タイトルは単なるダジャレですが、案外的を得たタイトルかもしれません。

ブラックボックスの中国は今まで通りだが、今までと違うのは、ようやく中国の正体を欧米諸国は知っただけだ。そうしたら、経済にまったく疎いオバマと同じく中身が何もないことは同じである。

コラム:世界経済下振れ回避の条件=武田洋子氏
武田洋子三菱総合研究所 チーフエコノミスト

 9月2日、三菱総合研究所チーフエコノミストの武田洋子氏は、米国経済主導で世界経済の緩やかな回復が続くとのメインシナリオはダウンサイドリスクが高まっているものの、現時点ではまだ変更の必要はないと指摘。提供写真(2015年 ロイター)


[東京 2日] - 米国主導で世界経済の緩やかな回復が続くとのメインシナリオに対し、注意すべき下振れリスクとして、かねてより3点を指摘してきた。中国経済の失速、金融市場の不安定化、そして主要先進国の消費回復が期待外れとなるリスクだ。

メインシナリオの変更は現時点では必要ないと考えているが、世界経済の先行き不透明感は高まっている。リスクシナリオの確率は年初想定の15%から現在は35%程度まで上がってしまった印象を受ける。

特に懸念されるのは、他でもない中国経済の行方だ。上海株価の動向よりも、基本的には実体経済がどの程度減速するのか、その減速ペースの見極めが最重要ポイントだ。

周知の通り、中国政府は2015年の年間成長率目標を7%程度に設定している。上期の実質国内総生産(GDP)成長率は7.0%と目標に沿って進んでいるが、景気の実態を敏感に反映する電力消費や鉄道貨物輸送量を見る限り、足元の実勢は7%よりも弱いだろう。

もともと過剰投資を解消していく過程で中国経済は減速していくと予想していたが、さらに6月中旬以降の株価急落で個人消費や企業マインドへの悪影響が懸念される事態となっている。中国国家統計局が発表した8月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は3年ぶりの低水準、非製造業PMIも前月から低下した。

現時点では、2015年の中国経済は6%台後半の成長率へ減速すると予想している。問題は、株安が景気をどの程度下押しするかだ。この2カ月余りで失われた株式時価総額(上海と深センの両市場合計)は30兆元に達する。これは2014年の中国の年間個人消費の1.2倍、GDPの約半分に相当する額だ。

確かに中国の家計金融資産投資に占める株式も含めた証券投資の割合(2012年時点)は5%弱と小さいが、失われた時価総額の大きさを考えれば、一定の逆資産効果や消費者マインドの悪化は避けられないだろう。また、企業経営者のマインド悪化や海外への資本流出の加速も現実問題として危惧される。

中国経済がハードランディングを回避できるかどうかは、当面、政策運営の巧拙に大きく依存することになる。中央政府の財政余力は他の主要国に比べ残されているとはいえ、地方政府の財政状況は悪化しており、大規模な景気対策は難しい状況だ。だが、景気減速懸念が一段と高まれば、これまで以上のペースでインフラ投資の執行を速めたり、中国人民銀行による金融緩和の強化措置がとられたりするだろう。

実際、人民銀行は8月25日、昨年11月以降5度目となる利下げを実施した。しかも、今回は預金準備率も引き下げた。政策金利と預金準備率の引き下げを同時に決めたのは、リーマンショック後の2008年末以来だ。こうした金融緩和策は、インフレ率低下による実質金利の高止まりにより、実体経済への直接的なプラス効果はさほど見込めないかもしれない。それでも、投資家心理へのアナウンスメント効果は無視できない。「政策総動員」によりハードランディングと呼ぶほどの失速は避けられるのではないか。

<中国株急落前から資金フローに変調>

そもそも今回、金融市場が中国リスクに過剰反応し、世界同時株安にまで発展した背景には、米国の利上げを控えて投資家が過敏になっていたことがある。では、国際金融市場は今後さらに不安定化するのだろうか。

まず、新興国市場の状況は懸念される。米国の年内利上げが意識されるなか、新興国市場全体への資金流入ペースは減速傾向にある。特に資源輸出国や経常赤字国、政治面で不安材料を抱える国では証券投資フローが流出超に転じ、通貨安も加速している。インドネシアやブラジル、マレーシアがその代表例だ。

また、新興国向けの与信残高も、国際決済銀行(BIS)のデータによれば、2015年3月末は2014年末対比で中南米向け与信の縮小が加速したほか、アジア向け与信も減少に転じている。つまり、中国の株価が急落する前から、新興国市場への資金の流れに変調が見られていた。

1997年のアジア通貨危機前と比較すれば、新興国の外貨準備はおおむね潤沢と言ってよいが、11年ぶりとなる米国の利上げをきっかけに新興国からの資金流出が加速し、世界の金融市場がさらに不安定化する可能性には注意が必要だ。

新興国経済は、中国向け輸出の減少や資源安を通じて、すでに中国減速の影響を受けている。資金流出の加速は新興国経済全体の減速ペースを強めかねない。冒頭述べたように、年初よりもそうしたダウンサイドリスクは高まっている。

他方、現時点でのメインシナリオは「世界経済は緩慢ながらも回復を続ける」であり、その最大の理由は米国経済の堅調さにある。2015年4―6月期の実質GDP改定値は年率換算で前期比3.7%増と、速報値のプラス2.3%増から大幅に上方修正された。寒波や港湾ストライキの影響を受けた前期(同プラス0.6%)から大幅に伸びを高めている。輸出が増加に転じたほか、個人消費が全体を押し上げている。

消費堅調の主因は、良好な雇用・所得環境だ。非農業部門の雇用者数は月平均20万人前後のペースで増加。失業率も5.3%と米連邦公開市場委員会(FOMC)が想定する長期均衡失業率(5.0―5.2%)付近まで改善している。今後も雇用・所得環境の改善が消費をけん引すると予想される。

ただ、現時点での蓋然性は低いものの、こうした強みが一気に反転するリスクシナリオにも要注意だ。利上げの過程で、新興国のみならず米国自体の株価が大きく下落すれば、逆資産効果や消費者マインドの悪化を通じて消費の伸びが鈍化しかねない。米国経済こそ、そのエンジンが個人消費であることから、株式市場発のショックに脆弱であるとも言える。

過去のデータから試算すると、株価が10%下落すると、消費は約0.3%押し下げられる。その意味で、金融市場の動揺が再燃しないことが、米景気拡大シナリオの前提条件だ。この点、米連邦準備理事会(FRB)の市場との対話の重要性はますます増している。

<日本経済回復シナリオに狂いはないか>

最後に日本経済について言い添えれば、4―6月期のマイナス成長の起点は輸出の落ち込みにあり、内需を取り巻く環境はGDP統計の数字からうかがわれるほど悪くはなかった。

有効求人倍率は一段と上昇し、企業の経常利益は高水準を維持。2015年度の設備投資計画を見ても日銀短観や日本政策投資銀行による調査で高い伸びが予想されており、企業は2007年の円安局面と比べて「新製品への投資」や「研究開発」に前向きな姿勢を示している。市場の動揺が収まり消費者の心理が好転し、企業が設備投資の計画を着実に実行に移せば、徐々に緩やかな回復路線に復するだろう。

だが、この回復シナリオが実現するには、今後、1)中国経済の落ち込みが想定を超えないこと、2)金融市場が安定的に推移すること、そうしたもとで、3)米国や日本の消費者心理が悪化しないこと、という3条件が必要となってくる。

3条件のいずれかが崩れれば、日本経済も大きな悪影響を受ける。すでに中国を中心とする新興国経済の減速が日本企業の生産活動に影を落とし始めている。上記3点が、日本を含む世界経済が失速を免れる条件である。



中国のマーケットは所詮中国人向けの閉じたマーケットなので、直接的な影響を受けないのだが、中国経済が崩れ出したことを世界中のマーケットは折り込みはじめた。

[ロンドン 28日 ロイター] - 世界の主要中央銀行は2007─08年の金融危機とその後の景気後退がもたらした悪影響を和らげるため、量的緩和(QE)が持つ力を信じて金融システムに潤沢な資金を流し込んできた。

先鞭をつけたのは米連邦準備理事会(FRB)で、バトンを引き継ぐ形で欧州中央銀行(ECB)が今年になって1兆ユーロ規模の債券買い入れプログラムを始動させ、日銀もまた大規模緩和を続けている。

ただここにきて「量的引き締め(QT)」とでも呼ぶべき逆の力が勢いを持ちつつある。中国が急激な資金流出から自国経済と市場を守ろうと外貨を売却し、他の新興国も追随しているためだ。

シティグループのアナリストチームの推計では、過去1年程度で見ると世界の外貨準備額は毎月平均590億ドルのペースで減少し、この数カ月間では減少ペースが1000億ドルに迫っている。

別の大手グローバル行筋は、新興国は8月だけで計2000億ドルの外貨を売却し、そのうち1000億─1500億ドルは中国だった可能性が大きいとの見方を示した。

ドイツ銀行の通貨アナリスト、ジョージ・サラベロス氏は「中国からさらに資金が流出する可能性は相当に大きい」とした上で、QTがもっと進むと懸念される点が重要だと述べた。

中国の外貨準備は世界で群を抜く規模で、大半は米短期国債や米国債などのドル建て資産。6月末時点では総額は3兆6900億ドルだった。ただ1年前に過去最大の約4兆ドルを記録した外貨準備はじりじりと減少傾向にあり、一部はドル高を受けた為替介入に回されているものの、最近は完全な資産売却が主因となりつつある。

こうした中国やその他新興国による米国債売却は大きな影響をもたらす可能性を秘めている。

シティがさまざまな調査研究をもとに試算したところでは、米国の国内総生産(GDP)の1%相当の外貨準備が減少すると、米10年国債利回りは15─35ベーシスポイント(bp)押し上げられるとみられる。

ノムラの中国チーフエコノミスト、Yang Zhao氏は、中国人民銀行(中央銀行)が7月と8月に1000億ドルに迫る外貨準備の売却に動いたと見積もっている。

同氏は「われわれの計算によると中国から7月に900億ドルの資金が流出したが、為替レートは変化しなかった。これはつまり人民銀行が1000億ドル近くの外準を売ったと推察される。人民銀行は人民元を3%安く誘導した後は、下支えのために積極的な介入を始めた。だから8月も、売却額は1000億ドル目前になっただろう」と説明した。

コモディティ価格の急落と中国などの成長懸念を背景に、新興国から資金が逃げ出している。調査と資産運用を手掛けるクロスボーダー・キャピタルによると、過去1年間に新興国から出て行った資金は約1兆ドルで、そのうち中国からが7500億ドル強を占める。

これに伴って多くの新興国の中銀は、通貨安を食い止めるために外準を使わざるを得なくなった。

一方で人民元切り下げをきっかけにした世界的な「通貨戦争」が激化するとの懸念が広がり、新興国通貨が値下がりする流れが再び強まって、ベトナムドンやカザフテンゲなどが切り下げに追い込まれる事態も生じている。


コラム:中国も陥る「国際金融のトリレンマ」
【ロイター】 2015年 08月 27日 12:32 JST

[シンガポール 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国政府は経済学の法則を曲げられたとしても、破ることはできない。巨額な外貨準備は、金利引き下げ、安定した人民元相場、自由な資本移動という3つを切り抜ける余地を同国に与えるかもしれない。

しかし、こうしたいわゆる「国際金融のトリレンマ」の克服は、中国でも手に負えないだろう。

中国人民銀行(中央銀行)が25日に追加利下げを実施した翌日、中国株投資家はそれが特効薬なのか、それとも毒薬か判断しかねているように見えた。彼らの不安は前途多難であることを示している。もし投資家が、金利引き下げなどの追加緩和はマネーサプライ増加の兆候だと捉えるなら、中国から資金をさらに引き上げる可能性があるからだ。

「国際金融のトリレンマ」とは、金融政策、為替相場の安定、そして自由な資本移動の3つすべてを同時に成立させることは不可能だとする理論だ。実際のところ、中国当局に選択の余地はほとんどない。利下げと通貨の安定を両立させたいなら、資本移動の規制強化を検討せざるを得なくなる。本土からの違法な資金流入に対するマカオ警察の強制捜査は、越境資本移動に対する規制に向けた新たな決意にもとれる。しかし、中国の資本規制緩和の流れが逆流するようであれば、人民元が国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)通貨バスケットの構成通貨として採用されることを目指す中国の試みに水を差すことになるだろう。

経済成長が回復すれば資本逃避は食い止められるかもしれないが、世界経済の冷え込みや、過剰生産能力と債務超過という中国本土の2つの問題がそれを困難にさせている。短期的に見れば、中国にとって最善の期待は自国の経済懸念が世界中の市場に反響し続け、米連邦準備理事会(FRB)が利上げをやめることかもしれない。

一方で、強いドルに対して自国通貨の安定を維持していると思わせる唯一の方法は、外貨準備を減らして人民元を守ることだ。3兆ドルを超える外貨準備高(6月末)は、中国が当面の間「トリレンマ」をしのぐには十分かもしれないが、資本流出を防ぐほどではないだろう。





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