングソリューション 研究開発・設計プロのエンジニア~+1CNN.co.jp+1


4. 艦船への応用可能性

レーザー核融合の艦船への応用は、将来的に大きな可能性を秘めています。小型化が可能なレーザー核融合炉は、潜水艦や駆逐艦などの艦船に搭載することで、長期間の航行や高出力のエネルギー供給が可能となり、戦略的な優位性を確保できます。

特に、全固体電池型潜水艦との組み合わせにより、静音性や長時間の潜航能力が向上し、次世代の潜水艦設計に革新をもたらすと期待されています。


5. 今後の展望

レーザー核融合の研究は、今後も国際的な連携と技術革新が求められます。日本政府も「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を策定し、2030年代の実証を目指しています。 ENERGY FRONTLINE

艦船用レーザー核融合の実用化には、引き続き材料科学やレーザー技術の進展が必要ですが、現在の研究成果はその可能性を示唆しており、今後の動向に注目が集まっています。