芥田知至 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 主任研究員

[東京 28日] - 2008年のリーマンショックを挟んで140ドル台から30ドル台まで急落した原油価格はその後、2年程度をかけて100ドル台まで回復した。しかし今回は、需給面や金融政策面などでの様々な環境の違いから、その大台に戻すまでにはさらに長い年月を要するだろうと、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの主任研究員、芥田知至氏は指摘する。

同氏の見解は以下の通り。

<前回の反転局面と何が違うのか>

今後の原油相場の見通しについては、一部に早期反転を予想する向きもあるが、私はそうしたシナリオに確信を持てないでいる。

むしろ最短でも5月か6月までは基調としては弱含みか、あるいは底ばいの状態が続き、その後反転したとしても、相当緩やかなペースになる可能性が高いと考えている。

振り返れば2008年9月のリーマンショック後、同年12月に1バレル32ドルまで下げた原油価格(WTI)がその1年後には80ドル台まで戻したことから、今回も早晩同じような軌道をたどるとの見方もある。

しかし、当時は新興国投資ブームがまだ続いており、需要が拡大していくとのシナリオも健在だった。また、世界的な金融危機の克服を目指して米国から緩和マネーがふんだんに供給され、その過剰流動性を背景に、コモディティ投資ブームも続いていた。

しかし、今回の原油安局面では米連邦準備理事会(FRB)がすでにフローから見た量的緩和を終了し、年内の利上げも視野に、金融政策の正常化に向かって動き出している。日欧からの緩和マネー供給は引き続き期待できるものの、新興国経済への資金流入は、米量的緩和局面と比べれば、明らかに細ってくるだろう。加えて、過去の米利上げ局面では、新興国経済は混乱もしくは停滞するケースが多かった点にも注意が必要だ。

原油価格は地政学リスクの高まりなど突発的なイベントで短期に急騰しやすいので、確実なことは言えないが、相場には当面、上方向よりも下方向に圧力がかかりやすいと見るのが妥当ではないだろうか。

<需給改善には相当の時間が必要>

そうした見方をサポートするのが、需給の状況だ。原油価格が高騰を始めた2000年代半ば以降の変化をおさらいすれば、供給面では、北米・南米・アフリカ・中央アジアなどでの増産が特に目立った。リーマンショック直前の2008年7月に147ドルまで届いた原油価格高騰を受けて、資源開発が急ピッチで進み、その後しばらくしてから実際の供給力として大きく現れるようになってきたのだ。

一方、需要については、リーマンショック後、「4兆元」の景気刺激策に乗り出した中国を筆頭に、新興国のエネルギー消費は好調な伸びを示し、原油価格を下支えした。しかし、昨年秋口にかけて、中国経済の勢いに一段と陰りが見え始めると、10月半ば頃を境に、世界景気の減速懸念が急速に強まり、原油需給の先行きにも黄信号が灯った。

後付けの解釈になってしまうが、今思えば、需要がそれほど拡大していない割には、原油価格は高かったのかもしれない。欧州経済がデフレの瀬戸際で喘ぎ、日本経済が消費増税の影響などで4月以降2四半期連続のマイナス成長を続けるなかで、唯一気を吐く先進国経済である米国においても、ガソリン需要は伸び悩んでいた。そうした「ネガティブサプライズ」が都合よく見過ごされていた面はあろう。同様に、シェールオイルの増産が続いていたにもかかわらず、供給増要因としてマーケットは十分に織り込んでいなかったとも言える。

ただし、無理もないところはあった。イランの核開発問題、「アラブの春」以降のリビアの供給障害、あるいは昨年初めのウクライナ情勢の緊迫化、そして「イスラム国」の台頭といった地政学リスクの高まりが相次いだからだ。これらは、時間が経つにつれて、実際の原油需給の引き締めにつながらないことが分かってきた。それが昨年の後半だ。加えて、その時点で石油輸出国機構(OPEC)が協調減産に動かないという衝撃もあった。

そして今、弛んだ需給構造が急速に引き締まる状況にはない。2008年末以降の前回の反転局面では2年と数カ月程度で100ドル台(2011年第1四半期)に戻したが、今回は供給側の絞り込みがよほど急ピッチに進まない限り、大台の回復は期待薄だろう。

<かく乱要因はシェールの減産ペース>

では、原油価格は逆に底なし沼のように沈んでいくのだろうか。確かに、チャート上は抵抗線と呼べるところがなくなっている。次の参照価格は、先ほど述べた2008年12月の安値32ドル近辺となろう。そこまで落ちる可能性がゼロとは言えない状況だ。

ただし、一部に言われているように、30ドルを切って、20ドル台、そして10ドル台に下落していく、あるいは20ドル台で定着するというようなシナリオの蓋然性は低いように思える。過去20年余りを振り返れば、1990年代後半に10ドル台を割ったこともあるが、当時とは需給の構造もプレーヤーも異なる。

確かに、中東の巨大油田はトータルコストで見た損益分岐点が10ドル程度、オペレーションコストが数ドルと言われており、今の価格水準でも十分持ちこたえられる。だが、高騰した価格を前提に、2000年代半ば以降に開発された北米のシェールオイルをはじめとする他の油田は、損益分岐点がその何倍も高い。原油価格が20ドル台へ下落する前に、供給に急ブレーキがかかって、相場を下支えすると思う。

特にシェールだ。総コストから見た採算ラインは、低いものでは20ドルだとしても、大半は60ドルから80ドルだろう。従来10―20ドル程度と見られていたオペレーションコストは、原油安を背景に操業に必要なエネルギーコストが下がっているので、それよりもかなり低くなっているはずだが、いずれにせよ現在の価格だと、総コストを賄えず、新規開発にブレーキがかかり、稼働する掘削機は今後減っていく可能性が高い。

また、ロシア、ベネズエラといった、経済ファンダメンタルズの脆弱なエネルギー資源国は、現水準の原油安が続けば、経済危機に見舞われる可能性が高まる。そうした危機が供給障害という形で現れるならば、これもまた原油価格の下支え材料となろう。 

加えて、11月の総会で協調減産を見送ったOPECにしても、先に白旗を掲げるわけにはいかないが、北米のシェール減産が進めば、市場シェアを落とさない程度の生産削減ならばあると思える。いずれにせよ、需要面で大きな改善を見込みにくい2015年は、このように供給面でのゆっくりとした変化が価格形成に影響を与えていくことになろう。

ただ、私のシナリオに誤差が生じるとすれば、それは前述したシェール事業者の減産判断の程度だ。従来の油田・ガス田プロジェクトは調査から探鉱・開発、そして生産開始にこぎつけるまでに気の遠くなるような時間を要し、投資の回収期間も長期にわたった。しかし、シェールプロジェクトの一連のプロセスは対照的に、より短期で済み、投資の回収期間も短い。事業者のマインドは、従来のプレーヤーとはかなり異なる。

彼らが、思いのほか、耐え忍べば、価格にはさらに下落圧力がかかる。逆に、生産調整が前倒しで進むならば、価格反転圧力は、私が予想しているよりも、早く強く出る可能性がある。シェールは引き続き原油価格の行方を大きく左右する要因となりそうだ。
江戸時代の米相場の格言に「野も山も皆弱気なれば、阿呆になりて米買うべし」という逆張りの格言だ。反対に「落ちるナイフは掴むな」、あまり拙速に買うと怪我をするという格言もある。
中東産油国の地政学リスクを勘案すれば、産油国の政治は不安定であり、多くの中東諸国は、反政府勢力との対立により産出量が激減したリビア同様、政治リスクを抱え込んでいる。油価が長期的に低落傾向をたどるかどうかは読みにくい。今後も原油相場がこれまで同様にジェットコースター的な動きをする可能性は高いだろう。
油価はいつ反転するかもしれないということだけは頭の隅に置いておくべきであろう、要注意だ。
現在の油価水準は産油国から消費国へ年間1兆ドル超とも試算される所得移転効果を持つものであり、産油国経済に対する負の打撃は甚大である。すでに反米国家ベネズエラは経済破綻の危機に直面し、またサウジアラビアにおいても財政悪化は回避しがたい。ロシアに至ってはもはや死に体である。
油価下落は様々な波及経路をたどり世界各国に影響を与え、金融・資本市場が整備されていない新興国において金融不安が発生するリスクを高めることとなる。
だが、この原油安動きは米国が22世紀まで覇権を握る国家戦略である可能性があるとわたしは思うのである。
米国経済は6年前にリーマン・ショックに見舞われて世界的な信用危機になったものの、バーナンキ前FRB議長の「なんでもあり」の大胆な超緩和政策が功を奏して昨年後半までには実体経済は改善し、景気はデフレ経済に陥ることなく最近ではむしろインフレ懸念をもいわれる状況となってきた。
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昨年米国は10/30 QE3の終了と金融引き締めが決まった。その翌日日銀黒田総裁は黒田バズーカ2を放った。これは日米が連携した動きである。
米国がマネーの蛇口を絞めると決めた翌日日銀の蛇口が開いたのである!
その途端の原油の下落が止まらなくなり現在も下落中である。
そもそも9.11~イラク戦争~リーマンショック~超金融緩和~米国経済復活~金融引き締め~原油暴落・・・全て繋がっているのである。
米FRBはリーマン・ショック後の金融緩和策政策(QE)を一次から三次まで続けて、ついに昨年景気復活の芽を生やすことに成功した。そして、リーマン・ショック後にとられていた金利ゼロ政策を今年6月頃に解除し、今年半ばには利上げに踏み切ると宣言した。
現状、米国を除く旧主要先進国G7は発展どころかむしろ衰退気味の中にあって、経済発展は望めない状況の中にある。米国としてはこれから経済発展力の強い新興国に頼っていかねばならず、現状、米国の利上げによって新興国が経済発展に損害が発生するような米国金利の利上げはしたくないというのが米国の本心である。
米国経済はリーマン・ショック後に採られた異例の金融政策を正常な姿に戻そうとしている。米国の利上げによるドルの蛇口が閉った代わりに円とユーロの蛇口が開いたのである。
現状の世界経済は米国の考え通りで動いていると云っても過言でない状況である。米国はリーマン・ショック時から唯一の経済復活をなした国であり、現状、米国のFRBの世界経済への発言の重みは大きい。世界経済は米国が右を向けと云えば、一斉に右に向かなければならない状況である。
米国は経済・金融について国家戦略として十分に研究され、政権が代わっても一貫した政策が貫かれている。陰謀ではなく、国家戦略であると私は思うのである。
どこで行動すれば株値がどう動き、またいつ動けば為替は上昇するか、下落するか、その辺は十分心得ている。
米国と敵対するロシア・中国・ベネゼイラ経済は目下崩壊中である。

Newsweekの2015/02/03 p15記事

 国際金融の再編を狙う中国は 21世紀の「ひよわな花」か    約40年前に米政治学者が発した日本への警鐘に学ぶ中国経済崩壊論の虚実を見極める4つの論点  河東哲夫

中国が世界中で鉄道や道路建設にいそしんでいる。先進国では不動産ばかりか製造企業まで買収し、野心はついに世界金融体制の組み替えにまで及んだ。

 アジアインフラ投資銀行やBRICS開発銀行を中国主導でつくり上げようというのだ。経済史家アンドレーグンダー・フランクは著書『リオリェントアジア時代のグローバルーエコノミー』で、19世紀初頭までは中国とインドが世界のGDPの4割近くを生産していたと述べた。世界はそんな時代に戻りゆくのだろうか。

 実際、中国の勢いはすごい。アフリカのアンゴラやスーダンなどではインフラ建設を餌に原油利権を次々に取得。パキスタンではアラビア海の入り口近くのグワダル港を整備し、高速道路で新疆地方と結ぼうとしている。中央アジアでは融資を連発して「シルクロード・ベルト」経済圏をつくると豪語する。ニカラグアでも「第2パナマ運河」を建設して、アメリカの影響下にあるパナマ運河を回避しようとしている。ギリシヤのアテネの外港ピレウスでは海運企業・中国遠洋運輸が2埠頭を租借して対EU輸出の拠点にする。

 製造業でも聯想(レノボ)がIBMのパソコン部門を買収し、浙江吉利控股集団はボルボを買収している。通信機器大手の華為技術(ファーウェイーテクノロジーズ)も技術水準は中程度ながら低価格で世界市場を征圧。

ボストンでは中国北車集団が同じく低価格攻勢で地下鉄車両の大量受注にこぎ着けた。
携帯電話の小米(シヤオミ)科技は、設立後わずか4年で中国1位のシェアを獲得し、サムスンの経営を脅かしている。中国の縫製企業も低賃金労働者を求めて、カンボジアやバングラデシュに展開している。ただ中国の経済は欧米とは違って、政治的な原理で動いており、同じ目で見ていると判断を誤る。

目に付くボロは多いが

振り返れば日本が高度成長のただ中にあった72年、アメリカの政治学者ズビグニュー・ブレジンスキーは『ひよわな花・日本 日本大国論批判』で、日本の成長はもろくいずれ崩れると述べた。同じくブレジンスキー流の意地悪な目で今の中国を見ると、目に付くボロはいくつもある。

■内向きのインフラ建設 
中国の外国でのインフラ建設は公共事業の海外版にすぎない。中国からの資材と労働者ばかり使うから、現地で感謝されない。
■まがい物の国際銀行
中国の対外融資は既に商務部、財務部その他省庁が互いに調整せず、相争っている。そうしたなかで国際金融機関をつくっても、中国政府から十分な資金は出ないだろう。BRICS開発銀行はロシアやインドなどとの主導権争いで前途多難だし、アジアインフラ投資銀行も北京の本部は各国理事が常駐しない、まがい物。アジア開発銀行ほどの資金規模と声価を得ることはないだろう。
■不自由な通貨 
「人民元の国際化」を掲げるにしても、中国が巨額の貿易黒字を続けて元をため込んでいる限り、国際市場に潤沢に回らない。しかも資本取引まで自由化すれば、元は投機の対象となって、中国の経済・金融に悪影響を及ぼすだろうから中国は二の足を踏む。
■政治闘争の余波 
最近は日本やドイツなどとの合弁自動車企業などで、中国側責任者(実質的な社長で、多くの場合その人事は共産党の支配下にある)が突然更迭されることが増えている。習近平国家主席一派が国内の利権ポストの総ざらえを始めたに違いないが、これでは中国と安心して取引できない――。

 とはいえ、かつてブレジンスキーを真に受けて、日本株を買わなかった者がその後どれだけ後悔したか。今の中国も01年にWTO(世界貿易機関)加盟後の00年代、外国からの直接投資や貿易黒字急増で、毎年20兆~30兆円の外貨が流人した。小金を持っていることは確かだ。
 まずは中国の崩壊を待つよりも、いかに利用するかを考えたほうがいいのではないか。ただし、用心は欠かせないが。 

中国の強さと脆もろさ 
私はまったく意識していなかったが、スイスフランにリミッターがついていたことは知ってはいたが、具体的なことは意識したことはなかった。

原油安からスイスフラン高ユーロ安を誘導する金融政策など米国でなければ思いつかない。世界の誰もが忘れかけていたスイス中銀の上限撤廃による市場の混乱や、原油価格のわが身に及ぶ限界を見定めて、米金利が2%を割り込んだ水準で定着させるところで止めるなど、他の国でとてもそんな計算をできるものではない。

スイスフランの今回の施策で大きな痛手をこうむったのは中国とロシアである。米国の利上げ後、世界経済(要するに新興国を含めた世界経済)が米国の掌の上で踊らされつつある。米国は世界経済を完全に掌握し22世紀になっても覇権を他国に譲るつもりはないようだ。
現状、利上げによって損害が発生する可能性が高いのがEUを中心とするユーロ経済である。ユーロ経済が現状立ち直りが一番遅れている中にあって、米国のドル高によってその恩恵を一番受けている状況にあるにもかかわらずドイツの反対によって「量的緩和政策」が進展していない状況にあることが、米国政府とFRBの一番苦く思っていた点である。
米国は景気拡大が進み、デフレどころかインフレが心配される状況になってきていることを米政府は昨年後半、非常に苦々しく思っていた。それもドル高という米国の経済的恩恵を一番受けているドイツ経済が、ぬくぬくの状況を変えようとしない姿は何としても断ち切らねばならない。 ドイツが態度を変えない限り、リーマン・ショック以降の世界経済のイレギュラーな姿は一つも変わないとみた米国はECBでの金融緩和を確実にするためドイツたたきの含みを込めスイスフランのリミッター解除を工作したのではないだろうか。スイス国立銀行(中央銀行)もスイスフランの上昇を抑えるために対ユーロで設けていた1ユーロ=1.20スイスフランの上限を撤廃すると突如発表した。
スイスフラン売りユーロ買いポジションを立てていたロシア・中国・ユーロ諸国は米国の言う事を聞かねばならない状況となった。
 世界経済は昨年後半からリスクオフの状況にあった。もし、ECBの大規模な量的緩和決定がなかりせば、現状の世界経済はリスクオフの状況にあった。思い返せばリーマン・ショック後の世界的信用危機の時も、やれギリシヤ危機がどうなのかと云ってなかなか経済の動きが決着しなかったが、世界的な信用危機もユーロが危機を回避しようと合意したことで危機が終わる流れとなったが、今回もユーロが合意したことで危機は去ったようだ。欧州には中心的な経済の指導者がいないことが癌である。米国の強引とも思われる経済の危機指導があって今回も世界経済は落ち着きを取り戻した。いずれユーロ経済も共通の財政を導入しなければならない時が訪れるであろう。
原油を中心とするエネルギーの暴落である。さらに、リーマン・ショック後に上昇して大きな資産形成した物が下がり、逆にリーマン・ショック後下がった物が上がるという逆転現象である。米国にドルが帰ってきたことによって米国の経済的な力が回復したことで、米ドル中心に動く経済が復活したことである。
今回のやや強引とも思われる原油価格の低下、欧州の量的緩和などもドル高を維持するための動きである。リーマン・ショックで分散されたドルを米国に戻す政策がとられ、これから2020年までは米ドルの安泰時代が完全に築かれたようである。
リーマン・ショック後あれよあれよと経済大国となってしまった中国とロシアは見る影もないような状況となってきた。欧州中央銀行(ECB)の予想を上回る大規模の量的緩和決定を契機に、世界の市場はリスクオフの市場から再びリスクオンの兆しが見えてきた世界の株式市場もさすがに一息ついた格好であるが、痛めつけられてしまった市場では積極的に事業を展開すると痛い目にあうという空気が生まれ、先行きには不透明感が感じられる状況にあり、各国の市場には積極的に出たがらない空気が生まれている。
米国がたれ流したマネーを戻したとはいうものの、日本とユーロの量的緩和は半端な額ではない。今年から来年と緩和が続いていけば市場にばらまかれるマネーの量は相当大きな額になる。
それに加えて米国の景気が落ち込まず、足元の底堅さが維持されれば金利は上昇することは間違いなく、日欧の量的緩和が進めば金利が上昇することは間違いなく、米国の金利は間違いなく上昇する。利上げは過去の例からすれば間違いなく金利上昇が正当化され、最近起こっているリーマン・ショックによって下がった金利は間違いなく上昇する形となるだろう。
米国のFRBは世界経済を現在思うがままに動かせる経済力をつけてきた。最近のリーマン・ショック時にたれ流されたドルの米国への里帰りの圧力からみても、米国は2-3年後の完全な経済の復活に自信を持てたとみている。今回のユーロ国に量的緩和を履行させた自信でドルの強さをすべての面で協調してくるだろう
原油が下がった理由は一に需給バランスだろうが、台頭するイスラム国叩きの意味合いもある。一説にはサウジが米国のシェールオイル叩きの為に原油安だと情報操作されているが、真相は今のところ不明だ。
サウジのターゲットがシェールオイルに対するシェアの維持ではなく、「イスラム国」に打撃を与えるためのような気がします。
「イスラム国」の勢力が衰えないのは占領した地域の油田からの収入という財政的基盤があるからだと言われています。テロとの戦いにおいての常套手段は、「資金源を断つ」ことです。もし、サウジが「イスラム国」の弱体化を狙っているとしたら、中東産油国の原油生産コストは30㌦台だといわれているなかで、原油価格が40ドル割れ寸前だからといって直ちに生産調整に転じる可能性は低いと考えなけれならない。サウジが減産しないという決断には、当然米国の意向も反映されている。
昨年8月に米国はシリア領内の「イスラム国」に対する空爆に踏み切りました。しかし、その効果は限定的だと言われています。シリア領内の「イスラム国」に対する空爆の成果がなかなか上がっていなかった。
オバマ大統領にとって、米国が地上軍を派遣し本格的な戦闘に巻き込まれることを避けつつ、「イスラム国」を弱体化させるには「資金源を断つ以外にない」と考えるのは、ある意味当然の選択です。副産物としてロシア経済の弱体化も図ることが出来るという点では一石二鳥だ。
更にQE3終了により金融政策による景気浮揚効果にこれ以上の期待がかけられなくなった今、石油価格の下落は景気浮揚のために有効な手段です。原油価格の下落はインフレ率の低下要因になりますが、雇用環境が改善しているなかではそれを上回る景気刺激効果も期待できます。FRBが来夏にも利上げに動くと目されているなかで、原油価格下落によるインフレ率の低下は市場金利の上昇を抑えますから、金利上昇に伴う景気抑制効果を緩和することも期待出来ます。
資金で締め上げられたイスラム国が今回の法外な身代金要求に繋がったのだろう。
現状の米国景気の拡大化が続状況の中で、日本に続いてユーロの大緩和が始まって流動性資金が市場に大量にばらまかれるのであるから、基本的にはバブルが始まったと思った方がよさそうである。私が現役の時代にもなかったバブルが訪れる可能性がある。昭和38年頃のバブル到来の時に株と土地を持たないやつはバカだと言われた。これだけの大量の流動性資金がばらまかれたことを考えると、上がるものは株式しかないという時代が訪れる。さらにドル高時代は続という考えから、株以外にはドル関連の商品しかないということになる。
日本はこれまで円安によりエネルギー資源の輸入コストが増大したことなども受けて、2011年以降、貿易収支が30年続いた黒字から一転して赤字へと転落したが、この逆オイルショックはまさに天佑とも言えよう。それでなくとも輸入物価の上昇に伴い増大していた国民の負担感は軽減されることになる。
一方、コア消費者物価指数(CPI)に対して油価下落は当然、押し下げ要因となる。すでに11月のコアCPI(消費増税の影響分を除く)は0.7%に下落しており、このまま原油安が続けば、日銀の「2%目標」はますます遠くに霞んでしまう。
ならば、生鮮食品を除くコアCPIからエネルギーも除いたコアコアCPIへと指標を変更すれば良いのではないか、との議論も聞かれる。しかし、それはゲームの途中でルールを変えるのと同様にアンフェアであり、黒田日銀が採用するとは考えられない。2015年度を中心とする期間に2%程度に達することを目標とする限り、今夏には追加緩和策が打ち出される可能性が高い。エネルギーの大半を海外に依存する日本の貿易収支に対する影響も大きい。財務省貿易統計によると、2013年の日本の輸入額は81.2兆円(輸出69.8兆円、貿易収支赤字11.5兆円)とこれまでの最高だった2008年(78.9兆円)を上回った。
現在の逆オイルショックがいつまで続くか不明だが、ガソリンなどエネルギー関連商品の下落は国民の購買力を増やすこととなり、米国では大型車の売れ行き好調などその兆しが見られる。ガソリンに対する税率が高い日本ではそのような動きは読みにくいが、景気浮揚の引き金になる可能性を十分に秘めていると言えよう。