2013.9.30
ハーヴァード大学とMITのチームが、質量をもたない光子を相互作用させ、結合させて「分子」を形成することに成功した。量子コンピューティングへの応用が期待されるほか、将来的には光を使って3次元構造が作れるようになるかもしれない。
ハーヴァード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)の物理学チームが、光子を結合させて「分子」を形成することに成功した。これまでは純粋に理論上のものだった、物質の状態だ。
「われわれが知る光の特性のほとんどは、光子が質量をもたず、相互作用しないことに由来する」と、ハーヴァード大学で物理学を研究するミハイル・ルーキン教授は述べる。「今回われわれは特殊な媒体を作りだし、その中で光子同士が強く相互作用し、それによって質量をもつかのように振る舞い、結合して分子を形成させられるようにした。このような光子の束縛状態(bound state)は、以前から理論上では議論されていたが、これまで実際に観測されたことはなかった」
研究チームは、真空室に、金属元素であるルビジウム原子を満たし、絶対零度近くまで冷却した(原子を、ほぼ静止状態にした)。そしてこの原子の雲に、ごく弱いレーザーを使って光子を照射した。原子の雲に入ると、光子はエネルギーを失い、劇的に減速した。
ふたつの光子を一度に照射すると、雲を通り抜けて出てくるときに、結合してひとつの分子を形成していた。これは光子が、雲の中で通り過ぎる原子と、エネルギーを交換することによって生じる。
「量子情報を運ぶ上で、光子は現在、考えられる限り最良の手段であるため、今回の成果は、より大きな枠組みでわれわれの研究に役立つものだ。これまでは、光子は相互作用をしないということが障壁になっていた」
光子の相互作用を可能にする今回のプロセスは、量子コンピューティングの開発や、従来のコンピューターの消費電力問題への応用等が期待される。将来的には、光から、結晶のような3次元構造をつくりだすことも可能になるかもしれない。


スター・ウォーズのライトセーバーやガンダムのビームサーベルが実現するかもしれない!
9月30日光を波ではなく光を分子を形成することに米マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学の研究チームが基礎原理の実験に成功とのニュースが科学誌サイエンスに発表された。光は波(波動)としての性質と、粒子としての性質を同時に併せ持っている。しかしこれまで仮説の中にだけ存在していた光物質が現実に観測されたのは初めてである。


「光は粒子なのか?それとも波なのか? 」 この問題は20世紀前半まで、大きな問題として科学者たちを大いに悩ませた。なぜなら、光が波であるとしなければ説明できない現象(たとえば光の干渉、分光など)と、光が粒子であるとしなければ説明できない現象(たとえば光電効果など)が存在していたからである。
光を構成する光子は、一般的な物質のように検知可能な質量は持たず、互いにくっつき合うこともない。レーザー光線を交差させれば光子は互いの間を突き抜ける。
スターウォーズのライトセーバーのように鍔迫り合いは現実的ではないと思った。
「光は粒子でもあり波でもある。粒子と波の両方の性質を併せ持つ、量子というものである」とされるようになり、「光は〈粒子性〉と〈波動性〉を併せ持つ」とも表現されるようになった。
しかし実験で作り出した光粒子は、従来の光の挙動と異なり、ライトセーバーのような性質を持つという。
金属の一種であるルビジウムの原子を真空空間に送り込み、ここで形成された金属の雲をレーザーで絶対零度に近いマイナス約268度まで冷却して、原子をほぼ静止状態にした。この原子の雲に光子を照射すると、通常の光のように突き抜けることなく、一般的な物質と同じように原子に衝突。この過程で光子が減速し、互いにくっつき合って分子を構成した。
物質化というより凍らせたような気がしますが、いずれは光の結晶を作り出すことも可能になるかもしれない。





この観測結果が得られたのは、スイス・ジュネーブ郊外にある欧州合同原子核研究機関(CERN)の「OPERA実験」。ニュートリノ(ミュー型)を加速器という装置で打ち出し、約730キロ・メートル離れたイタリアのグランサッソー地下研究所へ地中を通して飛ばした。
ミュー型ニュートリノの速度が光速を超えたとの発表に、東京大学宇宙線研究所の鈴木洋一郎教授は驚きをあらわにした。基本原理とは、アインシュタインが1905年に発表した、有名な特殊相対性理論。20世紀に物理学が急発展する土台となってきたこの理論は、「質量を持ったものは光速を超えることができない」と結論づけているのだ。








宇宙に満ちているはずなのに、まだ誰も観測したことがない謎の「暗黒物質」をとらえるため、東京大宇宙線研究所が岐阜県飛騨市の神岡鉱山地下に新設する装置の心臓部となる検出器が6日までにほぼ完成した。
宇宙全体には、既知の物質の5~6倍に上る質量の暗黒物質が存在すると考えられている。地球には1平方センチ当たり毎秒10万個ほど降り注いでいるらしいが、可視光や電波、エックス線などを出さないため、従来の方法では直接観測できず、正体は分かっていない。
観測装置は「エックスマス(XMASS)」と呼ばれる。その中心が、直径約80センチのミラーボールのような形をした検出器。わずかな光もキャッチする超高感度の光電子増倍管642個をほぼ球形に並べたものだ。 この検出器を、零下約100度の液体キセノンを詰めた金属容器に密封し、さらに容器ごと純水を満たした直径10メートル、高さ10メートルの円筒形タンクの中につり下げる。液体キセノンの原子核に暗黒物質がぶつかった際に発せられるかすかな光を増倍管でとらえる。装置の調整を経て、8月ごろには本格観測を始める。

宇宙が何でできているかを調べてみると、われわれが知っている、陽子や中性子など”目に見える”(観測されている)物質は全体の約4パーセントにすぎません。その5~6倍は未知の物質(ダークマター)が占めていると考えられます。残りはダークエネルギーと呼ばれている正体不明のものです(図1)。これまで観測に利用されてきたのは、光やX線、赤外線などの電磁波ですが、”暗黒”物質というのは、電磁波での観測では見ることができないため、”暗黒(ダーク)”という呼び名がついています。
ダークマターは様々な観測からその存在が示唆されてきました。1970年代後半、渦巻き銀河の回転速度分布を観測し、銀河内の明るい星や星間ガスではない、光では観測できないが重力を感じる物質の存在を立証しました(図2)。また、非常に重い物質(すなわち大きな重力)があると光が曲げられる、という「重力レンズ効果」からもダークマターの存在を示す証拠が得られています。
さらに、現在の宇宙は、銀河、銀河団、何もない空洞などが複雑に連なった大規模構造を形作っていることがわかってきました。この成り立ちは次のように考えられています。初期の宇宙のわずかなゆらぎ(図3)からダークマターの密度に差が生じ、密度の濃いところは重力によってさらにダークマターを引き寄せていき、しだいに目に見える物質であるチリやガスも引き寄せ、やがて星や銀河が形成されていきました。このようにダークマターは宇宙の成り立ちに非常に密接に関わっているのです。

液体キセノンはダークマターをとらえやすい
XMASS(エックスマス)実験は、液体キセノン(約-100℃)を詰めた検出器でダークマターを直接とらえます。液体キセノン検出器には、次のような特徴があります。(1)発光量が多く、(2)1トンクラスの大型化が容易、また、(3)液体、気体、固体の各相が利用できるため内部のバックグラウンドのもとであるウランやトリウムなどを極端に少なく出来ることです。ダークマターがキセノン原子核と弾性散乱する際にエネルギーの一部を落とし、液体キセノンがエネルギーに比例して発光します。発光された光は液体キセノンを囲んだ多数の光電子増倍管で捕らえます。
バックグラウンドの少ない”きれいな”検出器が必要
ダークマター直接探索実験は世界中で行われており、激しい国際競争の中にあります。図6はダークマター探索実験の感度をダークマターの質量を横軸、ダークマターと核子の反応率を縦軸として示したものです。青と緑の線は既存の実験による検出感度、黄色い丸は特に可能性が高いと考えられている部分です。XMASS実験では、既存のダークマター探索実験の100倍の感度を持ち、いち早く超対称理論で予想されるパラメータ領域(グレーの領域)に大きく踏み込み、直接探索によってダークマターを発見する可能性が大きいと考えられています。










