またもや奇襲!黒田日銀総裁が就任後3度目の緩和策をマーケット予想に反して、29日発表した。日銀は金融政策決定会合を開き、民間金融機関が日銀に預けている当座預金の金利をマイナスにする追加金融緩和の実施を決めた。委員の賛成5、反対4の薄氷の決定だったという。
予想外のマイナス金利の発表にマーケットは一時580円高した後マイナスになり、引け値では+476.85円の 17,518.30円で引けた。
私は、マイナス金利の発表を知った瞬間このマイナス金利は直観としてこれは悪手だ!違うだろう!切り札を切るのが早すぎる!目先マーケットは底打ちして自力反発できる、このタイミングではなく、中国経済がもっと悲惨な状況で日本に悪影響が出た時に切るべき札だと・・・・思った。一時600円近く上がったマーケットに強く違和感を感じた。
しかし、黒田日銀総裁のマーケットを出し抜くセンスは抜群である!
焦点:日銀マイナス金利、不透明な経路 残る外部環境次第の構図
【ロイター】田巻 一彦 2016年 01月 29日 20:55
[東京 29日 ロイター] - 日銀がマイナス金利の採用に踏み切った。マーケットは具体的な効果のイメージをつかみかねているようだが、ドル/円JPY=EBSが円安になったのを見て、これまでの黒田バズーカ1や2と同方向の円安・株高効果があると判断したようだ。
黒田東彦総裁の「賭け」は今回も成功したが、手放しの楽観はできない。中長期的な効果の程度や副作用が読めないためだ。「未体験ゾーン」での日銀のチャレンジが始まった。
<マイナス金利は円安>
黒田総裁や日銀幹部は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)」の発表後にドル/円が120円後半にシフトし、日経平均.N225が1万7500円台を回復して引け、安どしたのではないだろうか。
日銀にとって初のマイナス金利導入は、市場関係者にとっても「わからないことだらけ」(国内金融機関の関係者)というイメージで、発表直後の日経平均は前日比600円近い上昇から200円超の下落まで大幅に変動した。
ただ、外為市場で「マイナス金利は円安」(別の国内金融機関の関係者)との見方が広がり、120円後半まで円安が進んだことで「円安は株高」という見慣れた構図に乗り、株が買い戻された流れができたようだ。
<不透明な当座預金から流出するマネーの行方>
年初から顕在化したリスクオフ心理の顕在化による株安・円高の流れがせき止められ、「予想外」のマイナス金利は、当面の市場安定化に大きな作用を及ぼした格好だ。
ただ、この効果が持続するのかどうか──。その点は29日夜の段階でははっきりしない。金融政策に詳しい複数のBOJウオッチャーは、マイナス金利の実体経済に及ぼす波及効果の具体的な説明が、この日の黒田総裁の会見でなかったことを指摘する。
黒田総裁は「マイナス金利は、イールドカーブの起点としてさまざまな金利に影響を与える」と指摘。イールドカーブ全体を押し下げることで、経済にプラスの影響を与えるとの考え方を繰り返し強調した。
だが、マイナス金利を嫌がって銀行が当座預金から引き出したマネーがどういう経路でどのようなシフトをした結果、最終的に設備投資の増加から需給ギャップの好転となって物価を押し上げるという具体的なイメージの提示はなかった。
<さえないECBの実績>
先の国内銀行の関係者は「ECB(欧州中央銀行)が先行してマイナス金利を導入したが、ユーロ圏の景気が目立って回復し、物価が目標の2%に向って動き出してはいない。逆にかろうじてデフレに陥ることをかろうじて防いでいる印象だ」と語る。
また、米連邦準備理事会(FRB)が3月利上げを断念した場合、ドル高/円安方向への圧力が弱まり、マイナス金利導入後のドル/円が、120円近辺を中心にしたレンジ取引になる可能性も捨て切れない。
そのケースでは、日本企業の業績上振れ期待がかなりはく落し、昨年末に期待されていた日経平均2万2000円回復と言った株高シナリオの現実性が低下する可能性が高まる。
<長期金利マイナス、重大なメッセージ>
この日の会見で、黒田総裁は中国など新興国経済の不透明感の強まりで、企業や個人のデフレマインド転換の遅延リスクの高まりに対して対応したとの見解を示した。
今後、不測の事態が発生し、さらにインフレ期待を押し下げるような混乱やリスク資産、原油価格などの下落があれば、追加緩和に踏み切る可能性があるだろう。
黒田総裁は「3つの次元の緩和手段を駆使する」と明言した。マイナス金利の幅が、次第に大きくなる展開もありうる。
そのケースでは、地域金融機関の経営にかなりの圧力がかかるなどの副作用が、顕在化するリスクがある。
しかし、それとは別にマイナス金利付き量的・質的緩和(QQE)を強化していくと、史上初めて長期金利(10年最長期国債利回り)がマイナスになるという事態も、全くないとは言えない状況が生まれかねない。
長期金利マイナスとなれば、国は国債を発行する分だけ収入を得ることになり、財政規律のはなはだしい「弛緩」を招くことになる。
何より、長期金利のマイナスは、日本国内に「収益を稼ぐ場所がない」ことを意味し、長期化すれば「日本経済の死」を意味することにもなりかねない。
長期金利がマイナスになる前に、物価を2%まで押し上げることが求められていると言えるだろう。
そのためには、潜在成長力を何としても引き上げることが必要だが、日銀の試算では0.2%台にとどまっている。成長戦略がなかなか結果を出すところまで言っていないことを示すのではないか。
政府も「清水の舞台」から飛び降りるような決断で、マイナス金利を生かす成長パッケージを打ち出すべきだ。政府・日銀のマクロ政策は、「正念場」を迎えている。
単純に考えれば、マーケットにプラスだろう。マイナス金利は円安⇒企業業績上昇⇒株高。マイナス金利で国債などで運用している銀行資金が、国債投資から企業融資が増え設備投資、住宅投資が増え景気が上向く。消費者もマイナス金利下では明日まで貯蓄して資産が目減りするより、今すぐ支出しようとするため消費を押し上げるはず。
そんな単純な話ではないことは、小学生ではないのだから誰も信用しない。
第一、銀行は融資したくとも、企業の資金需要があるわけではないのだから、そう簡単に企業融資が増えるわけがない。また、国債利回りと足並みをそろえて投資や年金基金の収益率が低下するため、消費者は不十分な年金を補うため、通常よりも貯蓄を増やさざるを得なくなる可能性がある。高齢化が急速に進む日本において、消費はさらに減り、結果として景気は一段と減速、ソブリン債需要が高まり、中銀による国債買い入れ・紙幣増刷が増え、利息がほとんどつかない証券の需要は一段と増す。悪循環に陥る可能性が高いのではないか!
マイナス金利は、円を調達通貨として他の通貨で運用する円キャリートレードが増えるので円安要因ではあが、現在の世界の金融市場環境は中国経済の崩壊が顕著で明らかにリスクオフ局面だ!この局面で、いくら低金利の通貨であっても、それを売ろうという動きは続きにくい。中国経済崩壊のリスクオフ局面では金利が低くても安全資産の国債を買う動きが助長されるので、マイナス金利の効果はかなり限定的と思う。
マイナス金利=円安という単純な構図ではない。為替に関して亀岡裕次氏の予想が最も信頼がおけると私は思っていますが、どうやら亀岡氏も私と同意見のようである。
コラム:マイナス金利でも円安は続かない=亀岡裕次氏
【ロイター】2016年 01月 29日 18:37 亀岡裕次大和証券チーフ為替アナリスト
[東京 29日] - 日銀金融政策決定会合でマイナス金利導入が決定された。これを受け、日本の金利低下と株高が進むとともに、1ドル=121円台へと急速に円安が進行した。2012年夏ECBは初のマイナス金利を導入した。その結果はどうだったか?
日銀は、「世界の金融市場が不安定な動きをしているために物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増している」として、物価目標2%の達成時期を2016年度後半頃から17年度前半頃へと先送りした。
「マイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入」とされた今回の決定は、日銀当座預金を3つの階層に分割し、1)これまで積み上げた既往残高については「基礎残高」として従来通りプラス0.1%を適用、2)所要準備額に相当する残高などは「マクロ加算残高」としてゼロ%を適用、3)これらを上回る部分は「政策金利残高」としマイナス0.1%の金利を適用するという内容である。
<マイナス金利が国債買い入れをさらに困難にするリスク>
賛成5、反対4の僅差での決定だったことからもわかるように、この政策はプラスとマイナスの両面を併せ持つ。
プラス効果は、短期金融市場の無担保コールレートや債券市場の利回りなど市場金利の低下が見込まれることだ。一方のマイナス効果は、収益を圧迫される金融機関が超過準備ではなく現金や国債の保有を増やそうとするために、日銀の国債買い入れが円滑に進みにくくなることである。日銀は長期国債買い入れの下限金利を設けずにマイナス0.1%を下回る金利での買い入れも行うとしているが、量的緩和がこれまでに比べて進みにくくなるリスクがあるわけだ。
そもそも、日銀が国債買い入れペースをさらに増額する余地が低下していたからこそ、マイナス金利という新たな政策導入に踏み切ったのだろう。日銀の資産買い入れにより、日銀が保有する国債などの政府債務残高は15年11月時点で前年同月に比べ90兆円増加している一方で、民間が保有する残高は56兆円減少している。
日銀の国債等保有比率は前年同月よりも8%ポイント上昇し、30%に接近している。このペースのままなら、16年末に37%、17年末に45%に達することになる。財政ファイナンスの様相を強め、国債市場の流動性が低下しているなか、日銀は国債買い入れのペースをさらに大幅に増額しにくい状況にある。
<金融機関の収益に与える影響は欧州よりも大きい>
日銀の国債買い入れにより「中央銀行が供給する通貨」であるマネタリーベースは年間80兆円程度のペースで増加し、15年12月に346兆円に達したが、そのうち246兆円が日銀当座預金であり、流通現金は100兆円である。
日銀当座預金のうち所要準備を超える超過準備の238兆円に0.1%の利息が付されている。この付利は、08年10月末に「資金供給円滑化のための手段」として導入されたものであるが、いわば日銀による金融機関への補助金のようなものになっている。
欧州中銀(ECB)が政策金利の下限金利である中銀預金金利を15年12月にマイナス0.3%に引き下げた際には、ユーロ圏の短期金融市場で金融機関が融通し合う翌日物金利(EONIA)が連動するように低下し、国債金利にも低下圧力が働いた。
ただし、日銀当座預金の積み上がりとともに日本のマネタリーベースの対名目国内総生産(GDP)比率は70%近くへと上昇しており、20%前後にある欧米の比率をはるかに上回る水準にある。日本は経済に対する超過準備の規模が欧米に比べて圧倒的に大きいため、付利の低下が金融機関の収益に与えるマイナスの影響も大きい。
それを考慮して、日銀は既往の超過準備に対する金利はプラス0.1%に据え置いたわけだが、金融機関が日銀の長期国債買い入れオペに応じて国債を売って新たに超過準備を保有すれば、0.1%の利息を日銀に対して支払わなければならなくなる。金融機関は、マイナス0.1%よりも金利の高い国債を保有する方が得策と考えやすいので、日銀オペに応じる動きは減りやすいだろう。
少なくとも多くの長期国債利回りがマイナス0.1%以下へと低下するまでは、そうした動きが続きやすいはずだ。金利が低下したからリスク性資産を買う動きが強まるとは限らないだろうし、金利が低くても安全資産の国債を買う動きが助長されやすいだろう。
<金利低下がリスクオンや通貨安を招くとは限らない>
今回のマイナス金利導入は、日本の市場金利低下という点では、円を調達通貨とした取引(円キャリートレード)を増やす要因であり、円安要因ではある。しかし、世界の金融市場環境がリスクオンではなくリスクオフに傾いている局面においては、いくら低金利の通貨であっても、それを売ろうという動きは続きにくい。
むしろ、高金利通貨を売って低金利通貨を買おうという動きになりやすい。ECBが中銀預金金利のマイナス幅を拡大させても、必ずしもユーロ安(ドル高)が進んでこなかったのも、同じ理由である。日銀がマイナス金利を導入しても、量的緩和ペースが強まるのではなく弱まるようであれば、リスクオンの株高や円安には傾きにくいだろう。
米国政府はドル高を懸念して日本の過度な金融緩和依存に警鐘を鳴らしている。それでも、日銀の追加緩和がリスクオン効果をもたらすのであれば、円安効果だけではなく、ドル売り・新興国通貨買いを誘発することで実効為替ベースのドル安効果を期待できる。株式市場の安定にもつながるので、米国は日銀の追加緩和を容認できるだろう。
しかし、リスクオン効果が乏しく、リスクオフの円高やドル高を反転させることが期待しがたいのであれば、米国政府は、マイナス金利幅を拡大させるなどの日銀の追加緩和策に批判的となるだろう。
また、日銀がマイナス金利幅を拡大することはできても、マイナス金利を導入したことによって量的緩和をペースアップすることが難しくなったと市場が判断する可能性は十分にある。
さらに言えば、将来的に日銀が量的緩和ペースを縮小する(テーパリング)局面で市場への悪影響が広がらないよう、金融市場調節の操作目標を再び量(マネタリーベース)から質(金利)へ戻す布石とみなされる可能性すらあるだろう。
市場が日銀量的緩和の限界を察するにつれて、円安効果は減殺されていくのではないか。マイナス金利導入により円安基調が続くとは考えるべきではないだろう。
*亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。
結果は芳しくない。
なによりも、悪手だと思ったのは、バズーカ砲にはもう弾が無いという印象をのこしたことではないだろうか?弾切れでもう後がない!