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米国の軍やCIAで超能力の研究をしているとの噂があった。米ソは冷戦に勝利する目的があって本気で超常現象を研究していた。超常現象をオカルトではなくまだ学問的に認識できるまで到達していない科学的現象として研究する姿勢は科学者として当然の姿だと思う。

日本において疑似科学と超常現象などを懐疑的に調査していく団体ASIOSリサーチが2007年に設立されたが、石川教授は幽霊、テレパシー、透視、念力等の超常現象(PARANORMAL ACTIVITY)を本気で研究する、その主要なメンバーである。

は じ め に   3

序章 なぜ超常現象を科学するのか  9

  幽霊は役に立つ?/エセ科学の撲滅/宗教と科学の違い/
  心霊研究から超心理学へ/「はん幽霊論」への招待

 「反」の部--幽霊をめぐる非科学的主張に反論する  23

第一章 幽霊が見えた?  26

  ホラー番組の取材/それが顔に見える理由/恐怖のカラクリノ
  怖い幽霊VS明るい幽霊/錯覚にも「意味」がある/「現実」とは何か

第二章 迷信とお守りの誤解と詐術  52

  ツキとスランプの勘ちがい/原因を求める人間心理/お守りとバイアス/
  高いほど効く?/ご利益を調査する

第三章 夢と幽体離脱  72

  昨晩見た夢は……/金縛りのメカニズム/夢のお告げは当たるのか/
  魂が体から抜け出す?/幽霊体験の精神状態


 「半」の部-超能力現象を半信半疑で検証する  87

第四章 超能力と夢の中の世界  90

  体験から実験へ/夢テレパシー実験の成果/緻密なガンツフェルト実験/
  体脱体験者はESP能力が高い?/超能力の個人差

第五章 それは誰のしわざか  112

  奇術トリックと超能力者/幽霊かPKかノポルターガイスト/
  こっくりさんの正体/シャイな無意識

第六章 未来がわかるとはどういうことか  131

  SFとタイムパラドクス/予知と透視/予感実験/シンクロニシティ/
  幽霊と宇宙人は同じ?/主体性と因果性
 
「汎」の部―― 超常と日常を合わせて広汎に考える  151

第七章 「無意識」の大きな可能性  154

  「技能」を身につける仕組み/ゾーンに入る/創造性という技能/
  無意識を手なずける/浮かび上がる「妙手」/超心理学の新展開

第八章 幽霊体験の社会化  171

  波動を感じる?/「オーラ」と「共感覚」/「祈り」の効力/
  社会性加役に立つ/不確実さを受け入れる/これから科学はとこへ向かうか

終章 解体される超常現象  186

  幽霊体験に創造性を見いだす/文化以前の心理機能/生物進化の創造主/信念よりも実用性/五つの知恵

 おわりに 202

 参考文献一覧  204 
いきなり本書を否定するわけではないが、私(Ddog)は何度か所謂幽霊を見たり存在を感じたことがある。未だに鮮明に覚えているのだが、脳があり得ない像を私に見せたのだと言われればそうかもしれない。だが、心霊写真や動画の中には脳の悪戯で説明できないものがあると思う。

本書において幽霊、お守りの効用、ツキとスランプ、幽体離脱、金縛り、テレパシー、ポルターガイスト、こっくりさん、UFO、宇宙人の目撃等の超常現象について著者の考える科学的な解釈を書いていますが、超常現象を科学的に解明したというわけではなく、どちらかというと科学者として懐疑的に書かれています。
石川教授はかなり奇術やマジックに造詣が深く、奇術トリックでは騙されないだけの素養があるので信頼できる。奇術トリック研究

本書の気になる超常現象についてだが、幽霊についてはほぼ否定的に考え、幽霊の存在を肯定する非科学的主張に反論している。

超能力現象(テレパシー、透視、念力など)については、長年の研究によって、小さな効果ではあるが、超能力とみられるいくつかの現象を実験的に確認している。多くの超常現象は誤認やトリックや心理学で説明可能だが、どうしてもそれでは説明できない、現代物理学では説明できないなんらかの現象が起きていると肯定している。だが、その効果は不正確であり、安定して発揮される現象ではない為、軍事的利用は残念ながら不適切であるため米露における超常現象の研究は下火となった。だが、否定されたわけではなく無意識の所産による一種の超能力である可能性が高い、という説明が行われている。全体的に超常現象を無意識の脳科学ととらえどう活用するか真摯に向かい合っていると考えているようだ。


 超常現象、無意識を説明するのに、スポーツ選手のいわゆるゾーンに入る体験についての考察が興味深かった。これは、漫画/アニメの「黒子のバスケ」を知っている方なら「ゾーン」といえば理解できると思うが、昔打撃の神様、V9時代の巨人軍監督川上哲治氏が野球の球が止まって見たという有名な逸話があるように、いわゆる無心の状態で、様々な技能の発揮が無意識へとゆだねられた状態のことです。

 これは、武道が目標とする精神的な境地とよく似ていますし、経営者のフロー体験とも類似しています。 また、これらは、創造・発見の創造的作業を無意識が担うという点でも類似性があります。
 




CIAのエスパー計画を諦めきれない男 
【NEWSWEEK】シム・ポプキン(ジャーナリスト) 20.Nov2015

アメリカ 政府の「透視者のスパイ作戦」は既に終了したが関係者たちは今も未知の領域の実験に精を出している

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ジーンズにブーツ姿で、辺りをうかがう不審な黒髪の女性が1人場所はカリフォルニア州中部のヘイワード・エグゼクティブ空港。彼女の手には液体窒素を詰めた重そうな容器が……。

 管制塔の下で彼女がふたを取り、2000個の小さなアルミ球を入れたビール用のクーラーにマイナス200度近い液体を注ぐと、たちまち濃くて白
い煙が立ち上る。誰にも気付かれず、彼女は車で現場を立ち去った。

 この2年間、彼女はサンフランシスコのベイエリア周辺で同じ行動を30回以上も繰り返してきた。予告もなく許可も受けずに、消防署やカトリック教会、給水塔、官公庁施設などの周辺で窒素ガスを発生させてきた。

 怪しげなカルトの信者? それともテロリストのなり損ないか? いや、その不審な行動の目的は私たちの想像を超えるものだ。かつて国防総省にいた科学者による実験の一環で、超感覚的知覚(ESP)の存在を証明しようとしているのだ。

 1995年の秋、CIA(米中央情報局)は「遠隔透視の評価 研究と応用」と題する183ページに及ぶ報告書を出した。CIAが機密情報の収集手段として20年以上も続けた「遠隔透視」と呼ばれるESP実験の総括である。昔から噂はあったが、CIAが事実を認めたのは初めてだった。

 計画に投じられた資金は約2000万ドル。超能力の持ち主に、リビアにある過激派の訓練キャンプやソ連の新型潜水艦を透視させたり、外国人に拉致されたアメリカ人の居場所を突き止めさせようと試みてきた。

 しかし報告書によれば、極秘の実験計画か存在したのは事実だが、超能力者によるスパイ作戦(コードネーム「スターゲート」)は失敗だった。ESPのもたらす情報は部隊を動かすには曖昧過ぎ、軍事的な役には立たない。それが結論だ。

 これを受けて、英ガーディアン紙は「CIA透視者の霊感の終焉」を宣言した。一方で米ABCニュースは、ロバートーゲーツ元CIA長官とESP研究の責任者だったエドウィン・メイを番組で対決させた。

 ゲーツは「こうした活動が政策決定に重要な貢献をしたとか、政策立案者に貴重な情報を与えたとかの例は1つも知らない」と言い放った。対するメイは、国防総省の雇った透視者がはるか遠くの標的を正確に描いた「劇的な実例」がいくつもあると反論した。

 しかし同年11月、CIAはESP計画を公式に終丁し、メイも離職した。彼のライフワークはCIAによって評判を落とし、テレビの全米放送で恥をかかされた。メイは当時55歳。研究生活に戻るか、そのまま引退してもよかったはずだ。しかし彼はESPに一段とのめり込んでいった。

 メイはアリゾナ州トゥーソンで高校時代を過ごし、物理学に興味を抱いた。やがてピッツバーグ大学(ペンシルベニア州)で原子物理学の博士号を取得し、75年に友人の推薦でスタンフォード大学研究センター(現在のSRIインターナショナル)に職を得た。ここでは当時、本人は知らなかったが、多くのプロジェクトが極秘で行われ、CIAが資金を出していた。

実験観察者がヒントを出す?

 その3年前、ソ連が超心理学に関心を向けていることに気付いたCIAは、対抗してESPの研究を始めた。当初は、超能力者に箱の中身を当てさせる程度の実験だった。やがてCIAは本腰を入れ、SRIに5万ドルの資金を渡し、サンフランシスコ周辺で超能力者に特定の場所を遠隔透視させる予備実験を命じた。

 このときの責任者はスタンフォード大学でレーザー物理学の博士号を取得したハロルド・プソフで、彼の下で未知の領域に挑む実験がスタートした。

 ある実験ではラボにいる超能力者がウェストバージニア州にある国家安全保障局(NSA)の情報収集所の内部を透視し、ファイルに書かれた文字まで読み取ったという。

 結果には誤りも含まれていたが、アメリカのスパイ機関を本気にさせるには十分だった。さらに同じ超能力者が地図を見ただけでソ連の核施設の新しい建物と建設用クレーンの透視に成功すると(ただし他の部分については失敗)、他の政府機関も続々とESP研究に参加し始めた。

 しかし数年後、ニュージーランドの心理学者2人が英科学誌ネイチャーに寄稿し、自分たちの人手したClAの実験記録を見ると、その透視者は長年にわたり周囲から「多くの手掛かり」を得ていたようだと主張した。

 もちろんプソフは真っ向から2人に反論し、その後も85年までESPプログラムを率いた(その間に「スプーン曲げ」で有名なユリーゲラーの超能力は本物だと語ったこともある)。ClAは77年に研究から手を引いたが空軍や陸軍、国防情報局は資金を出し続けた。議員にも擁護者がいた。「ロシア人に透視能力があってこちらにないとしたら大変なことになる」と真顔で語った議貝もいるくらいだ。

 メイは85年にプソフの後を継ぎ、国防総省の職貝として95年まで、カリフォルニア州を拠点にESP研究のプログラムを率いた。国家公務員として超能力の研究に専念でき、退職後は年金も受け取れる立場だった。

 今のメイからは、往年の人気フォーク歌手のような雰囲気が漂う。古くさいジョークを交えた彼の話は、どんどん脇道にそれていく。しかしESPを信じない人間の話題になると、怒りをあらわにする。「何も分かっていない連中は相手にしない。彼らが口にするのはでたらめばかりだ。そんなのは科学でも何でもない」

 最近のインタビューでメイは、84年に書かれた陸軍の遠隔透視計画の報告書に言及している。機密扱いの解除で公開されたその報告によると、陸軍情報保全コマンドは79年以降、ESPで「100件の情報収集」を行っていた。

中には同年のイランにおけるアメリカ大使館人質事件も含まれていた。陸軍の超能力者が参加し、人質となったアメリカ人の居場所を遠隔透視で見つけようとしたのだ。

 メイにとって、ESPの存在を証明する心強い人物は「スターゲート」以来の有力透視者ジョセフ・マクモニーグルだ。マクモニーグルは子供時代に双子の妹とテレパシ交信をして遊び、ベトナム戦争に従軍した際は敵の攻撃から身を守るために自分のESP能力を磨いたそうだ。

熱放射と遠隔透視を研究

 興味深い事例がある。やはり79年のことで、国家安全保障会議(NSC)がメイに、北極圏に近いソ連の工場ビルの内部をのぞいてくれと言ってきた。そこでマクモニーグルが「自分が建物内に降下していく」状況をイメージしていくと、潜水艦、それも「双胴構造のかなり大きな潜水艦」が見えるという「圧倒的な感覚」を得た。
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  彼はその詳細を絵に描き、NSCに提出した。02年に彼が出版した自叙伝によれば、後にアメリカの衛星写真によって、セベロドビンスクの秘密造船所に巨大な双胴構造の潜水艦の存在が確認されたという。

 政府がESPプログラムを終了した後、メイとマクモニーグルはそれを復活させようと、かつて資金提供をしてくれた各機関の支援者に働き掛けを続けた。だがうまくいかず、「資金が尽きかけていた」とメイは言う。

 そんなとき、メイはある大富豪に出会った。ポルトガルの製薬大手バイアルの3代目オーナー、ルイス・ポルテラだ。ポルテラは幼い頃から超能力に魅了されており、94年には非営利のバイアル基金を立ち上げている。目的はESPと「肉体と精神の両面から見た人間」の研究とされる。

 バイアル基金は25力国で500以上のプロジェクトに資金を出してきた。ESP研究だけでなく、幽霊やUFOの目撃情報についての研究も含まれる。メイは同基金から、9つのESP関連のプロジェクトで総額40万ドルの研究費の提供を受けている。

 メイは今も同基金から4万5000ドルの資金を得て、「遠隔地の自然環境における熱力学エントロピーの変化は変則的認知の質を向上させるか」を研究している。つまり、ロケットの発射や液体窒素の急激な気化といった突然の熱エネルギー放射は遠隔透視の能力を向上させるか、の研究だ。

 この実験を行うために、彼はマクモニーグルを含むかつてのチームを招集した。まずは実験の手順を決め、カリフォルニア州パロアルトにある彼の認知科学研究所に近いベイエリア周辺で22の異なる屋外の「透視標的候補」を選んだ。

 実験では、コンピューターがその中からランダムに1ヵ所を選択。さらにメイのアシスタントにメールを自動送信して、その場所に行くよう指示し、そこで窒素ガスを発生させるか否かも指示する。こうした情報はメイにも透視者にも知らされない。 メイは超能力者―人ずつと静かな部屋に入り、超能力者に目隠しをして、30分ほどして「目隠しを外した後、最初に見えたものについて説明」するよう指示した。そして、彼らから聞き取った内容をメイがパソコンに入力する。

その際、海の見え方や人工的な構造物、その他の物理的要素はルールに従って数値化される。最終的にはコンピューターが個々の遠隔透視セッションの精度を判定する仕組みだ。

 こうして「スターゲート」出身の超能力者たちは最近、72回の実験を完了した。うち、メイのアシスタントが窒素ガスを発生させたのは36回だ。
 バイアル基金への最終報告で、メイは「研究の仮説を裏付ける重要な効果」を発見したと勝利宣言を行った。つまり液体窒素の気化には遠隔透視能力を向上させる効果があるというのだ。突然の熱エネルギー放射は暗闇の中の光の役割を果たし、透視者が全国各地や未来までも見通す能力を高めると、メイは確信している。

 しかし、おそらくレイ・ハイマン(87)は同意しない。オレゴン大学名誉教授で心理学者の彼は、アメリカの超能力否定派の筆頭格だ。科学者で元マジシャンでもある彼は「嘘つきの俺をだますことなどできない」を格言としている。
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科学的に証明できるのか

ハイマンとメイが初めて会ったのは、70年代のSRI。国防総省の防衛先端技術研究計画局(DARPA)から、ユリ・ゲラーの監視を行うべくSRIに派遺されたハイマンは、メイの科学に対する厳しさや倫理観に敬意を抱くようになった。初期のSRI研究が超能力者たちにヒントを与え過ぎで無意味だという点でも、2人は意見が合っていた。

 だが、メイが率いたESP研究プログラムの手順にも問題があるとハイマンは言う。超能力者が「標的」を正確に説明したかを評価する上で「唯一の観察者がメイだった。そうなると都合のいい評価を下せることになる」とハイマンは言う。「それでは駄目だ」 怪しげな占い師や超能力を売りものにして稼ぐ一部の人たちによって汚されたESP研究を、メイが科学の場に引き戻そうと努めていることはハイマンも認めている。だが立派な科学者であるメイをもってしても、ESPの存在を科学的に証明することはできないとハイマンは確信している。

 しかしメイは私をバージニア州にあるマクモニーグルの自宅に招き、遠隔透視の実験を見せてくれた。

 メイから「1~2分後に見る写真の場所について説明」するよう指示されたマクモニーグルはスケッチを描き、その説明を始めた。「こういう四角形は建物だ。この辺りに散在して、丘の斜面に立っている。道路はあまりいい道ではなく、まあ路地に近い感じだ」 

それを聞いたメイはさらに「そこから1000フィート上空に上がって360度見回して、地城の様子を教えてくれ」と要求する。「OK。大量の水がある。山があるな、川は山肌に沿って流れている。橋が2本見える。小さな村だ」とマクモニーグルは答えた。

 次にメイはパソコンの両面に、マクモニーグルが説明した「標的」の写真を拡大表示した。巨大な滝が写っている。建物も路地も、山や橋や村も見えない。実験は失敗だ。

 なぜ失敗したのか。「統計学には非定常という概念がある。つまり現象は予測不可能な方法で去来する」とメイは言い、さらに遠隔透視には意図や注意力、期待が微妙に影響するもので、「今回はその3つの影響がすべて出た」とも語った。

 そして彼は少し黙った後、最後にこう言った。「これは単なるデモンストレーションだから」 

【超心理学研究室・石川幹人 × 映画『NY心霊捜査官』】

 幽霊、テレパシー、ポルターガイスト、念力——。常にいかがわしい対象として扱われてきたオカルト現象を本気で科学する「超心理学」。この学問では、100年以上にわたって超能力について科学的アプローチで研究し、検証の結果「現代物理学では説明できない現象がある」ことを確認していたという。しかし、ここで研究されている内容は、我々の想像をはるかに超える、念力や透視能力といった未知の能力の可能性について追求する最先端科学だったのだ――。このインタビューでは、映画「NY心霊捜査官」とあわせて現代科学が挑戦する「超心理学」のセカイに迫る!


■「超常現象」を本気で科学する!?

“青森県の消防通信指令室へかかってきた、『無人別荘』からの119番通報”“オランダ・デルフト工科大学が100%の量子テレポーテーションに成功”……。これらは、ここ数カ月の間に有力メディアから配信された報道だ。こうした “オカルト”めいた事象は注目を集めがちだが、その真偽はさておいて、先般上梓された一冊の本が話題を呼んでいる。明治大学情報コミュニケーション学部の石川幹人教授の『「超常現象」を本気で科学する』(新潮新書)だ。同書では、テレパシーや透視、予知といった、いわゆる非科学的な現象について「どこまで解明できて、何が謎なのか?」を明確にしつつ、最先端科学の魅力に迫っている。

 それでは、こうした非科学的な現象を科学的に考察する“超心理学”で解明できないものは、やはり心霊現象といえるのだろうか? 9月20日に公開される、実際の事件をモチーフにした映画『NY心霊捜査官』で描かれた「心霊捜査」「憑依」「ポルターガイスト」について、同氏に話を聞いた。

 まず本題に入る前に、石川教授の経歴を追ってみよう。高校時代の石川少年は、デパートの奇術用品売り場で実演するほどの腕前のマジシャンだった。当時はサイコキネシス(念力)でスプーンを曲げるユリ・ゲラーが活躍した超能力ブームの最中。石川少年は、ゲラーの能力が本物かトリックか確かめるため、“ゲラーに触発されて超能力が開花した”という子どもたちの研究実験を手伝うことにした。 石川教授は、その時のことを振り返る。

石川教授(以下、石川)「超能力があるとされる子どもにスプーンを1本渡されて、私は普通のスプーンだと確かめた。そして、胸のポケットに入れといたんです。30分くらいしてポケットから取り出したら、誰も手を触れていないのに45度くらいねじれていた。アッと驚いたら、またその子が来てスプーンを取り上げると、今度は指でつまんだまま180度までねじってしまいました」

これは、トリックに精通していた石川少年にも、全く解明しようのない出来事だった。その後、石川少年は東京工業大学大学院で心理物理学について学び、就職後は人工知能の開発に従事、そこで、機械では実現し得ない人間の“叡智”や“無意識”の可能性について考えるようになる。そして、2002年にアメリカの名門デューク大学に客員研究員として滞在し、超心理学の世界的研究拠点であるライン研究センターで超能力研究に打ち込んだ。

 その時、アメリカで数々の透視実験で高い成功率を収めた、著名超能力者ジョー・マクモニーグル氏にも出会った。彼は、冷戦時代、旧ソ連の超能力研究開発に対抗してアメリカ政府が設立した機密研究プロジェクト「スターゲイト計画」において、その遠隔透視能力を買われて軍事諜報員として活躍した人物だ。旧ソ連北部で建造されている巨大潜水艦を透視で発見し、その後、軍事衛星からの画像で事実であることが判明した実績もある。

 石川教授は、ライン研究センターにやってきたマクモニーグル氏のデモンストレーション実験に立ち会った時のことを、こう語る。

石川「隣の部屋に置かれたパソコンに映される画像を透視する実験でしたが、結果は芳しいものではなかった。スターゲイト計画の実験でも、駐車場の位置が左右逆とか、現実とは違っているところも多い。かなりいい線いってる、と言える程度で、すべてが成功しているわけではないんです。たしかに透視能力自体は科学的方法で研究され、『現代物理学では説明できない何らかの現象が起きている』と確認されていますが、その効果はわずか。マクモニーグルのような定評のある人でさえも百発百中ではなく、諜報には向かないんです」


■憑依やポルターガイスト現象は人間が引き起こしている?

では、「ポルターガイスト」や「憑依」現象についてはどうなのだろうか?

石川「超心理学においても、ポルターガイストの事例研究はあります。実際私も、信頼できる研究者から実例を聞いていますが、目の前で、灰皿や花瓶が、空中を浮遊してから落下したそうです。ただ、超心理学ではこれを“霊”の仕業ではなく、その家にいる誰かの心理的不安によって起こると解釈します。たとえばですが、『NY心霊捜査官』に描かれていたように、戦場でショッキングな体験をした帰還兵が、その心の不安から無意識に念力を発揮し、ポルターガイスト現象を起こしてしまうことは否定できないでしょう。また、憑依に関しても過去の生者(つまり死者)に対して透視能力が働き、無意識にその人物の記憶が自分のものだと考えてしまうと解釈しています。特に、子どもたちが突然『前世』を語り始める現象に関しては、こうした過去への透視能力が働いている可能性があると考えています」

 無論、こうした超常現象は、まれにしか起こらない。実験で再現できなければ、科学とは見なされないため、超心理学では現在もさまざまな実験が行われている。そんな中、最近注目を集めているのが、乱数発生器を使った実験だ。

 乱数発生器とは、物質の最小単位である量子をランダムに発生させる機械だ。この発生器に人間が念をかけると、ランダムなはずの数字に偏りが出てくることがあるため、人間の意識が何らかの量子的な効果を生み出している可能性があることに着目。それが念力や透視能力といった「人間が持つ心と無意識の力」の解明につながる可能性を探っている。

石川「最近では、プリンストン大学の研究で、人が送る“念”にかかわらず、大きな事件が起きたりすると際立った偏りが出ることがわかったんです。それで世界各地に乱数発生器を設置する研究が『地球意識プロジェクト』です。米同時多発テロ事件の時には、標準偏差の6.5倍という特徴的なデータが出ました。ここにあるのが、日本に置かれた第1号です」

石川教授は机の上の、手のひらに載るほどの小さな機械を指した。これが、多くの人々の無意識を拾っていることになる。

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日本に3台しかない「地球意識プロジェクト」の乱数発生器。これが我々の無意識をキャッチしているのか
                                                 石川「現在、世界各地約100カ所に設置され、プリンストン大学にデータが集まっています。事件だけでなく、オリンピックやワールドカップなどの巨大イベントでも偏りが出ます」

 天文学者のカール・セーガンも、乱数発生器による実験には、心の念力が存在する「可能性」を認めていた。だが、ほとんどの自然科学者はそうではない。

石川「今、自然科学は、人間が自分の理性や主体性に基づいて自由に考え、行動する『自由意思』を認めず、すべてが脳にプログラムされていた結果によって起きている、いわば機械と同等の存在であるという流れになっています。今回の映画『NY心霊捜査官』に沿って言えば、近年、脳科学が科学界で権威を持ち、DNA鑑定が進み、しまいには脳鑑定になって、『犯罪は脳の仕組みによるものだ』という結論になりかねない。これは、人間の心の存在を無視し、すべてをメカニズム的に考えてきた結果ともいえるでしょう。しかし、人工知能の研究でわかったのは、人間には、物理的なメカニズムを超えた何か特別な力が備わっている可能性があるということ。その答えが心的世界にあるかどうかを私は研究しているのです」

無限の可能性を秘めた人間の心の力に目を向ける新しい科学、それが「超心理学」だ。この夏は少し視点を変えて、科学でいまだ説明できない超常現象を、真面目に解説した石川氏の新刊と映画『NY心霊捜査官』を通じて、最新科学に思いふけるのもまた一興かもしれない――。
(取材・文=深笛義也)

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                                                 ■石川幹人(いしかわまさと)
明治大学情報コミュニケーション学部教授、同学部長。工学博士。認知情報論、科学基礎論を専門とするほか、日本における超心理学研究の第一人者としても知られる。著書に『超心理学』(紀伊國屋書店)、『「超常現象」を本気で科学する』(新潮新書)などがある。
執筆中