アナトール・カレツキー
[9日 ロイター] 米株価が今の局面で初めて史上最高値に迫った2カ月前、私は「株式市場の腰が定まらなくなる」ことに関する危険性を警告した。つまりそれは、持続不可能な高値で株を買う不安と、もし株価が上がり続ければもう今の値段では二度と買えなくなるという恐怖感が合体した状況のことだ。http://www.uniqlo.jp/uniqlock/swf/blog_small.swf?user_id=Bo4uxIuSX6BfwXZC世界的にリスクオフ相場、グレートローテーションで米国国債からリスク資産へ、世界的な金利低下は20年相場がなかった東証に世界のHotマネーが流入してきているようだ。短期の外資マネーだけでは中長期的な投資家も日本株を投資していると聞く。
当時、S&P総合500種指数.SPXはまだインターネットバブルがはじけた2000年3月以降形成されていた取引レンジの上限付近で行ったり来たり。株式市場の次の大きな動きが、13年間のレンジの中心に向かって反落していくか、それとも大幅に上昇して最高値を更新していくかは知りようがなかった。
2カ月前、一方にあったのは、米経済の見通し改善と、昨年末の政治状況からは、S&P500種指数が、2000年につけた高値をうかがう展開になった07年終盤時点と比べて、レンジを上放れする可能性が大きくなったことがうかがえたという事実だ。07年終盤といえば、サブプライム住宅ローン問題が始まったばかりで、ジョージ・W・ブッシュ氏がまだ大統領をやっていた。
他方で欧州中央銀行(ECB)の危機は過去最悪とみなされ、中国経済は減速しつつあると見受けられた。企業利益の伸びが止まり、投資家は2000年と07年に株価が同じような高水準になったことで市場に吸い寄せられた後、甚大な被害を被った経緯をよく覚えていた。
こうした2カ月前のジレンマを解消する確かな方策はなかったし、今も存在しない。金融市場の価格は常に、ともにそれなりの妥当性を備えた強気と弱気の見通しの均衡点だからだ。
ただし市場の動きが、時折答えを示すことがある。そして今週はそうしたケースに当てはまるように思われる。予想を大きく上回る4月米雇用者数が発表された3日以降の1週間で、S&P500種指数は2000年と07年の高値が上限となっていた13年来のレンジから4.0%強も上回った。株価のレンジ上放れは、その後のダウ工業株30種.DJIやウィルシャー5000指数などの動きでより確かになった。
さらに他国のほどんとの株価はなお2000年と07年の高値より随分と低い水準にとどまっているとはいえ、日本株はロケットのごとく高騰し、ドイツのクセトラDAX.GDAXIも米株の上げに劣っていない。
だからといって株価が上がり続けるわけではないが、過去の記録からすれば、足元の強気相場は株価上昇余地がほんの数%程度にとどまるものではないことを意味している。今や13年来のレンジをブレークしたので、歴史的なパターンでは元のレンジには戻らず、さらなる大幅な上昇局面が到来することが察せられる。私はこうした見方を2カ月前に詳しく説明したので、ここでは簡潔に繰り返すだけにしよう。
過去100年間で、米株価(S&P500種指数とその前身のベンチマーク)が長期間続いたレンジから3%以上も上放れたケースは8回あった。このうち、その後数年で株価が2倍、3倍というような大幅高となったのが7回もあり、唯一の例外はS&P500種指数の上昇率が15%にとどまった局面だった。こうしたレンジブレークが起きてから少なくとも半年の間に相応の値下がりが起きたケースはなかった。
もちろん過去の経験が必ずしも、将来の値動きの指針になるわけではない。実際に経済学者は総じて、チャートを使って市場の過去の動きを分析しようとする人々を、昔の占星術師のように、賢明ではない投資家の迷信につけこんでいるとしてまともに扱おうとしない。
しかし真っ当な投資家がその大部分を占めるチャートに基づくテクニカル取引が経済学者によって完全に合理的だと考えられているという事実を別にしても、今週の株式市場の値動きが長期的な強気相場の始まりと、13年間続いたレンジ相場の終えんを示している可能性がある、と信じるだけのいくつかの根本的な理由がある。
第一は、時間の経過それ自体だ。株価が1990年代終わりごろのように過大評価されると、水準調整と日柄調整を経るのが一般的。マイクロソフト やインテル 、アマゾン といった銘柄は、2000年3月の株高のピーク時には非常識なほど割高に映った。それから13年間で収入や利益が伸びてとうとう熱狂的な期待値に追いついたことで、かなり割安になった。
第二は、日米の政治状況と景気サイクルの改善が鮮明で、中国と大半のアジア諸国の成長率は高水準で安定し、もはや南欧の停滞は90年代の日本の停滞に比べれば世界経済への影響度が小さくなるかもしれないという点だ。
最後に挙げるのは、先週論じた構造要因の強弱バランスの変化。現在はだれもが長期的な経済の課題を十分に承知している。これは08年の金融危機以前は投資家が気にとめずに危険な目にあったもので、高齢化や持続不可能な債務、医療費の増大などがある。
これに対して金融危機の間にあっさりと忘れ去られたのは、危機前には投資家や企業経営者の胸を躍らせた経済に存在する長期的なチャンスの方だった。つまり、世界市場に数十億人の新たな消費者や生産者が加わったことや、資本主義と自由貿易をめぐる世界経済の再構成、電子機器が提供する新製品やサービス及び効率性、バイオ科学、非従来型エネルギーの登場などだ。
長期的な流れとして、(私が「資本主義4.0」で3年前に先走って示唆したように)こうした成長促進要因が強く働く方向に動きつつあるかどうかについては、だれも確言できない。それでも確かなのは、金融市場はいつも、大半のエコノミストや政治家、投資家よりもずっと早く経済環境の変化を察知するということだ。米株式市場で強気相場が続くさまざまな理由が判明するまでに、大抵は相場に乗り遅れてしまう。
規模的には海外投資家の存在が大きいが、国内では個人マネーが日本株投信に流入していることに伴い投信も買っている。決算を越えて国内の機関投資家からの売り圧力が緩和していることも、株価上昇の一因になっているようだ。
ゴールデンウィークの日本の投資家がいない間に、ヘッジファンド勢が「鬼の居ぬ間」に日本株や円を処分しまくるSell in May「5月波乱説」は今年については完全に吹き飛んだ!
私も米国や欧州、さらに中国の経済崩壊の予兆からSell in Mayを意識した。今年も波乱と考えるのはノーマルな考え方である。
世界のマネーは「リスクオン」の時代においては弱気なコメントが流れれば市場はその弱気コメントに順応できる時代であった。株式投資は損を拡大させる投資でしかなかった。
アペノミクスがなくても円/ドルは90円を目指す展開であると私はこのブログで書いていたがやはり安倍総理の登場は大きい。安倍総理はレーガノミックスで米国を復活させた米国のレーガン大統領の日本版となる可能性がある。
アメリカの第40代大統領ロナルド・レーガンはベトナム戦争以降自信を無くし凋落し続けstagflation(スタグフレーション=不況下におけるインフレ現象)に陥った米国経済をReaganomics(レーガノミクス)と呼ばれる経済政策と「強い国家づくり」を推し進めた。愛国心を強調し米国人に矜持(自信と誇り)を復活させるため、スターウォーズ計画などソビエトに対抗し軍備増強を強化し米国の経済構造を製造業からサービスや金融業中心に一変させた。
レーガノミクスは実に巧妙だった。当初強いドルを目指すとして、ドル高政策を行い米国内の製造業産業を淘汰させた。その上で今度は1985年のプラザ合意で円高ドル安政策に転換し、米国の経済復興を行った。ある意味では日本経済叩き戦略でもあったのだ。
Abenomics(アベノミクス)はリーマンショック後不当な円高により日本企業の競争力を削いできた為替レートの正常化に成功したといえよう。
この円高は生き残った日本企業を筋肉質に変えている。100円の大きな壁を突破したことでさらに円安が加速するとの見方は強い。1ドル=120円も通過点にすぎないかもしれない。円安再加速は輸出産業に本来の実力を発揮させる効果を生む。9日公表された米新規失業保険申請件数は32万3000件と、08年1月以来の低水準となったことで、米経済への安心感からドル買いの動きが強まった。
アベノミックスは通貨安を武器に攻勢してきた韓国や中国企業は一段と窮地に立たされることになる。今後ドル高になることは必至で、韓国も中国も為替のペッグ制を止めればいいのだろうが、おそらくそれもしないだろう。韓国の朴槿恵大統領や中国の習金平は必死になって日本を非難している。
GW前、靖国神社の例大祭に大々的に超党派の議員が参拝した。日本の中国や韓国の代理店の朝日新聞や左翼マスコミ・エージェントそのものである、ネットユーザー達は安倍総理をウルトラナショナリストと書き立てる。
日本が歴史を糺すことは当然であると思うのだが、ケリーを国務長官にした米国が中国との関係改善を模索している中、米国に安倍総理をナショナリストであると烙印を押される危険性を感じていた。
米議会調査局は8日までに、日米関係に関する報告書を発表し、安倍晋三首相の歴史認識やそれに関連する発言は「東アジアの国際関係を混乱させ、米国の国益を損なう可能性があるとの懸念を生じさせてきた」とする見解を掲載した。懸念は的中した。もし、米国の支持がなければアベノミックスは失速してしまう懸念があった。今年4月下旬まで急ピッチな円安に株価は合わせる形ですごい勢いで上昇を続けた。こんな状況はいつまでも続くことはない、1ドル=100円を突破できず一旦調整ではないだろうかと私は予測したのだが・・・・・Sell in May「5月波乱説」は杞憂であった。
米国の超金融緩和に続き、欧州も超緩和に転換し、日本も超緩和政策であるマネー政策の「リスクオフ」の政策に転換し日本の景気動向の流れは変わった。
5月3日に発表された4月の雇用統計では、13万8000人増と想定以上の改善で米国の景気実体は強いとの観測が強まりダウは1万5000ドル台を回復した。
米国FRBは昨年後半2016年央まではQE3を続けて超低金利を続けていくことを発表し、住宅の復活を超低金利によって拡大化し、さらに2016年中に輸出大国へと米国を変身させることを発表している。米国の景気は一般的に市場で言われているような悪い状況になく、実体景気は年後半から来年央までに超金融緩和の出口戦略を打ち出さなければならないような状況となっている。米国が予想より早くQE3を打ち止めにして超金融緩和を止めれば一段とドル買となる。円安によって企業業績は着実な業績好転が予想されている。
日経平均株価は今年5月末の株価が月初の値を上回って月間でプラスとなれば、1980年代以降で初めての10ヵ月連続上昇となる。アペノミクスと黒田日銀総裁による異次元緩和は今まで日本が経験したことがない異次元世界であり、安倍政権は参院選を睨んだ追加政策成長戦略である規制緩和を実施しなければならない。それに加え2014年3月の企業業績見通しは好調で輸出企業の業績拡大期待は大きくなる一方であるため、いたずらに米株式市場の格言などに惑わされて株を売ってはいけなかったのである。現状では株価を売るどころか買い増しを続けていかなければならない状況である。
ここはSell in Mayが無い異次元世界なのかもしれない。